「Gettyimages」より

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 今回は本連載前回記事に引き続き、株の配当金と税金について、女性公認会計士コンビ、先輩の亮子と税務に強い後輩の啓子が解説していきます。

亮子「こうしてみると、配当金に関する税金って、本当に不思議だね。どういう処理をするかで、税額が異なる」

啓子「そもそも、株式会社の利益が財源であるという前提がある一方で、受け取った株主の手間の軽減をしようという配慮があるなど、視点によってどう扱うべきかという考え方が変わってくるからでしょうか」

亮子「もう、いっそのこと、『配当金は税金なし!』と言ってくれればいいのに」

啓子「それがNISAですよ。文句を言っても仕方ありませんから、配当金に関する税金について具体的に計算してみましょう」

●配当控除を計算してみる

 税額から控除できる金額は、表の通りです。配当金の額によって異なります。なお、今回も上場企業の株を保有している場合の配当金を前提に話を進めていきます。

 その年の課税所得から1,000万円を差し引いた金額に達するまでの配当所得の金額(A)、つまり1,000万円を超える配当所得部分は控除税率が5%に下がります。例えば、配当所得(源泉徴収前の収入金額)が10万円の場合(課税される所得※が1,000万円以下)、税額控除額は10万円 × 12.8%(所得税10%+住民税 2.8%)=1万2,800円となり、1万2,800円分税金が安くなります。

 前回触れた通り、配当控除を受けるためには、確定申告をして総合課税を選択する必要があります。

●損益通算と繰越控除

 損益通算、繰越控除とは、株式を売却して損失が出た時などに使える制度で、いずれも確定申告をする必要があります。2017年に株式売却による損失が5万円となったケースを考えてみます。17年に配当金を3万円受け取ったとすると、損失と配当金を相殺(配当金3万円−損失3万円 =0円)して、課税対象所得0円とすることができます。その場合、源泉徴収されていた20.315%分の税金が返ってきます。これが「損益通算」制度です。株の売買による損失と配当は合算することができます。

 また、2017年に相殺しきれなかった損失2万円は翌年に繰り越すことができます。これが「繰越控除」制度です。この損失は、発生した年に相殺しきれない損失があった場合、翌年以降3年間繰り越すことができます。仮に、翌年の18年の配当金が5万円あったとしたら、前年の損失と相殺して課税される所得を3万円とすることができます。

 その結果、18年に返ってくる税金は次のように考えます。

・配当金に関する源泉徴収税額:損益通算前の所得5万円 × 税率20.315%= 1万157円
・損益通算後の所得:配当金5万円 − 繰越損失2万円 = 3万円
税金金額:損益通算後の所得3万円 × 税率20.315% = 6,094円
還付税金:源泉徴収税額1万157円 − 税金金額 6,094円 = 4,063円

 確定申告(申告分離課税選択)をして損益通算制度を利用すると、税金が4,063円返ってくることになります。

●配当控除を受けるとお得なケースとは?

 配当控除を使用することができる「総合課税」は、所得金額に応じて税率が決まる累進税率が適用されるため、所得が多ければ多いほど税率も高くなり、一定の所得水準以上の方は、総合課税を選択すると不利となるケースもあります。

 課税される所得に対する税率は695万円までであれば20%未満となりますが、所得が上がるにつれて税率は上昇していくので、所得が695万円超の場合、総合課税を選択すると不利となる可能性が高いです。実際には、配当金の金額や個人の状況によって異なりますので、695万円はあくまでも目安となります。配当金から差し引かれている税金は所得税、住民税あわせて20.315%のため、下記表の一番右列「配当控除後の所得税と住民税」の税率が20.315%よりも低ければ、配当控除を使ったほうが有利となります。配当所得に対する配当控除後の実質的な税率をまとめてみます。

 所得が195万円以下の場合、配当所得以外の所得が配当所得を上回れば、その分に関する所得税も還付される可能性があるためマイナスとしていますが、トータルの税金がマイナスになることはありません。

 それでは、確定申告をした場合としない場合の税金を具体的に比較してみましょう。

【前提】
 合計所得695万円(配当所得10万円+その他の所得685万円)の場合。計算式の中の※印は、所得水準(課税される所得が330万円超695万円以下の場合)に応じて決められた税率および控除額です。

<確定申告なし>
(1)所得税:685万円 × 20.42%※ − 43万6,477.5円※ = 96万2,292円
(2)住民税:685万円 × 10% = 68万5,000円
(3)配当金に関する源泉税額:10万円 × 20.315% = 2万315円
差し引き合計((1)+(2)+(3))=166万7,607円

<確定申告あり(総合課税選択・配当控除適用)>

 総合課税のため、配当金をその他の所得と合算して税金を計算します。

(4)所得税:695万円(685万円+10万円) × 20.42%※ − 43万6,477.5円※ = 98万2,712円
(5)住民税:695万円 × 10% = 69万5,000円
(6)配当控除:10万円 × 12.8%(所得税控除10% + 住民税控除2.8%)= 1万2,800円
差し引き合計((4)+(5)−(6))=166万4,912円

 確定申告をすると2,695円、税金が少なくなるというわけです。判断の目安は所得695万円。年収がそれを下回るという場合には、確定申告を検討してみる余地があると思います。

亮子「確定申告は面倒かもしれないけれど、そもそも所得が少ないという人は、試してみる価値はあるよね」

啓子「税率、そして配当金の額によって変わってきますので、がんばって確定申告することで、ちょっとした日当分くらいの還付を受けられる可能性もあります」

亮子「確定申告も、初めての時は大変だけど、少し経験すれば随分楽になるしね」

啓子「配当金を受け取った場合には、ぜひ、今回の話を思い出してほしいです!」

(文=平林亮子/公認会計士、アールパートナーズ代表、徳光啓子/公認会計士)