ベテラン職人が手作業で製作

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 水谷理美容鋏製作所(千葉県松戸市)は、一人ひとりの理美容師の使い方に応じた商品づくりを進めている。約200点の商品を基にカスタマイズするとともに、オーダーメードで対応する。水谷社長は「量産品のはさみに理美容師が合わせるのではなく、理美容師に合わせるのがモノづくりの基本だ」と断言する。

 水谷理美容鋏製作所は水谷社長の祖父である水谷頼次氏が1921年に創業した。理容師だった頼次氏が自分に合ったはさみづくりから事業に発展した。父の元一会長も職人だった。一人ひとりの使い方に応じたモノづくりのDNAは水谷社長も受け継いでいる。

 同社の2017年8月期の売上高は5億円で海外比率は60%弱だ。水谷社長は「(国によって)髪質は異なるし、理美容師の髪の切り方など手法も異なる」と一品一品のモノづくりの重要性を強調する。使い方にきめ細かく対応することで、21年8月期に海外売上高比率80%を目指す。

 一般的に理美容はさみは3万円以上が高級品に分類されるが、同社の商品は、その上の5万円以上の商品が主力だ。水谷社長は「機械でできる仕事はやらない。ロットの大きい仕事もやらない。我々が必要とされる仕事しかやらない」と仕事の内容にこだわる。

 同社のはさみの特徴はボールベアリングを採用し、摺動(しゅうどう)性を高めることで、理美容師の負担を軽減するなど機能を追求した高いデザイン性だ。特種素材の熱処理など一部を除き、鉄板からの刃材の切り出しから全工程を自社で行う。

 素材にはナノレベル(ナノは10億分の1)の微細な粉末で構成される鋼材「ナノパウダーメタル」や、航空機のエンジンで使用されるコバルト基合金を採用。パーマ液などの薬品を使うことを踏まえ、耐腐食性と耐摩耗性に優れた素材を使用する。

 メンテナンス体制も整えられており、販売代理店以外にも国内は本社と東京都港区、大阪市中央区のショールームで対応する。6月には同社発祥の地である東京・浅草にも開設。直接ユーザーの要望を吸収する狙いもある。

 海外は現地で教育した後、本社でトレーニングして職人を育成している。米国や英国、ドイツ、アイルランド、韓国、香港、シンガポール、豪州などに十数人の職人がいる。今後も海外で職人育成を進め、メンテナンス体制を固める。
(文=千葉・中沖泰雄)