レノボ・ジャパンが考える教育市場への取り組みを解説!

既報通り、レノボ・ジャパンは3月13日、都内にて「Chromebookおよび教育市場向け戦略発表会」を開催し、Googleが開発するパソコン(PC)向けプラットフォーム「Chrome OS」を搭載した普通教室向けICT端末「Lenovo 300e」(以下、300e)と「Lenovo 500e」(以下、500e)を発表し、同社の教育市場に向けた取り組みや現在の市場動向についてのプレゼンを行いました。

日本の小学校から高等学校までの教育現場におけるIT・ICT教育は変化と革新の早い現代の社会状況に追いついているとは言い難く、教育者側の人材も導入している機材も不足しているのが実状です。本発表会ではそのような「ICT教育後進国」的な厳しい状況にレノボ・ジャパンがどう考え、どう対応していくのかも大きな焦点となりました。

レノボ・ジャパンが考える教育市場の在り方や同社としての取り組みとはどういったものなのでしょうか。発表会のプレゼンとともに解説します。


ICT教育はこれからの日本を支える重要な教育となる


■時代に追いつかない教育現場のICTスキル
欧米を中心に幼稚園から高等学校までの教育期間を「K-12」もしくは「K12」(ケートゥウェルブ)などと呼びますが、同社がIT・ICT教育でターゲットとする教育市場はこのK-12となります。

同社教育市場担当の渡辺守氏は日本におけるK-12の市場動向について「生徒1人あたりの教育用コンピューターは微増し続けており、タブレット型コンピューターの台数に至っては急増している」とグラフを示しながら解説。導入が遅れていると言われながらも端末については着実に増加している点を示しました。

一方で文部科学省が平成26年から平成29年にかけての指針としていた「教育用コンピューター1台あたり3.6人」という目標は未だに達成できておらず、6人に1台程度にとどまっている現状について「なんとかしなければいけない」と危機感を募らせています。


レノボ・ジャパン 教育市場担当 渡辺守氏



教育現場ではタブレットタイプのPCが好んで採用されている



しかし文科省の指針にはまだまだ台数が届かない


教育現場にコンピューターが行き渡らない背景には3つの要因があると渡辺氏は語ります。1つはそもそもの予算が少ないこと、もう1つは教育者側の低いICTスキル、そしてメンテナンスの困難さです。

教員側のICTスキルがないためにどのようなコンピューター端末を導入すればよいのか適切な判断ができず予算を無駄にしてしまい台数を確保できなかったり、必要以上の性能のコンピューターやアプリケーションを導入し使いこなせずに終わったり、コンピューターがトラブルを起こした際にメンテナンスできる教員が少なく導入した機器が故障したまま放置されるケースも少なくないと語ります。

これらの問題点は独立したものではなく、全てが教員側のICTスキルの低さに起因しているため、学校などでは負のループが起こり教職員自身にもコンピューターに対するネガティブな反応が強くなるとも指摘しています。


指導する側がこれでは子どもたちが伸びる可能性も少なくなってしまう


そこでレノボは「コスト削減」と「容易なメンテナンス」の2点に着目し、低コストで運用も簡単なChrome OSを搭載したChromebook 2機種の発表に至ったのです。


YOGAフォームファクターを採用しノートパソコンとしてもタブレットパソコンとしても利用できる


■Chrome OSにより低コスト&イージーオペレーションを実現
Lenovo 300eおよびLenovo 500eに搭載されたChrome OSはクラウドベースのOSであり、ネット環境がなければほとんどのアプリは利用できません。それゆえに校外では利用が困難であり、管理性に優れたセキュアなプラットフォームであると言えます。

また端末価格も300eが48,000円(税抜)より、500eが58,000円(税抜)よりとなっており、一般的なWindows搭載パソコンよりもかなり低コストである点もメリットの1つです。

アプリケーションでは一般的なWindows向けクラウド管理アプリより簡単に扱える教育向けクラウドアプリ「まなびポケット」を採用することでICTスキルの低い教職員でも利用しやすい環境を整えられるとしています。


端末自体の堅牢性にもこだわり、75cmの高さからの落下テストにも合格している



まなびポケットはプラットフォーム接続料が無料。Googleが提供するクラウド管理アプリ「G Suite」よりも簡単に扱える点がメリット


■スマート社会を牽引する世代を育てるために
300eおよび500eは5月以降の発売を予定しており、小学校から高等学校までを対象に導入を推進していくとしています。

渡辺氏が教育現場のICT化の遅れに警鐘を鳴らした上で「それでも子どもたちの未来はスマート社会へと突き進んでいる。ICT活用能力や課題解決能力が重要になってくる」と語るように、社会は学校教育の有無にかかわらず急速にICT化を進めています。

その時、子どもたちにどれだけのICTスキルと応用力が備わっているかで日本の未来が変わってくると言っても過言ではありません。かつて電子立国とまで言われた日本がソフトウェアの時代に遅れを取った理由の1つにも、ICT教育の遅れがあったかもしれません。

プレゼンの場で、1人の父親として子どもの通う学校について「教育現場はICT化が進まず数十年何も変わっていない」と語気を強めて語った渡辺氏の姿には、単なる一企業の販売戦略として以上に「このままでは日本の未来が危ない」という焦りすら感じました。

日本ではなかなか普及が進まないChromebookですが、クラウド管理アプリや端末性能の成熟に伴いようやく安定した運用が見込めるだけの土壌も整いつつあるように思われます。文部科学省も教育現場でのコンピューターのクラウド化を推奨している今、同社の取り組みへの期待感はいやが上にも高まります。

記事執筆:秋吉 健


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