「本郷展示会」ではモノづくり企業とビジネスチャンスを探す医療機器製造・販売会社が一堂に会する

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 欧米では医療関連分野で有力なベンチャー企業が続々と誕生し、大手によるM&A(合併・買収)や投資の対象となっている。日本ではこうした事例はまだまだ少ないのが実情だ。厚生労働省は研究開発ノウハウを持つ「サポーター」による医療系ベンチャーや、医療分野への参入を目指す企業への支援を本格化するほか、経済産業省も「医工連携」の後押しを強化している。

 仮想現実(VR)や人工知能(AI)技術を用いた運動リハビリテーション治療機器を開発するmediVR(東京都千代田区)の原正彦社長は、「将来的には大手企業からM&Aを受けるようになりたい」と構想を描く。医師でもある原社長が率いる同社は、経済産業省が1月に実施した「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2018」でグランプリを獲得。「これ以外にもアイデアはたくさんある」(原社長)と、自社の技術力をアピールする。

 米国の大手製薬会社(メガ・ファーマ)は、ベンチャーが一定の水準の候補物質を開発すると、M&Aなどでそれを取り込むケースが目立つ。医療機器も、元をたどればベンチャー起源の技術であることが多い。

 一方、日本では2017年2月、大塚ホールディングス傘下のJIMRO(群馬県高崎市)が、脳梗塞治療機器を開発するバイオメディカルソリューションズ(東京都中央区)を買収したが、こうした事例はまだまだ少ない。

 経産省の調べでは日本のマザーズやジャスダックに上場するバイオベンチャーの時価総額は1兆1000億円程度。これに対して米国は60兆円、欧州は8・8兆円と大きく水をあけられている。それどころか、中国9・8兆円、韓国7・0兆円と、中韓にも大差をつけられており、バイオベンチャーが十分な資金を調達できていない。

経産省、医工連携後押し。厚労省、マッチング開催
 こうした状況を受け、経産省は近く投資家とバイオベンチャーの対話を促すための指針(ガイダンス)をまとめる。情報開示によって株式市場での投資家からの資金調達を円滑にしながら、開発の加速に結びつける。「バイオベンチャーも、情報開示の参考にしてもらいたい」と上村昌博生物化学産業課長は狙いを説明する。

 日本は海外に比べて産学官の人材移動が少なく、特に欧米のような医療系ベンチャーに関する人的なネットワークが未発達だ。これがベンチャーの資金調達や、事業を拡大するための他社とのアライアンスが伸び悩む背景にある。

 このため、厚労省は昨年10月、神奈川県内で医療系ベンチャーのマッチングイベントを初めて開催。マッチングシステムにより418件の商談開催にこぎつけた。武田俊彦医政局長は「こちらの想定以上の反響があった」と手応えを感じている。

 さらに厚労省は2月にベンチャー企業の相談窓口として「ベンチャーサポートオフィス」を東京都中央区の日本橋ライフサイエンスビルディング内に設けた。同オフィスには研究開発や薬事などに精通した専門家をサポーターとして登録し、ベンチャー経営者との面談や、企業とのマッチング、投資家へのプレゼンテーション資料の作成などを支援していく。

ニーズ・シーズそろう
 医療分野に成長の道を求めるのはベンチャー企業だけではない。医療機器関連企業の集積地である東京都文京区の本郷地域では、毎月のように技術展示会「本郷展示会」が開かれている。同展示会は医療分野への新規参入や事業拡大を目指す全国のモノづくり企業と、ビジネスチャンスを探す本郷地域の医療機器製造・販売会社が一堂に会する場だ。

 同展示会に九州から出展したウエットスーツ製造・販売のヘルメット潜水(大分県国東市)は、車いす周りの製品などヘルスケア分野の製品開発を強化している。伊賀正男社長は「介護施設ではスムーズに採用された製品も、病院向けに提案すると時間がかかる印象だ」と、医療分野への参入の難しさを感じている。

 自社の技術を生かして医療分野に新規参入を目指すモノづくり企業は数多いが、思い通りに進まないことが少なくない。同展示会を通じて医療機器の製造販売企業と手を組み、商品化したい技術の市場性や類似品の有無の調査など支援を受けることも可能だ。

 地元企業のフジタ医科器械(東京都文京区)の前多宏信社長はこうした連携について、「経営的な負担を抑えて(市場開拓に)取り組めるのも魅力の一つ」と説明する。同展示会のコーディネート役を務める日本医工研究所(東京都文京区)の寺尾章社長も、「1回の面談ですぐに結果を出すことは難しいが、根気よく取り組んでほしい」と呼びかける。