FacebookとGoogleがデジタル広告収益を吸い上げ続けるなか、パブリッシャーは収益ポートフォリオの多様化を狙っている。なかでも注目を集めているのが消費者からの直接収益だ。

ニューヨークメディア(New York Media)とデイリービースト(The Daily Beast)の重役が、コロラド州のベイルで開催された「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT」で消費者収益プログラムについて調査を行っていることを明かした。雑誌のニューヨーク(New York)や、バルチャー(Vulture)、グラブストリート(Grub Street)といったウェブサイトを持つニューヨークメディアのCRO、アビ・ジマック氏は、同社のデジタル資産のいくつかにペイウォールの導入を検討しているという。一方、デイリービーストのCEO、ヘザー・ディートリック氏は、同社は付加価値のある会員制プログラムの立ち上げを計画していると明かした。

収益口の多様性が重要



ジマック氏によると、ニューヨークメディアの印刷およびデジタル媒体の収益のおよそ7割が広告収益だ。同氏は全面的なペイウォールの導入は考えていないものの、同社のデジタル媒体のポートフォリオにおける妥当な購買料について検討しているという。

ジマック氏は、「収益ポートフォリオが多様であることが重要だ。ペイウォールは万人にとっての正解ではない。だが、ニュース中心のメディアでは道理にかなったやり方であり、当社はニューヨークやデイリーインテリジェンサーを保有している」と、指摘する。

一方、ディートリック氏は、デイリービーストは既存のコンテンツの有料化ではなく、新商品を非常に熱心なユーザーに提供する手法を検討しているという。たとえばデイリービーストのジャーナリストが主催する独占イベントや集会などだ。同氏によると、デイリービーストの収益の半分以上は広告収益となっている。

体験提供の会員モデル



USAトゥデイと109のローカルニュース誌を束ねるUSAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)もまた、会員モデルに投資してきた。USAトゥデイ・ネットワークは、あらゆる市場で、同社が主催するフードフェスティバルやディナー、映画などで特典を受けられる無料会員プログラムを提供している。USAトゥデイ・ネットワークでCMOを務めるアンディ・ヨスト氏によると、このアイデアは収益を増やすことではなく、ユニークなコンテンツや体験を提供して、購読者をつなぎとめることだという。

ヨスト氏によると、このプログラムに加入している購読者の維持率は、未加入者の3から4倍にものぼるという。また、親会社のガネット(Gannett)の収益全体のおよそ3分の1を購読料が占めているとのことだ。

同氏は、「両者の購読者の維持率の差は非常に大きい。当社にとっては大きな額になる」と語る。

プロダクト提供の事例



ペイウォールと会員モデル以外にも、消費者収益を挙げるための新商品を打ち出すパブリッシャーも存在する。たとえばスキム(theSkimm)は、月に3ドルで使用できるカレンダーアプリを提供している。このアプリは、同社のニュースレターでカバーしきれない、よりディープな話題に踏み込んで紹介している。同社は人を集め、とりわけ熱心なユーザーにアプリのダウンロードと登録をさせようと力を入れている。

スキムの最高業務責任者を務めるブランドン・バーガー氏は、「当社のプラットフォームには1000万人以上のオーディエンスがいる。そのうち100万、200万、300万人をコンバージョンにつなげられれば、非常に強力なビジネスになる。当社の狙いはそこだ」と語る。

新たな収益源を生みだしたいパブリッシャーにとって、商品販売もまた重要な検討事項だ。バーガー氏によると、たとえばスキムでは、商品販売をいかに伸ばすかを検討しているという。同社の中心的なオーディエンスである3万人の「スキムバサダー(Skim’bassadors)」に提供する商品の製作なども行っている。

ユーザーファーストの事業



インサイダー(Insider Inc.,)のCRO、ピート・スパンデ氏は、収益の3分の1が広告、3分の1が購読料、そして残り3分の1が商品販売やコンテンツのライセンス契約となるのが同社の目指す理想的な収益モデルだと語る。現在、同社の収益の6から7割が広告収益だ。

ジマック氏によると、現在ニューヨークメディアが商品販売であげる収益は、年間数億円にのぼるという。同社のeコマースサイトのストラテジスト(Strategist)には、掃除機から人気テレビ番組でスターが着るオーバーオール、さらにさまざまな商品を紹介する記事に至るまで、あらゆる商品へのリンクが載せられている。ジマック氏は、ストラテジストは今後も成長を続けるだろうと語る。同サイトは昨年の立ち上げから、ユーザーは200%の伸びを記録し、収益は4倍にもなっている。

ディートリック氏は、収益ポートフォリオの多様化はもちろん重要だが、それと同時にパブリッシャーがビジネスファーストではなく、ユーザーファーストで事業を展開しなければならないと指摘する。

同氏は、「商品販売は、収益を最優先に行うべきではない。あくまで読者のためのサービスであるべきだ」と語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)