正しい方法と道具を使わないと最悪走行中の脱輪も

 自分のクルマを自分でイジる(メンテナンスする)というのはクルマ好きやメカ好きには楽しみのひとつ。「タイヤ交換ぐらいはDIYで」というのは半分正解で……。

「半分? 半分?」と疑問に思われる方もいるだろう。この半分というのは「ぐらいで」という部分にかかっている。ジャッキアップしてホイールナットをゆるめてタイヤを外し、別のタイヤに付け替えて正しくナットを締めてジャッキをおろし、最後に締め付けトルクをチェックするというのは意外に奥の深いハナシだからだ。

 先ず工具がなければダメ。タイヤレンチはできれば車載工具でなく、十字レンチが欲しいところ。そのほか、輪止めとジャッキは必須。トルクレンチも用意したい。

 外すときに怖いのは、ジャッキの転倒とジャッキアップポイントのずれ。ジャッキアップをするときは傾斜のついているところや、砂利道などを避けること。水平でアスファルトなど地面がしっかりしているところでやらないと、作業中にジャッキが倒れる可能性がある。

 またジャッキを当てる部分=ジャッキアップポイントはクルマによって違うので、取扱説明書できちんと確認することが大事。ジャッキアップポイント以外にジャッキをかけると、最悪、フレームがゆがむこともある。正しいジャッキアップポイントでもできればゴム板などを挟んで、ジャッキアップポイントが傷まないよう配慮したい。

 もうひとつ、ジャッキアップの際はサイドブレーキを引き、ジャッキアップするタイヤの対角線上のタイヤに外側から輪止めをかけておく。これもジャッキが倒れないための安全策だ。

 外したタイヤは万が一、ジャッキが倒れたときに備えて、サイドシルと地面の間に入れておこう。そして取り付け。じつは取り付けの方がトラブルの原因になることが多い。

 取り付けのミスはナットの向き(貫通ナット)、タイヤの芯、センターが出ない、締め方が強すぎ、弱すぎなどがよくあるケース。ナットはテーパーが付いている側が、ホイール側。タイヤのセンターを出して取り付けるためには、いきなり工具でナットを締めずに、手で仮止めしていくのがコツ。

 まずタイヤの上部のナットを半分ほど締め、次に下半分のナットを手で回せるところまで回して仮締め、そして上半分を同じく仮締め。これでかなりセンターが出せる。それから十字レンチを使って、対角線上のナットを、タイヤがガタつかなくなるまで2〜3回に分けて仮締め。

 本締めは、ジャッキを下してから同じように対角線上に締めていく。このとき大人の男性が力いっぱい締めると、オーバートルクでボルトを伸ばしてしまったり、ねじ切ってしまうことがあるので要注意。ましてや、車載工具のタイヤレンチを蹴飛ばして増し締めするなんてもってのほか。

 手締めで軽く締めたら、最後はトルクレンチを使って規定トルクで締めること。十字レンチの代わりに電動工具やインパクトレンチを使うのも基本的にNG(アルミホイールの取り扱い説明書にもそう書いてある)。
インパクトレンチなどを使うと、センターがずれやすいし、ナット座を傷める原因になるからだ。

 もちろん、緩すぎると走行中にナットが外れる危険があるので、規定トルクは必ず守ること。交換したタイヤの空気圧チェックも忘れずに。タイヤは安全に直結している部品なので安易に考えず、確実な交換作業を行いたい。自信がなければ、熟達者にサポートしてもらいながらやるか、プロに頼んだ方が賢明だ。