成長を続ける中小企業は何を大事にしているのか? その3つの鍵とは

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日本の企業の99.7%が、中小企業であることをご存知だろうか。

実はこれは日本だけではない。世界を見ても、ヨーロッパ(EU加盟国)の99.8%、アメリカでも99.9%が中小企業だ。大企業が何かと注目されがちだが、数でいえば、世界中のほとんどが中小企業といえる。

では、この厳しい時代に成長を続けている企業は、どのようなことを大事にし、何に悩み、どこに向かって進んでいるのだろうか。

『世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』(安西洋之著、クロスメディア・パブリッシング刊)は、決して衰えることなく生き続ける職人の技の発展や国境を越えたビジネスのセンスなど、自分の感性に正直に生きる経営者たちの生の声を紹介している。

■小さな会社でも強いビジネスを展開する「ほぼ日」

ネットから情報を得ている人なら、「ほぼ日」を読んだことがない人はほとんどいないだろう。コピーライターとして活躍する糸井重里氏が率いる株式会社ほぼ日が運営する「ほぼ日刊イトイ新聞」だ。

1998年からウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営しているが、読者層を絞らず、サイトで広告収入を得ることもしていない。ひたすら高いクオリティのコンテンツを作り上げることに集中し、手帳やTシャツ等のオンライン雑貨販売で売り上げを伸ばしている。

2017年には看板商品の一つ『ほぼ日手帳』が67万部の売上を記録したという。前年度版よりも6万部増。年間約40億円の売り上げで従業員は70人前後の同社は、業界他社と比べて、高い収益を誇っている。また、2017年3月にはジャスダックに上場をしたことでも話題になった。

■「公私混同」がチームや社員を育てる

糸井氏が盛んに強調していることは「公私混同」だ。
人はそもそも公私に分けることはできないのだから、あえて分ける習慣を放棄せよということである。

この公私混同について、同社の取締役である篠田真貴子氏は

「国境超えを含め、通り一遍でいかない仕事は、程度の差はありますが公私混同すると突破しやすいのかもしれませんね。当社についていえば、『私』の部分にも『ほぼ日らしさ』が入っているから、『私』の動機や判断に依拠しても組織、ブランドの一貫性が保たれると考えています」(本書p.229ページより引用)

と、述べている。
これは、経営者が持っているビジョンが働く人たちの間に染み込んでいる、つまり「ほぼ日らしさ」が依拠した判断や行動ができるようになっているということだろう。まさに「一枚岩」だ。

また、篠田氏は、企業の成長について重要な3つの鍵をあげる。

1つ目は『どうあったら良いのか』という深い動機。
2つ目は潜在市場が大きいこと。
3つ目は世の中の流れ、時代背景、時の運。要はタイミング。

篠田氏は、人が喜んで集まる状態を作り、そこから稼ぎ方が派生するというのが糸井氏のイメージだと指摘する。この自分たちでイニシアチブを作るという姿勢が「ほぼ日」の強さであり、顧客の居心地の良さにつながるのかもしれない。

■会社を創り出す「理念」を大切にすべし

もう1社紹介しよう。株式会社マザーハウスは「途上国の自立をビジネスによって後押ししたい」という理念を掲げて2006年に社長の山口絵里子氏によって創業された。バッグなどのアパレル商品を創業時からバングラディッシュにある自社工場で生産し、販売している。

副社長の山崎大祐氏は、企業の成長にあたって重要な3つの鍵として、「理念」「失敗の仕方」「未来志向」を挙げている。
この中でも最も重要としているのが「理念」だ。会社立ち上げの頃はまずリソースが揃うことはない。では、何が会社を創り出していくのかというと「理念」だ。マザーハウスはその理念を原動力にしながら、苦難の道を乗り越えてきたのだろう。

もちろん、「失敗の仕方」「未来志向」も極めて重要なカギだ。ビジネスにおいては、一度の失敗が財務的に致命傷になることもある。だからこそ、「財務リスクは最小化し、失敗の本質を得ることができるコストを最小化することが必要」(p.223より引用)と山崎氏は述べるのだ。

本書は、中小・ベンチャー企業やマーケティングに携わる人たちに向けて執筆された一冊。国内外問わない豊富な事例で、成長企業の要点を学ぶことができる。
伸びている中小企業は、何を大事にして経営しているのか。日本をはじめ、世界各国の成長を続けている中小企業から学ぶことは多いはずだ。

(新刊JP編集部)

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