新党構想を協議のため 民進党の両院議員総会に出席した大塚代表(左から2人目)、増子幹事長(中央)、岡田常任顧問(右から2人目)(写真:共同)

季節はずれの都心の夏日で永田町周辺の草木の新芽も緑を濃くする中、昨秋にバラバラに枝分かれした民進系野党の再結集話が、新たな段階を迎えている。触媒役を自称する民進党が、再結集のための「新党」結成の方針を決め、立憲民主党、希望の党に参加を呼び掛けたからだ。

ただ、希望の党は新党参加の方向だが、野党第1党の立憲民主党は「合従連衡をするつもりはさらさらない」(枝野幸男代表)とのすげない対応だ。勧進元の民進内部でも岡田克也元副総理ら重鎮組が不満を隠さず、希望も参加組と不参加組がいて党分裂が確定的だ。このため、現状では「安倍政権に対峙する大野党」の新芽どころか、日本版・オリーブの木といわれた民進系野党の解体への根腐れが進みかねない。

民進・大塚耕平、希望・玉木雄一郎の両代表は、来夏の参院選など次の国政選挙をにらみ、「自公政権打倒には民進系再結集による新党結成が必要」と口を揃えるが、「森友」問題に続く陸上自衛隊の「イラク日報」隠蔽疑惑で安倍晋三政権の危機が拡大する中での再結集騒動は、「現在の野党共闘への背信行為」との批判も免れない。大塚代表らの目指す「新しい民主党」による大野党復活に対し、民進系3党内には「帰ってきた民主党」と揶揄する声が広がる。このため、永田町でも「再分裂で野党の多弱化が加速して、敵(安倍政権)に塩を送る」という支離滅裂の結末を予測する向きも少なくない。

立憲民主抜きの新党には重鎮組が不満

昨年10月末の就任以来、民進系3党の大同団結を訴え続けてきた民進党の大塚代表は、3月30日の同党両院議員総会で、分散した民進系議員を糾合する新党結成方針を提案して了承され、4月1日の都道府県連幹部も参加した全国幹事会でも同意を取りつけた。ただ、立憲民主との連携を重視する党内重鎮議員らの反対意見を押し切っての決定で、党再分裂の危機も拡大した。

大塚氏は両院総会で「昨年の総選挙で不条理にもばらばらになってしまった同志に結集を呼び掛けたい」と協力を求めた。これに対し、安住淳元財務相が「立憲中心に野党共闘をやっている時に、こういうこと(新党)に労力を使うこと自体が共闘に対する背信行為だ」と批判するなど、多くの衆院議員が反対論を展開。民進の衆院会派「無所属の会」代表の岡田克也党常任顧問も「野党のリーダーは枝野氏だ。そことの関係をきちんとしないと野党が力を発揮できない」と立憲抜きの新党には反対する姿勢を明確にした。

大塚氏は、党組織を存続させた上で、希望の民進出身議員を吸収し、5月連休前の新党結成を目指している。これに対し、希望も4日の党役員会で民進党が呼びかける新党協議に応じる方針を決めた。同党は6日の両院議員総会で所属議員の了承を取り付け、玉木代表が大塚民進代表との党首会談で正式合意する方針だ。玉木氏は役員会で「今までは民進主導だったが、これからは希望がイニシアチブをとってやりたい」と新党結成への強い意欲を強調した。

これをうけ、玉木代表は5日、民進出身でない松沢成文参院議員団代表ら保守系議員と、党を分割する「分党」に向けた具体的協議に着手した。結党メンバーの松沢氏はすでに執行部に分党を求めており、「議員5人以上」という分党の条件を満たすため、中山恭子、行田邦子両参院議員と中山成彬、井上一徳両衆院議員を加えた5氏で「松沢新党」を旗揚げする方針だ。

細野氏「俺は嫌われている」と孤立

そうした中、注目を集めたのは希望結党メンバーのリーダー格でもあった民進出身の細野豪志元環境相の動向だ。同氏は昨年8月末の小池百合子東京都知事による希望結党宣言の際、「新たな保守党」を目指して真っ先に参加した。細野氏は、玉木代表ら希望執行部が結党時に決めた憲法9条改正の方針を覆したことについて「理念や政策をねじ曲げて選挙のことを考えて動けば政治家として死ぬ」と反発しており、3日に新党不参加を宣言した。

細野氏は憲法や安全保障に関する路線対立を理由に民進党を飛び出して希望に参加した経緯があり、「先祖返り」は自己否定ともなる。さらに、昨秋の衆院選直前に民進党議員が希望に移籍する際、細野氏が野田佳彦前首相らに対し露骨な「排除」発言をしたことで、今回は民進党側から「こっちが細野氏を排除する」との声が噴出していたことも孤立の原因だ。

細野氏は2日夜、日本維新の会の馬場伸幸幹事長ら幹部と都内で会食した際、「俺は、嫌われてるから」と嘆いたという。「民進党の大塚代表が唱えているのは『帰ってきた民主党』だ。与(くみ)するつもりはない」と強がる細野氏だが、民進党からは「しょせんは負け犬の遠吠え」との厳しい声ももれてくる。

これまで細野氏と連携してきた希望の長島昭久政調会長も、4日の役員会で「比例で1000万票を投じてくれた有権者に申し訳ない」と分党と新党結成の双方に反対した。現時点で、細野、長島両氏に近い保守系結党メンバーも新党不参加とみられており、新党結成に伴い希望は3分裂し、細野氏らが「政界の孤児」となる可能性も否定できない。

一方、民進党内でもテレビキャスター出身の杉尾秀哉参院議員は1日、「立憲民主党をのけた形での合流はまったく賛成できない」と新党不参加を表明した。小川敏夫参院議員会長ら数人も立憲抜きの結集に反発しており、民進党も再分裂が避けられない状況だ。

現在、国会での野党第1党は衆院が立憲民主、参院が民進と"衆参ねじれ"の状態が続いている。このため、大塚、玉木両氏は民進・希望両党による新党結成で、衆院でも野党第1党となって、安倍政権と対峙したい考えとされる。しかし、現状では民進衆院組や希望保守系の不参加で、衆院の所属議員数で新党が立憲民主を上回るのは困難とみられている。

民進の増子輝彦幹事長は、新党参加を拒否する立憲民主について「我々はかつての仲間で、政策や綱領もほぼ一緒だ。"別れても好きな人"なので、今後とも連携をとっていきたい」と未練を隠さない。しかし立憲民主は、居場所が定まらない衆参民進系議員の取り込みを狙う構えで、"民希新党"の結成は「民進系再結集どころか、感情的対立による"バラバラ民進"を増幅させる」(共産党)ことにもつながりかねない。

新党名の「民主党」使用には立憲民主がクレーム

こうした中、政界の興味が集中するのが新党の名称だ。大塚氏は「新しい民主党」と繰り返し、民進、希望両党から参加する議員の間では「そのものずばりの『民主党』とすればいい」との声が広がる。ただ、文字通りの先祖返りとなり、政界でも細野氏同様に「帰ってきた民主党」と揶揄する声が出るのは間違いない。そもそも、2009年の民主党政権発足から3年余の政権運営への国民の失望と怒りが、現在の安倍1強政権につながったとされるだけに、「また『民主党』では、国民がそっぽを向く」(民進長老)との不安も拭えない。

新党名については、立憲民主の福山哲郎幹事長は3日の記者会見で、「『民主』が使用される場合、選挙の際の略称設定で混乱が生じる恐れがある」と強い懸念を示した。立憲民主は昨年の衆院選比例代表で、略称を「民主党」として届け出ており、福山氏は「略称の保護がどうなるか総務省に調べてもらっている。議論になるかもしれない」とクレームをつけた。

振り返れば、昨年10月の衆院選での野党敗北以来、民進、希望両党での再結集論は浮沈を繰り返してきた。現状のように、野党が細分化したまま次の国政選挙に臨めば、政権交代など望むべくもない。だからと言って理念や政策の違いを無視して「何が何でも一塊(ひとかたまり)に」と再結集しても、いずれ、旧民主党と同様に「路線対立で空中分解するのは明らか」(立憲民主幹部)だ。

公文書改ざん事件など不祥事の連発で安倍内閣の支持率は急落し、自民党支持率も下落している。しかし、その下落分は無党派層に移っただけで、野党の支持率は上昇していない。今回新党を目指す民進、希望両党に至っては1%前後のミニ政党並みの支持率で低迷している。このため「いくら悪あがきをしても、国民の信頼が戻るはずはなく、足の引っ張り合いで与党を喜ばせるだけだ」(首相経験者)との自嘲の声ももれてくる。

「帰ってきた酔っ払い」に「悲しくてやりきれない」

昨年夏以降に民進党が引き起こした様々な騒動は、なぜか永田町では歌を絡めて揶揄されるケースが少なくなかった。小池新党騒動の際は、童謡「どんぐりころころ」の歌詞を替えた「小池にはまってさあ大変」が、そして、希望の党から排除された枝野氏が立憲民主を結党した時には、"政界カラオケキング"の枝野氏が「僕には僕の正義があるんだ」と欅坂46のヒット曲「不協和音」を熱唱したことが話題になった。

今回の「帰ってきた民主党」についても、永田町スズメは「帰ってきた酔っ払い」を絡める。半世紀前の人気グループだったザ・フォーク・クルセダーズのデビュー曲で、テープを早回しさせた伴奏に奇想天外な歌詞でミリオンセラーとなったコミックソングだ。

「おらは死んじまっただ〜」で始まる歌詞のサビの部分の替え歌は「官邸よいとこ もいちどおいで カネは多いし 秘書さんもきれいだ…」となる。そこで政権側が「なあおまえ〜 官邸ちゅうとこは そんなにあまいもんやおまへんや もっと真面目にやれ〜」と茶々を入れ、続けて国民が歌うのが同じグループの物悲しいバラード「悲しくてやりきれない」だ。「悲しくて 悲しくて とてもやりきれない この限りない虚しさの 救いはないだろうか」。これではあまりに救いがないのだが。