女性誌『Suits WOMAN』で注目を集めた「貧困女子」。これは普通の毎日を送っていたはずが、気がつけば“貧困”と言われる状態になってしまった女性たちのエピソードです。

今回お話を伺ったのは、山田茉莉さん(仮名・42歳)。都内の広告代理店で、契約社員として働いています。

「今、借金が200万円あるんです。お金がないと、メンタルがヤバくなる。今もわなわな来て、ワキから変な汗が出るんです。200万円も借金があると、5万円とか10万円がはした金に見えるんですよ。月末なのに家賃も払えなくて、ワナワナきます」

茉莉さんは今の会社で32歳の時に契約社員として働くまでは、仕事を転々としていました。地方の短大を卒業してから、中部地方の自動車部品工場に正社員として勤務したそうです。

「最初は事務の予定だったのですが、人手が足らず工場と兼務するようになり、午前中は女子の制服を着て伝票整理をして、午後は作業服を着て検品していました」

検品の仕事内容は、ベルトコンベアーに流れて来る部品に、キズやへこみがないか目視するもの。

「給料も手取りで14万円と安かったので、仕事が苦痛でたまりませんでした。21歳の時に耐え切れず突発退職しました。これは雇用契約書的には完全にアウトらしいですが、会社側も事務で採用しながら、危険な工場勤務もさせていたので非はあります。社会保険の切り替えの手続きは、総務の人が会社から550kmも離れたウチの実家まで営業車で来て親と会社との間で行なったようです」

会社をバックレた理由に、先輩からのセクハラもありました。

「あれは気持ち悪かったですね。背が高くてそこそこイケメンの先輩だったのですが、検品している後ろから体をピタッと寄せてきて、耳元で話したりするんですよ。当時は男尊女卑的な雰囲気がありましたし、“女性には何を言ってもいい”というような社風でもありました。飲み会では卑猥な言葉を言われたり、あからさまにバカにされたり、身の危険を感じたこともありました」

茉莉さんはパッチリとした目の美人です。ゆるく巻いたセミロングヘアは栗色に染められており、ビジュー付きのカーディガンの下には、胸元部分がレースになった白いキャミソールを着ています。下着の花柄のレースが透けており、それを気にする様子もありません。カーデの第二ボタンまで外しているので、女性であっても目のやり場に困ります。

「よく、“モテるでしょ?”と言われますが、今は全然だめですよ。前はカフェに入るとみんな私のことを注目したのに、今は誰も振り返らない。街を歩いていても、ナンパさえされないんですよ。40歳を超え、シワが増えてシミや白髪も出始めると、こんなにみじめな思いをするのかと悔しくてたまらない。私よりも不美人たちがどんどん結婚しているのに、私は一人です。老後が不安過ぎ、涙が出ます」

23歳で娘を出産するも、興味が持てず育児を義母に丸投げする

大粒の涙を流し、しくしくと泣きながら、茉莉さん自身が置かれている不安定な立場について語ります。21歳で突発退職した後の人生について伺いました。

「実家に帰り、地元の飲食店でバイトをしているときに、高校の同級生と再会。彼は学年で一番勉強ができてカッコよかったんですよ。彼は二浪した後、進学はあきらめて父親の会社を継ぐため修行している最中でした。“小金持ちだからいいかな……”と結婚し、専業主婦になりました。これは初めて話しますが、23歳の時に娘も産んだんです。でも、私は若かったし、子供はできたものの産まない選択をしようと決意。夫だった人に内緒で産婦人科に行きました。すると病院の看護師さんが義母の同級生で、義実家に連絡がいってしまったんです。すぐに義母が迎えに来て、義両親と夫に正座を強要され1時間ほど怒鳴られ、義父から頬を殴られました」

“ウチの跡取りを殺すのか”という、恐ろしい剣幕だったといいます。

「庶民の成り上がりのくせに、“跡取り”なんてエラソーなことを言ってんじゃねえよ、と心の中で思っていました。子供は無事に生まれましたが、娘だったから義父はあからさまにガッカリしていて、私は“ザマミロ”と思いました。そんな経緯もあり、子供は全然かわいくないし、全く愛すことができないんですよ。義母が“産んだら可愛くてたまらなくなるわよ”などと言っていましたが、痛いし苦しいし、母乳が出なくて助産師さんから怒られるし、散々な目に遭いました。本能とか母性って、私にはないんだと思います」

生れた娘に全く興味が持てず、義母に託し、婚家脱出のチャンスを狙っていたそうです。

「産後、夫も不気味でグロテスクに感じるし、義実家は敵だらけ。娘も心底かわいくない。東京に行って、一から人生をやりなおしたかったんですよね」

娘と一緒に過ごしたのは2歳まで。夫はその後、再婚したようだが、娘のことは全く気にしたことがないという。

離婚でモメて、娘を手放し、上京するも定職は見つからない。膨れ上がる借金と、スピリチュアルとの出会いで激変が……〜その2〜に続きます。