3月25日、自民党の党大会での安倍晋三首相(写真:REUTERS/Issei Kato/Files)

新年度に入り、さすがに森友学園問題はそろそろ沈静化するようにみえた。3月27日に衆参両院で行われた佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が野党の追及の甘さで“不発”に終わったため、これ以上なすすべもなくくすぶり続けるように見えたからだ。

ところが4月4日の『ニュース7』(NHK)が豊中市内の国有地の8億2000万円の“値引き”を巡って財務省(理財局)が森友学園に“口裏合わせ”を求めたと報じたことをきっかけに、この問題に再び火が付いた。

民放も相次いで後追い報道

もっとも同番組のこの日のトップニュースは、新たに見つかった防衛省の日報問題。放映開始直前に小野寺五典防衛相が会見していたため、“口裏合わせ問題”の報道時間はわずか2分余りにとどまっている。

しかし財務省による“口裏合わせ問題”はその後の『ニュース9』でも報じられ、午後10時からの『クローズアップ現代+』は、森友学園問題を巡る「公文書改ざん問題」を取り上げた。翌日には民放のニュース番組も相次いで後追い報道をしている。

『クローズアップ現代+』では、国有地売買についての決裁書が改ざんされた昨年2月下旬から4月にかけて、904回にもわたった佐川理財局長(当時)の答弁を分析。このうち改ざん前と食い違う答弁は44回で、そのうち事前の価格提示や政治家に関する記録についての答弁は41回とその大部分を占めることを明らかにした。決裁書の改ざんに政治家による関与が色濃くあったことが伺える。

理財局から森友学園に“口裏合わせ”の申し出があったのは昨年2月20日の月曜日。このタイミングは、野党から「ゴミ撤去のための値引きの根拠が曖昧」と批判されていた頃だ。

約8億2000万円の費用でゴミを撤去するのならば、約1万2000立方メートルの残土を運び出し、新たな土で埋め立てなければならず、そのためには約4000台ものトラックによる運搬が必要になる。

この時、野党議員は調査のために現地に赴いたが、数千台ものトラックが実際に行き交うことは不可能であること、その様子を目撃した人もいなかったことを確認している。にもかかわらず、理財局は森友学園に「何千台ものトラックでゴミを撤去したと言ってほしい」と口裏合わせを依頼し、学園側はこれを断った。

当時を振り返ってみると、安倍晋三首相が「私と妻が関係していたら、総理も議員も辞める」と衆議院予算委員会で啖呵を切ったのは、その3日前の2月17日金曜日。間に土日を挟むため、実質的に理財局から口裏合わせの依頼があったのは、その直後ということになる。

不自然なまでに理財局長の責任を強調

そしてこの“口裏合わせ”の依頼から2日後の昨年2月22日、財務省と国交省は官邸で菅義偉官房長官にこの件について説明していた。これには財務省からは理財局長だった佐川氏が参加したことが明らかにされているが、その他に財務省から誰が同行したのか。

これについて今年4月3日の衆議院財政金融委員会で、立憲民主党の川内博史議員が質している。ところが、太田充理財局長はなかなか答えようとはしなかった。審議はいったん打ち切りになり、立憲民主党の海江田万里理事らが強く抗議した結果、小里泰弘委員長に指示されて答えざるをえなくなった太田氏は「総務課長と総括審議官が同席した」と述べたものの、その名前を頑として伏したままだった。

だが太田氏は理財局長に就任前の2015年7月から2年間、大臣官房総括審議官を務めており、まさにこの時期に該当している。つまり太田氏は同席していたわけである。

「基本的に(佐川)理財局長が説明した。本来であれば局長が責任をもって説明すべきこと。仮に誰かを連れていって説明させたとしても、最終的責任者は理財局長だ」

この時、太田氏は何度も「理財局長の責任」を繰り返している。不自然なまでに理財局長の責任を強調したその理由はいったい何なのか。

疑問はまだある。理財局からの口裏合わせを断った2月20日夜、森友学園の籠池泰典元理事長はTBSのラジオ番組に出演。約8億2000万円とされたゴミ撤去費用について以下のように話しているのだ。

「8億円云々というけれど、元々その金額がいくらだったのか知らない」

「(「8億いくか?」と聞かれて)いやだって、運動場の下のところは取り出さなくていいから、触っていないから。運動場で使うところは何も触らなくていいから、お金がかかることはない」

この直後、籠池氏が当時の顧問弁護士を通じて理財局の職員から「身を隠してほしい」と言われたことも謎だ。籠池夫妻はメディアの前からしばらく姿を消したが、その間、安倍首相の籠池評が大きく変化したこともまた不思議である。

首相の態度激変と文書改ざんの時期が同じ

「妻から森友学園の教育に対する熱意は素晴らしいという話を聞いております」

2017年2月17日の衆議院予算委員会では、このように安倍首相の籠池評は好意的だった。だがこれが2月下旬になると、一気に否定的へと変わっていく。

「この方は非常にこだわるというか、そう簡単に引き下がらない方でございまして」(2017年2月24日 衆議院予算委員会)

「非常にしつこい中において、非常に何回も何回も熱心に言ってこられる中」(同)

その激変ぶりは質問に立った野党議員をも戸惑わせたほどだったが、この頃から決裁書の改ざんが始まっているのである。

なお同問題を追及している共産党の辰巳孝太郎参議院議員は4月5日の野党共同ヒアリング終了後、「昨年の2月17日、20日、22日、24日を繋いでいけば、真実が見えてくる。籠池氏に『姿を消せ』と言ったのは、ラジオ番組でしゃべりすぎたために口止めが必要だと思ったのだろう」と、記者団に述べている。

まだまだ闇は深いのだが、NHKのスクープを契機に全容解明へ向けて一歩前進したことは間違いない。