グループ全体の業績を牽引する国内コンビニ事業。セブンーイレブンは客数が停滞する中、2018年2月期の既存店売上高は前年超えを達成した(編集部撮影)

業績好調の一方で、今後の経営課題が浮き彫りになった決算だった。

セブン&アイ・ホールディングスは4月5日、2018年2月期の決算を発表した。売上高にあたる営業収益は6兆0378億円(前期比3.5%増)、本業の儲けを示す営業利益は3916億円(同7.4%増)と増収増益で着地。営業利益は7期連続で過去最高を更新した。

コンビニは新レイアウトに注力

同社は前期から「100日プラン」と銘打った3カ年の中期経営計画を実行に移している。100日プランは2016年5月に長年グループを率いてきた鈴木敏文氏(現名誉顧問)が会長を退任し、後を引き継いだ井阪輶一社長以下、経営陣が就任から100日で編み出したもの。最終年度に当たる2020年2月期に営業利益4500億円を目指す。


今回発表した決算内容は、目標計画に沿って順調に推移しているといえそうだ。同日に行われた会見の席上、井阪社長は「中計目標を必達する覚悟で臨みたい」と力強く語った。

ただ、中期計画で重点施策として掲げた各項目を細かく見てみると、それぞれの進捗状況に濃淡があることがわかる。

まず、井阪社長が「成長領域」と位置付けるコンビニ事業については、計画通りに進んでいる。国内コンビニ事業を担うセブン-イレブン・ジャパンの2018年2月期の営業利益は2441億円(前期比0.3%増)となり、グループ全体の6割の営業利益をたたき出している。

セブンーイレブンでは中食需要の増加を受けて、冷凍食品売り場の拡大などを狙った新しいレイアウトの店舗を増やしている。前期は1300店に導入。同時に、肉や魚介類などと組み合わせたサラダやカット済み野菜など総菜類も拡充した。これらの効果で、ドラッグストアなど異業態との競争が過熱する中、既存店売上高は前期超えを果たした。

今2019年2月期も新レイアウト店を1700店増やす予定。カウンター周りの商品置き場の拡張も促進し、売り上げを伸ばす構えだ。

北米のコンビニ事業も順調に拡大している。セブン&アイは今年1月、米スノコLP(テキサス州)からコンビニとガソリンスタンド計1030店を取得。こうしたM&Aをテコに、中期計画の最終年度にあたる2020年2月期に1万店体制を目指す。

一方、GMS(総合スーパー)や百貨店事業は苦戦している。GMSの主力業態であるイトーヨーカドーは不採算店舗の閉鎖を断行。2017年2月期から2021年2月期までに40店の閉鎖を計画していたが、現在すでに24店を実施済み。今期も7店舗の閉鎖を計画する。

中期計画に沿って順調に進む店舗スクラップとは対照的に、100日プランで掲げた店舗立地を活かした不動産再開発の進捗については、「成果ゼロ」という状況だ。セブン&アイはGMSについて「(開業)30年以上の店舗を対象に店舗再開発を検討する」としていたが、現在は「2020年2月期に4店舗を再開発」ということしか決まっていない。少なくとも今期中に再開発店舗は出てこない。

H2Oとの協業は進んでいない

百貨店事業にいたっては、業界全体が構造不況に陥っていることもあり、収益が伸び悩んでいる。2018年2月期のそごう・西武の営業利益は50億円(前期比17.1%増)と一定の改善は進んでいるものの、中期計画で掲げる2020年2月期の営業利益130億円という目標には程遠い。今回、セブン&アイはそごう・西武について、目標数値の達成時期を1年先送りすることを明らかにした。


2月末に閉店した西武船橋店。地方店を中心に、百貨店のリストラは今後も続く可能性がある(編集部撮影)

中期計画では資本業務提携先の「エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングとの協業」を打ち出したが、こちらも成果はいまひとつだ。昨年10月にはそごう神戸店、西武高槻店をH2Oリテイリングへ譲渡したが、当初予定していた3店舗から2店舗に後退する結果となった。

H2Oリテイリング傘下である阪急阪神百貨店グループの「Sポイント」とのポイント連携も、「セブン-イレブンでも展開できるように準備しているが、すぐに導入できる段階というわけではない」(H2Oリテイリング関係者)と、若干遅れ気味のようだ。そのほかの協業策については、「話ができるレベルに達していない」(同)という。

今年2月には、西武船橋店と西武小田原店を閉店に踏み切った。「成長よりも、もう一段の構造改革」と井阪社長が強調するように、百貨店事業についてはさらなるリストラが必要となるかもしれない。

百貨店事業と同様に、オムニチャネル戦略についても足取りが鈍い。「リアル店舗とネット通販の融合」をうたい文句に、グループの通販サイトを結集し、「omni7(オムニセブン)」を立ち上げたのは2015年11月のこと。同時に2018年度に売上高1兆円という目標をブチ上げた。

井阪社長は100日プランを発表した2016年10月に、「不特定多数の顧客にアプローチしてきたことや、(顧客よりも)システム起点で進めてきたことが失敗の要因」と述べ、オムニ戦略の仕切り直しを宣言。昨年11月にはオムニセブンで、ニトリやゼビオなどグループ外の商品の取り扱いも始めた。

IT専業者との提携相次ぐ

ただ、オムニセブンで扱う商品はセブンプレミアムなどのPB(プライベートブランド)やメーカーとの共同開発品が多い。商品のラインナップではアマゾンや楽天市場に水を開けられている。前期のセブン&アイのEC事業売り上げは1087億円(前期比11.4%増)にとどまっている。


セブン&アイの井阪輶一社長は「中期経営計画の目標を必達する」と強調した(編集部撮影)

ネット事業という点においては、昨年11月からアスクルと提携して生鮮宅配サービス「IYフレッシュ」を東京・新宿区と文京区に限定して始めた。対象地区を今年内に城東地区、来年春ごろに城南地区まで広げる計画だ。今年6月には、グループ内のリアル店舗で買い物ポイントが貯まるスマホ用の新アプリも投入する。

とはいえ、ウォルマート傘下の西友は、楽天と組んでネットスーパーを展開することを表明。イオンもヤフーやソフトバンクとの連合でネット通販に乗り出す動きもある。ITや消費者ニーズの変化に対応するためには、同業他社と同じようにIT専業者との連携を模索することも考えられる。

セブン&アイは今回の決算に合わせて、中・四国や九州地方を地盤とするスーパーのイズミと業務提携することを発表した。仕入れの統合や西日本エリアにおける店舗の共同運営などを検討する。ただ、どこまでシナジーを創出できるかは、現時点では不透明だ。

中期計画1年目の結果は、従前の”コンビニ頼み”という収益構造から大きく変わった印象はない。会社側は今2019年2月期について、売上高6兆6830億円(前期比10.7%増)、営業利益4150億円(同6%増)を見込む。中期計画で掲げた目標を達成するためにも、2年目からはGMSや百貨店、ネット戦略における成果が求められる。