IR施設の区域認定数は「上限3カ所」ということになった(都内で2013年撮影:ロイター/Yuya Shino)

4月3日、与党IR実施法に関するワーキングチーム(WT)第6回が開催され、重要論点の11項目すべてが合意に至った。これを受けて、政府は、IR実施法案を国会に提出し、与党である自民党、公明党は今国会での法案成立を目指すことになった。

政府のIR実施法案の策定プロセスを示した。政府のIR検討作業は、2014年7月の内閣官房のIR調査・検討チーム設置が起点。ただし、公式なIR実施法案の策定作業は、2016年12月のIR推進法の施行でスタートした。IR推進法は、「必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない」と定めている。

政府は、IR推進法に則り、当初は2017年内のIR実施法案の国会提出も視野に入れていたが、2017年10月の衆院解散総選挙の実施などを背景に、2018年通常国会に提出を持ち越した経緯がある。

IR実施法案の策定プロセスを丁寧に遂行

政府は、「カジノ解禁」に批判的なメディアの論調や世論に配慮し、丁寧なIR実施法案の策定プロセスを遂行した。まず、2017年4月に安倍首相を本部長とするIR推進本部、および、IR推進本部事務局(IR関係性がある各省庁からの出向者で構成)を設置。IR推進本部は、有識者委員会「IR推進会議」を設置し、IR実施法案の方向性を「取りまとめ」た。

IR推進本部は、8月に国民的議論を喚起するため、「取りまとめ」について、公聴会、パブリックコメントを実施。2018年2月、IR推進本部は、与党に対して、政治判断を要する重要論点11項目の政府案を提示。これを受けて、自民党、公明党がそれぞれ意見をまとめ、両党合同の与党IR実施法に関するWTで合意を形成したわけだ。

まず、重要論点11項目の合意結果を以下に紹介する。

・「カジノ施設規模」は、IR施設の延床面積の3%以下に制限する

・「入場回数制限」は、7日間に3回、28日間で10回とする

・「本人・入場回数確認手段」は、マイナンバーカードを活用する

・「入場料」は、1回あたり6000円とする

・「納付金率」はグロス・ゲーミング・レベニュー(ハウス勝ち分)の30%の定率とする

・「カジノ管理委員会」は、5人の委員、国会同意人事など

・「IR区域認定数」は、3カ所を上限として法定する

・「区域認定数の見直しの時期」は最初の区域認定から7年経過後とする

・「中核施設の要件・基準」は、我が国を代表することとなる規模等を政令等で規定する

・「立地市町村との関係」は、認定申請する自治体(都道府県または政令指定市)では行政同意と議会議決、立地市町村は行政同意を要件とする

・「開業までのプロセス」は、早期かつ手続きの確実性を確保。申請・認定のプロセスを2回行うことを検討する

意見が分かれたのは?

これら11項目のなかでも、自民党案、公明党案の意見が分かれ、関係者の関心が高かったのは、「カジノ施設規模」「入場回数制限」「入場料」「納付金率」「IR区域認定数」「中核施設の要件・基準」の6項目であった。

最初から4つの項目は、カジノ事業収益に直接の影響を与える項目。最後の2つの項目は、地方部におけるIRの設置可能性に大きな影響を与える。

それぞれ、誘致自治体、IR事業への参画を検討する国内企業、海外IR事業者などが、神経をとがらせ、国会議員に積極的にロビーイング、意見具申を行った。

与党協議で、自民党が重視したスタンスは、(1)地方にIRの可能性を開くべき、(2)IRの国際競争力、事業性、投資環境の視点、であった。これに対して、公明党は、カジノに対する慎重スタンスを前面にアピールする展開となった。

与党IR実施法に関するWTは、合意までに6回を要した。合意項目数は、第3回で5項目、第4回で4項目(計9項目)、そして、第5回と第6回で全11項目が合意に達した。前述の6項目「カジノ施設規模」「入場回数制限」「入場料」「納付金率」「IR区域認定数」「中核施設の要件・基準」は、自民党、公明党の調整が難航した項目である。最後まで調整が決着しなかったのは、「入場料」「IR区域認定数」であった。

6項目の交渉結果は、「カジノ施設規模」が自民党案となったが、「入場回数制限」「納付金率」「IR区域認定数」「中核施設の要件・基準」はおおむね公明党案、「入場料」は自民党案と公明党案の折衷案に落ち着いた。

最大の焦点となった「IR区域認定数」については、自民党は「地方にIRの道を開く。少なくとも4〜5カ所にすべきとの意見が多い」を主張したが、公明党の「国会答弁を重視。当初2〜3カ所の意見が大勢」のスタンスに押し切られた。IR区域認定数3カ所の着地には、サプライズはない。ただし、自民党の4〜5カ所への拡張への挑戦、それに対する関係者の期待が実現しなかったかっこうだ。

今回の自民党と公明党の交渉では、今国会でIR実施法案を提出、成立させたい自民党の譲歩姿勢が目立った。来年、2019年には、参院選、統一地方選、憲法改正、天皇退位など大きなイベントが重なる。自民党としては、2018年中に法案を成立させたい意向があったわけだ。

ちなみに、公明党は、IRに反対ではない。2016年12月のIR推進法の採決では、公明党は、党内のさまざまな意見に配慮し、自主投票の措置としたが、公明党の議員のうち、衆参とも3分の2以上が賛成した経緯がある。

地方都市にもチャンスはあるが…

筆者は、今回の与党合意を、事業者視点で評価すると、「想定範囲、合理的範囲のなかで、中間より厳しめ」と受け止めている。与党合意のもとでも、大都市、地方都市ともIRの事業性を確保できるものの、事業規模は想定レンジ内の下限に近く、大都市の優位性が際立ち、地方都市がややハンディキャップを負う展開となるだろう。

合意に対する反応は、立場により異なる。自治体では、大阪府市の松井一郎知事、吉村洋文市長は、総じてポジティブな見解を表明。吉村市長は、おおむね大阪市が考えていた内容とコメントした。

一方、和歌山県の仁坂吉伸知事、長崎県の中村法道知事は、自らのエリアへのIR誘致に強い危機感を表明。とくに、地方都市の首長たちは、「IR認定区域数」に鋭く反応した。

それに対し、国内事業者、海外IR事業者は、与党合意にほとんどコメントを発さず、発する場合でも「合意を歓迎する」である。今後、特定エリアに根差さない国内企業(全国区)、海外IR事業者は、より大都市にウエイトを置くか、あるいはターゲットエリアへの特化を強めるだろう。