採用担当者に良い印象を残す就活生の特徴とは何か(写真:Fast&Slow / PIXTA)

就職活動の目的地は内定だ。そのために会社説明会に出席し、面接を受ける。しかし、面接を受けただけで、内定は得られない。人事部の採用担当者や面接官に強い印象を与えないと、選考時には思い出してもらえない。


強い印象にも「良い印象」と「悪い印象」がある。HR総研が昨年12月に採用担当者向けに行った「2018年新卒採用に関する調査」では、昨年の就活で「良い意味で印象に残っている学生」について聞いている。その内容を紹介していきたい。説明会や面接は春から初夏にかけて行われるが、調査は12月下旬に実施している。つまり、半年以上経っても強烈に思い出す学生、ということになる。

「元気で明るい」学生を企業は大好き

大人は元気で明るい若者が好きである。面接官も大人なので、可能性にあふれた若者が大好きだ。

「新卒ですので、やはり『元気で明るい』アピールができる学生は、印象に残ります」(従業員数1001人以上、サービス)
「会社説明会や選考の場を、自身も楽しみながら参加している学生。周囲や社員への積極的な関わりの持ち方から、そういった印象を受ける」(301〜1000人、サービス)​​​

​気をつけてもらいたいことがある。元気で明るくふるまおうとしても、裏目に出ることもあるのだ。「大声がうるさく、締まりのない表情で、対応に知性が感じられない」と判断されないように注意してほしい。

「元気で明るい」は「好かれる」という言葉で言い換えることもできる。好かれる学生の特徴は、自信を持っていることだ。

「最終面接で、最後に一言あればと促すと、『これからの○○社は私にお任せください!』と宣言した学生。ハキハキと自信をもって発言することが大事と感じた」(301〜1000人、サービス)
「すべての質問に対し、学生時代を通して、自分が注力してきたスポーツに関連付けて回答した学生がいました」(301〜1000人、サービス)

​「私にお任せください」という学生は少ないから、印象は強くなる。またスポーツに関連付けて回答するのもユニークだし、頭の回転の速さが印象的だろう。

ハキハキだけが評価されるわけではない。話し方がたどたどしくても、話の内容によっては、みずみずしく響き、誠実な印象を与えることもある。

論語には「巧言令色鮮し仁(こうげんれいしょくすくなしじん)」という言葉があり、口先の巧みな言葉や微笑みで人にこびへつらうことを戒めている。現代の就活でもこの言葉は生きている。ストーリーを作ったり誇張したりする学生への評価は低く、実直さ、素朴さ、誠実さをプラスポイントとする面接官は多い。

たどたどしくても誠実であれば好印象

「ぼくとつとした感じで、大学生活では学業(実習)しかしていないので、それ以外を語ることはできません、と言った学生がいました。パフォーマンスもなく、非常に誠実だったのが、印象に残っております」(301〜1000人、メーカー)
「たどたどしくもしっかり自分の意見・考え方を述べた方」(301〜1000人、サービス)
「専門知識はないに等しいが、自分の言葉で伝えようという思いや、熱意が伝わってくる。表情や回答の一言一言が一生懸命で、こちらも話を聞きたくなった」(301〜1000人、情報・通信)

就活の用語に「自分軸」という言葉がある。安易に影響されずに、ブレない軸(価値観)を持って話し、ふるまえることを指している。四文字熟語で言うと、言行一致、首尾一貫などが近い意味を持ち、行動と言葉が一致し、矛盾がないことを指す。

採用面接では志望動機の質問で自分軸が測られている。軸があいまいで入社意欲が見えない学生に内定を出しても、ふらふらと他社に行くかもしれない。仮に採用しても、翌年までもたない可能性がある。

一方、軸がしっかりしている学生は、ふらつくことが少なく、約束を守ることが期待できるので、安心して内定を出せる。入社後には将来の中核人材として成長する可能性が高い。

「入社意欲がストレートに伝わってくるような姿勢で常に選考に臨んでいた学生」(1001人以上、情報・通信)
「自分なりの軸を持っていて、その軸に沿って、判断のための情報収集を行えている学生。質疑応答の際の質問が非常に具体的で『この学生はこういう判断軸で就活をしているのだな』ということが明確だった」(301〜1000人、メーカー)

​面接官はありきたりの言葉で話す学生を見飽きている。ありきたりとは「こう答えたら高く評価してもらえるのではないか」という迎合的な対応だ。たとえば、「質問(者)の意図を考えず、聞かれたことにただ表面的に答えているケース」。こういう学生が評価されることはない。面接官が聞きたいのは、学生自身の考えと言葉である。自分の頭で考え、自分の言葉で話すことは自分軸に通じる。

「常識としてまかり通っていることに、『なぜ?』と疑問を持ち、質問してきた学生」(300人以下、メーカー)
「ある程度決まりきった質問に対する答えではなく、自分の意思が伝わる内容の回答をする学生」(300人以下、情報・通信)
「学生時代に培った(自己成長につながった)経験談で、面接官とのやりとりがスムーズで話も膨らみ、自分の言葉で語っていたこと。当社の企業研究で細かいところまで興味を持って鋭い質問をしてきたこと」(301〜1000人、商社・流通)

顔を見せていないと印象に残らない

会社説明会でのふるまいも重要である。説明会での反応、終了後の態度まで見られている。

「要点でうなずく」「目を合わせて聴く」学生は、話に関心を持っており、志望動機が高いと受け取られるのだ。しっかりと講演者を見ながら聴いてほしい。

「あいさつがしっかりしている。説明会時のうなずき、反応が良い。昨今の学生は反応が薄いので、反応が良いだけで好印象に映る」(300人以下、メーカー)
「説明を聞いているときも、うなずきなどの反応がある」(300人以下、商社・流通)
「会社説明会で熱心に目を合わせて聴いてくれる学生は、それだけでも良い印象が残るので、書類選考で同列なら優先して面接に挙げる。逆に、メモを取り続けてずっと下を向いている学生は、真面目で熱心なのだろうとは思うが、ほとんど顔を見ていないので印象に残らない」(300人以下、商社・流通)

​努力して何事かを達成するエピソードは就活の定番ストーリーだが、かなり盛っていたり不純物が混じっていたりすることが多い。しかし、本物の努力は評価される。

「今どきの苦学生がいた事。新聞奨学生として働きながら、卒業を目指している学生がいました。特段、優秀ではありませんでしたが、この時期の経験としては貴重であると考えます」(1001人以上、商社・流通)

​新聞奨学金とは、新聞配達を行う学生に新聞社が提供する奨学金だ。朝刊を配ってから大学に行き、夕刊を配る時間になると新聞販売店に戻らなければならないので、学生の負担は大きい。こういう苦学生は極めてまれなので印象は強い。

就活では難易度が低い大学は不利な扱いを受けることがある。企業は大学偏差値を熟知しており、学力の指標として使っている。しかし、大学に対する評価があるにしても、努力によって成長した学生に対しては、高評価を与えることが多い。

「偏差値はあまり高くない大学の学生でしたが、人知れず学生時代に努力しつつ、部活動にも力をいれながら、TOEIC820点台を持っており、礼儀礼節もしっかりできていた学生」(301〜1000人、サービス)

​企業は優秀人材の獲得を目指すが、優秀でありさえすれば内定を出すのかと言えば、そうではない。自社人材のバランスを考えて採用している。今回のアンケートでは、7カ国語を話す学生を不採用にした企業があった。

「7カ国語を話す学生。とても独創的で興味深いが、既存社員とやっていけない?と思い、泣く泣く不採用に。その選考基準のあり方がコンサバティブで、われながら反省しました」(300人以下、運輸)

きちんと会って内定辞退のあいさつをする

コンサバティブとは保守的という意味だが、この人事は古臭い価値観にとらわれていることを自省している。こういう体質から脱さないと、企業文化のイノベーションは起きないかもしれない。


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2019年卒就活は早まっており、4月は選考真っ盛りの時期だ。内定出しが始まっているので、企業が就活を終わらせる”オワハラ”を迫られる学生がいる一方で、企業が不合格の連絡をしない”サイレントお祈り”をされる学生もいると思われる。

一方で、内定を辞退する学生もいる。辞退の意思表示をメールで行うことが多いようだが、中にはきちんと企業に連絡し、会ったうえで辞退の理由を説明する学生もいる。こういう態度がとれる学生は、社会人になってからも責任を引き受けることのできる人材なので、採用担当者への印象は強く、辞退されても好感が残る。

「メールなどで簡単に内定を辞退する学生もいる中、アポイントを申し入れ、なぜ別の選択をすることにしたのか、きちんと自分の言葉で説明をしてくれた学生。内定には至らなかったが、今後その学生が社会人となった際、機会があればぜひ一緒に仕事をしたいと思ったし、また、キャリアを積んで当社への転職を希望することがあれば、ぜひ受け入れたいと思いました」(301〜1000人、マスコミ・コンサル)

​内定の辞退にも人間性が表れる。辞退してもいいが、きれいに辞退してもらいたい。いずれにせよ印象が悪くないに越したことはない。