甘い話はそうそうありません(写真:AH86)

いつの世も絶えない投資トラブル。なぜ、引っかかる人が後を絶たないのか。「怪しい投資話を疑わない人が知らない大原則」(3月27日配信)、「家賃保証を疑わない人が嵌る不動産投資の罠」(3月28日配信)に続いて、短期集中連載の第3回は、株や事業へ投資するリスクに迫る。

昨年12月、健康機器を販売していたジャパンライフ(本社・東京都千代田区)が事実上倒産(銀行取引停止)と報じられた。その後も事業継続の意思を表明していたが3月1日に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約2400億円だという。

預託商法(よたくしょうほう)、あるいはオーナー商法ともよばれるが、ジャパンライフは健康機器を販売しそれをレンタルすれば利益を得られるという名目で、高齢者に1人当たり数千万円の資金を出させていたケースもあったと言う。

「お得な投資」は回ってこない

資産運用の代表選手と言えば株式投資だが、一般的には上場企業への投資を指す。ただ、中には上場していない企業への投資もある。「未公開株」とよばれるものもあれば、事業への投資で●%の利回りが得られるといった場合もある。ジャパンライフの預託商法・オーナー商法も事業への出資に該当する。

未公開株は安値で手に入れて上場によって株価が何倍にもなるというストーリーが語られる。事業への投資でも通常では考えられないほど水準の高い配当が提示され、場合によっては元本保証まで約束される。手短かに警告すれば「そんな美味しい話がなぜ存在しているのか? なぜその人に回ってくるのか?」ということになる。

ありがちな説教のような話になってしまうが、実際に投資事業で利益を出し、「美味しい投資話」が回ってくる立場だったというサイバーエージェント・藤田晋社長のインタビューを読んでもらえれば理解してもらえるだろう。東洋経済オンラインが2015年4月2日に配信した記事(「ベンチャーブームに浮かれる面々にモノ申す」) から引用する。

――どうやって投資先を探していますか。
行き当たりばったり。探すというより、繋がった先で投資を決めている。何だかんだで「渋谷村」みたいなものがIT業界はあるので、夜飲んでいる時に繋がったり、信頼できる人から紹介されたり、そうしたケースが多い。
ネット系のいい会社は、あまり資金を必要としておらず、いくらでも出し手が集まる。結局はコネというか「ちょっと入れさせてよ」って感じで決まる。これは近くにいるからできること。われわれが有利なポジションにいることに気が付いて、投資育成事業を始めた。実際にネット系っておカネもかからないので、出資を断る会社は多い。今はクラウドも使えるし、ネット系のビジネスは本来おカネがかからない。
――政府系ファンドも投資が活発です。
政府系も独立系VCも、どこもいい加減な投資はしていない。だから投資されるベンチャーがはっきりしている。全然おカネが回らないベンチャーは山ほどある中で、一部のスター性がある会社に殺到してバブルになっているだけ。みんながいいと思う会社は、人もカネも取引先も集まってどんどんよくなる。一方で資金が回ってこないベンチャーに投資したいかと言われると僕もしたくない。」

有望企業への投資は情報とツテ・コネがあることが前提

藤田氏の言うとおり、有望な企業への投資は情報とツテ・コネがあることが前提となる。加えてそこには資金が殺到する。誰から投資を受けるか企業が選ぶ立場であることもわかる。そしてIT大手で上場企業でもあるサイバーエージェントのような企業から出資を受けることは事業運営でもプラスに働く。

どこの馬の骨ともわからないベンチャー企業であっても、サイバーエージェントのようなIT大手が出資しているなら信用しようか、取引をしようか、ここで働いてみようか……とあらゆる面でプラスに働く。ハンズオン投資と言って、おカネを出すだけではなく経営にアドバイスをする投資スタイルもあり、特に上場を目指すならばすでに上場している企業から投資を受けることはさらに有利に働く。

「投資をする側は偉い」「おカネを出してやっている」と誤解する人もいるかもしれないが、それはお客側として投資信託や生命保険を買う場合だ。放っておいても資金が集まる将来性のある企業にとって、情報・コネ・アドバイスができる能力など、何もない人はたとえおカネを持っていてもご遠慮くださいと言われてしまうのが現在のカネ余りの状況だ。

それでも投資をしてくださいと個人から小口でおカネを集めるような面倒臭いことをやるのは、良くて藤田氏がインタビューで答えているような誰もおカネを出したがらないほど将来性のない企業か、それが詐欺狙いということになるだろう。

加えて、将来上場を目指す企業が不特定多数の個人から出資を募ることは通常考えられない。もし投資家の中に反社会的な勢力が混ざっていればそれだけで上場に赤信号が灯るからだ。結局まともな投資案件の話が回ってくるのは藤田氏が説明するように有利な立場にいる人や企業ということになる。

念のため説明しておくと、利回りや元本保証が約束されている場合はだいたい詐欺であると考えていい。元本を保証して資金を集めることは、出資法によって銀行や信用金庫など限られた金融機関にしか認められていない。つまり違法行為だ。

投資詐欺のニュースを見ると「出資法違反」の容疑で摘発されているケースは度々目にする。それだけ元本保証という言葉に弱い人が多いということになるが、実際にはその正反対で元本保証の売り文句は「詐欺の目印」といえるのかもしれない。

利回りは事業の利益で決まる

投資詐欺に引っかかる人は、「自分がいくら貰えるか?」という部分しか考えていないが、配当を受け取るには事業で利益が出ていることが前提だ。投資家が受け取る配当は発生した利益の一部でしかない。

妥当な利回りや配当の水準は「ROE」という指標を見ればわかる。ROEは自己資本利益率のことで、企業が出資額(純資産=自己資本)に対してどれ位の利益を出しているかを測る指標だ。計算式は「利益÷自己資本」とシンプルだ。

たとえばトヨタ自動車ならば2017年度のROEは13.77%程度、つまり投じた自己資本に対して13%くらいの利益を出している。日本の上場企業のROEは2016年度が年間8.3%なのでトヨタ自動車は平均よりかなり高いことが分かる。

では、もしトヨタ自動車が出資者に対して13.77%以上の配当を約束しておカネを調達したらどうなるか? 当然それ以上の利益を出せなければいつかは破綻する。

つまり出資に対する利回りは事業の収益性によって決まる。上場企業でなおかつ業績が良い現在ですら平均で8.3%ということは、出資に対して10%以上の配当を確実に約束するような投資案件は、詐欺である可能性が高いことが一瞬でわかる。

まれに毎月3%の配当、単純計算で年間36%など、メチャクチャな配当を約束するような案件もあるが、本当に36%を実現するのであればROEが36%以上と、平均の4倍以上というほとんどの企業が実現できない超高収益の事業を行う必要がある。このレベルの話になると一瞬で冗談であることがわかる。

史上空前のカネ余りで低金利が続く現在、企業の資金調達は極めて容易になっている。高い配当利回りを約束して個人からおカネを集めている企業は詐欺の疑いがありうる。

投資詐欺を信用させる一番簡単な方法は、実際に配当を支払うことだ。当初は配当を払って信用させ、被害者から追加でおカネを集める。そして家族・友人にも勧誘するように伝える。勧誘が成功すれば謝礼も支払う。たとえば利回りが5%ならば単純計算で20年間は受け取った資金から配当の支払いが可能だ。

そしてある程度のおカネが集まったら最後は逃げて終わりだ。集めたおカネの中から配当を支払って事業が上手く行っているかのように見せる手法を「ポンジ・スキーム」と言う。日本語で説明すれば自転車操業となる。昔からある、そして今後も確実に発生するであろう典型的な詐欺の手口だ。

投資詐欺なんて5秒で見抜ける

「あれも危ない、これも危ない、それじゃあどこで投資をすれば良いのか?」と文句を言われてしまいそうだが、「国内の金融機関で投資をすればいい」というのが答えだ。銀行、証券、生保はいずれも販売に際して、ときに問題点を指摘されることもあるが、少なくとも損をするリスクはあっても詐欺に引っかかるリスクはない。

健康機器の販売を行っていたジャパンライフは、購入額(出資額)が200万円の健康機器を買って貸し出せば受け取るレンタル料が月額1万円、あるいは出資額100万円に対してレンタル料は月額5000円と顧客に説明していたと報じられている。いずれも年率に直すと6%だ。

利回りが極端に高ければ怪しまれ、低過ぎれば魅力がなくおカネが集まらない。6%という数字の絶妙なところは、これぐらいの利回りは一昔前ならば定期預金でも得られた点だ。つまり投資に無知な人を騙すにはちょうどいい水準だと言える。

しかし元本保証の上限は原則としてその時々の国債の金利水準に限定される。現在の水準はアベノミクスによる金融緩和でゼロに近い。つまり年率1%の利回りでさえ投資家に元本保証では提供できない。これは資産運用の入門書にも書いてある程度の話だが、知らない人は6%の元本保証を「手堅い運用」と信じ込んで被害にあってしまうのだ。