インフルエンサーマーケティングは、成長するにつれて進化している。ブランドは、インフルエンサーに対する予算を増やしたり、インフルエンサーマーケティングを社内で行ったり、インフルエンサーをマーケティングパートナーとして扱ったりしている。変化はほかにもある。インフルエンサーとの契約は、TV広告や広告看板に出演する従来のモデルとの契約に似はじめている。

契約内容は包括的だ。現在は、投稿の長さや、支払い対象となる拡散期間、たとえば動画やインスタグラムのストーリー、ブーメラン(Boomerang)など、コンテンツの具体的な種類、コンテンツの量、独占権、秘密保持契約、支払い条件が含まれる場合が多い。

従来型に似てきた



「最近、インフルエンサーとの契約は、従来型モデルとの契約に似てきた」と語るのは、インフルエンサープラットフォーム、インフルエンシャル(Influential)のCEOであるライアン・デタート氏だ。同社は、「IBM Watson」が運用する人工知能(AI)プラットフォームを利用して、ブランドとインフルエンサーのマッチングを行っている。いまでは契約に、類似物やコンテンツ利用に対するライセンス権が含まれ、ただのソーシャルチャンネルとは対照的に、インフルエンサーをディスプレイ広告やテレビ広告、広告看板に利用する機会を開いているという。

法律事務所ハッシュタグ・リーガル(Hashtag Legal)の創設者ジェイミー・リーバマン氏も、この2カ月間、インフルエンサーを長期間求める契約が殺到するのを目にしてきた。たいていは、1回または数回の投稿ではなく、半年から1年の契約期間となっている。リーバマン氏によると、契約では「インフルエンサー」よりも「ブランド広報担当者」と呼ばれることのほうが多く、もっと対面型の登場を要求したり、YouTubeに遺体動画を投稿したローガン・ポール氏のような、スキャンダラスなことをインフルエンサーがしないようにするモラル条項が含まれている場合もあるという。

マイクロインフルエンサーでさえも、ブランドパートナーと長期契約を結ぶようになってきている。ブログ「ヒスパニア・グローバル(Hispana Global)」と、そのソーシャルチャンネルを運営し、インフルエンサーエージェンシーのエブリウェア・エージェンシー(Everywhere Agency)と協力しているマイクロインフルエンサーのジネット・カプラン氏は、これまでよりも長期の提携を定期的に結んでいると述べている。

5年前とは大違い



インフルエンサーマーケティングエージェンシーのフーセイ(WhoSay)は、インフルエンサーとブランドとの契約書を作成している。利用するインフルエンサーとの提携期間の延長や、ソーシャルの枠を越える人材をブランドが求めている場合には、それを反映して契約書を更新してきた。

フーセイのCMOであるポール・コントニス氏によると、昨年、契約内容を改訂し、テレビや店舗、eコマースでのキャンペーンのような、ほかの用途にインフルエンサーのコンテンツを利用する選択肢を付加したという。現在、ブランドはそれを利用しはじめている、と同氏は語る。たとえば、Googleは2月に、エンターテイナーのルポール氏とのソーシャルキャンペーン契約を利用して、テレビコマーシャルでもスマートフォン「ピクセル2(Pixel 2)」をうまく宣伝した。また、ウォルマート(Walmart)がミュージシャンのジャナ・クレイマーを起用して開始したソーシャルキャンペーンは、店内コンテンツにも利用された。

ほとんどの契約がメールや握手、電話で結ばれた1回限りのものだった5年前とは大違いだと、リーバマン氏はいう。投資利益率(ROI)の計算が大変で、フォロワー詐欺が蔓延しているのに、インフルエンサーマーケティングは、いまではブランドのマーケティング戦略の重要な一部になっている。インフルエンサープラットフォームのリンキア(Linqia)によると、2018年に、ブランドはインフルエンサーマーケティングへの支出を増やしているという。同社がマーケター181人を対象に調査したところ、39%の回答者が予算を増額しつつあることがわかったのだ。

動画シフトもはじまる



動画の依頼も契約書によく見られる。リーバマン氏によると、インフルエンサーによって契約内容は大幅に異なるが、全体的には、ブロガーでさえも、ブログ投稿を減らして動画を増やすよう求められているという。

「動画フォーマットが静的コンテンツを上回ってきたので、視聴単価(CPV)をもっとも重要な価格モデルと見なしている」とインフルエンサーマーケティングプラットフォーム、indaHash(インダハッシュ)の米国事業開発担当バイスプレジデントであるジョン・カリス氏は語る。

インフルエンサーとの契約に関連するもうひとつの分野は、詐欺行為を行うフォロワーとブランドセーフティだ。フーセイは、すべてのキャンペーン契約に、インフルエンサーの全アカウントをホワイトラベル化する権限を得る条項を盛り込んでいる。そのおかげで、アカウントを管理し、プラットフォームを利用して、インフルエンサーが抱えていそうな偽フォロワー数を判断できる。フーセイは3年前からこうした措置を採っているが、広告詐欺を規制して、インフルエンサーをブランドにとって安全な存在にするとして、ブランドもいまになってこのやり方を高く評価している、とコントニス氏は語る。インフルエンサーのローガン・ポール氏は、最近のYouTubeスキャンダル以前に同社のプラットフォームから離れたという。

簡素化もトレンド



複数の契約を結ぶ必要性を完全になくすプラットフォームを利用しているブランドもある。P&G(Procter & Gamble)のブランド「ヘッド&ショルダーズ(Head & Shoulders)」とロレアル(L'Oreal)は、マイクロインフルエンサープラットフォームのピアーズウェイ(Peersway)を利用し、インフルエンサーと個人契約の交渉を行う代わりに、同プラットフォームと単一の契約を結んでいる。ピアーズウェイのCEOであるアーナブ・マージュムダー氏によると、これは「インフルエンサーと個別料金の交渉や個々の契約の交渉を行う必要がなくなるので、ブランドが多くの時間を節約する」のに役立つという。料金の幅が広い可能性がある契約の交渉をする代わりに、ピアーズウェイは、インフルエンサー1人1投稿あたり60ドル(約6400円)、インフルエンサー1人2投稿あたり90ドル(約9600円)をブランドに請求している。固定料金なので、同社のプラットフォームでは、業界平均が50セント(約53円)であるエンゲージメント単価(CPE)を25セント(約26円)未満に抑えることができる、とマージュムダー氏はいう。

エージェンシー数社によると、インフルエンサーとの契約にまだ登場していないのは、ブランドが期待するKPIだという。インフルエンサーのコンテンツによるインプレッション単価(CPI)やCPV、CPEを測定する意図について、ブランドは話し合うようになるだろうが、フーセイはこれを契約外のままにすると、コントニス氏は語る。インフルエンサーが達成すべき仕事ではなく、エージェンシーが達成すべき仕事だからだという。

リーバマン氏の話では、インフルエンサーにとって、保証できないキャンペーンの目標には同意しにくいらしい。それでも、特に交渉と、どのコンテンツがブランドに多くの利益をもたらすかを判断するために、インフルエンサーがブランドのKPIを理解することが重要だ、と同氏はいう。だが、ほとんどのインフルエンサーは、尋ねようと考えない。「インフルエンサーはまだ、そうした会話について質問するようになりつつある段階だ」。「ブランドが求めていることを正確に知るように」というのが、顧客のインフルエンサーに最初にするアドバイスだ、と同氏は語った。

Ilyse Liffreing(原文 /訳:ガリレオ)