「白熱した議論に、痺れました」(撮影:田所千代美)

小泉進次郎議員を中心に自民党若手議員が結集し、「レールからの解放」というコンセプトを打ち出した小泉小委員会。議論紛糾しながら新しい社会モデルを模索する様子は、『人生100年時代の国家戦略――小泉小委員会の500日』に描かれた。
「制約がある中での白熱した議論に、痺れました。この中に自分がいたら、強力な応援団になっていたと思います」
“ブロガー議員”として話題を巻き起こす東京都議会・音喜多駿議員はそう語る。LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループを経て政界に踏み出し、2期5年目。34歳の若手議員は、小泉小委員会と日本社会をどう見ているのか。

小泉小委員会の議論は、非常に共感するところが多かったですね。もっと踏み込んだほうがいいとは思いましたが、硬直化した自民党という組織の中で、こういった議論が出てくるのはすばらしいことです。意思決定の過程が生々しく描かれてもいて、他党の内部がここまで読めるなんて珍しいことでもありますし、政治家としての視点からも面白く読めました。


同時に、やはり自民党は自民党なんだなと思う部分もありました。たとえば、「こども保険」。子育て支援を保険制度でというのは面白い発想ですし、全否定はしませんが、僕はやはり、高齢者にもご負担いただいて、医療費などをカットして財源を確保するべきだと思います。でも、そのハードルがとても高い。有権者に受け入れられなければ部会を通りませんから、その中でロジックを駆使して、表現に気を使い、根回ししながら落としどころを探るという過程が描かれていました。

年金の受給年齢引き上げなんかも、「議論することを検討する」というような非常に気を使った表現にとどまっていましたけれども、本来はいますぐ議論しなければなりません。僕は野党だからどんどん世論を煽っていくスタイルですが、やはり与党だからご苦労されているのかなと思いました。

オプションの多い自由な社会へ

僕は基本的に自由主義者です。正社員になって、何歳まで働いて年金をもらってという生き方ではなく、仕事を辞めたければ辞める、子どもを産みたいときに産む、復帰したければ復帰する。そんな自由な生き方のできる、オプション(選択肢)の多い社会を目指していくというのが政治家としてのポリシーでもあります。

とりわけ雇用の流動化が必要だと思っています。解雇規制、年功序列、終身雇用という制度が明らかに日本のボトルネックですからね。今回は、そこに大胆な提言がなされていますし、「レールからの解放」というコンセプトには非常に共感します。

――オプションの多い社会では、能力によって、得する人と脱落する人が出てくるといわれますが?

そこは表裏一体だと思います。いまは転職するにしてもその幅が狭いので、必然的にハードルが高いものになっている。だから、優秀な人しか転職できないわけです。でも、全部が自由化されて流動化すれば、全体にチャンスが増えるでしょう。転職して給料を上げていくことができるのは強者だけだったのが、そうではなくなるのです。


音喜多 駿(おときた しゅん)/東京都議。1983年9月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトングループに新卒採用され、化粧品ブランド「ゲラン」で7年間の営業・マーケティング経験を積む。2013年6月、東京都議会議員選挙に初当選。2017年7月から二期目。「都民ファーストの会東京都議団」初代幹事長に就任するも、後に離党を表明し、現在は無所属で活動中(撮影:田所千代美)

自由主義者は、弱肉強食で弱者を切り捨てると誤解されていますが、僕はセーフティネットを重視しています。「ネット」で保護するというより、「トランポリン」のように落ちてもポーンとすぐ戻れるようなイメージですね。そのためには規制のレールではなく、風通し良く、流動化しなければならない。いろんな人に間口が開かれる社会にしたいのです。

なぜそれが進まないのかというと、霞が関の仕組みが旧来型であることが大きな要因の1つだと僕は思っています。年功序列が徹底されたピラミッド型で、キャリアの最後には天下りして、子会社に出向してというレールの世界。官僚だって転職していいし、民間登用をもっと増やしてもいいでしょう。中途採用の人が事務次官になってもいい。キャリアの複線化を霞が関から実行しないと変われません。

東京都も同じです。民間企業には口を出せませんから、官から変わる必要があるでしょう。政治主導で公務員改革を進めるべきだと思います。

ベビーシッターを公的制度に

――待機児童問題にも改革の声を上げておられますね。

僕は、保育園というハコモノだけで対応するには限界があるとずっと言ってきました。保育園は一度作ったら、簡単につぶせません。一人でも通っていれば、簡単に閉じられませんから。加えていろんな規制もあって、ビジネスとして踏み出しづらい。

だから、ベビーシッターのような小回りの利く小規模保育を活用すべきだと思います。たとえば、フランスには「アシスタント・マテリネル」というベビーシッター制度があります。公金が投資されて、親たちはオンデマンドでシッターを利用しているんです。ライフスタイル的に保育園の開所時間だけでは対応できない働き方が増えていますが、これなら個人に合わせて対応できるでしょう。

そもそも、保育施策は「保育に欠ける子への福祉」という定義からスタートし、いまだにそこにとらわれているのが問題です。本来は両親が家で育てるべきだけど、やむをえない事情があって育てられない人のためのもの、という考えがあり、そこに引きずられているんですよ。だから園庭の面積とか厳しいレギュレーションがある。

いまは働きたいから保育園を使うという能動的な意志で利用する時代です。園庭のない保育園を選ぼうが、ベビーシッターを選ぼうが、選択肢があっていいし、税金を投入するのならば、利用者の負担は平準化すべきでしょう。Aさんが救急車を呼んだら来たけど、Bさんには来なかったということはありえませんよね。でも保育園にはそれがある。この不平等が見過ごされてきたことに立ち返る必要があります。

今回、小池都知事がベビーシッターについて、かなり大胆に予算を付けると打ち出しました。これはとてもいいことです。自宅にシッターを招くことにはまだ抵抗感があるのが一般的ですから、行政が文化としてこれを根付かせる手助けはする必要があるでしょう。

世代内の助け合いへ

人生100年時代を考えると、やはり日本は介護の問題と医療費の抑制、そして高齢者の方にどう自立して生きていただくのかというところは避けて通れません。しかし、どうしてもハレーションが起きますし、世代間の対立に見えてしまう。まずは「支えの仕組み」を提示して、メッセージを発信しなければならないと考えています。

これは福祉の切り捨てではありませんし、若者にカネをよこせと言っているのでもない。「世代間の戦い」から「世代内の助け合い」にしましょうよ、ということです。高齢者にも豊かな人と貧しい人がいるわけですから、世代内で分配して、世代内のことは世代内で完結する仕組みを考えつつ、全体をみんなで良い社会にしていきましょう、と。

たとえば、東京都には1000円で電車やバスが乗り放題になる「シルバーパス」があり、年間約170億円ものおカネが使われています。しかし、これはすべての人に必要なものではありません。所得制限はありますが、そもそも高齢者は「所得」がなくても「資産」を持っているケースが多く、本当に貧しくてバスに乗れないという人は、そう多くはないのです。それなのに、9割以上が安価な支給の対象者になっている。

必要のない方はシルバーパスを受け取らずに、ほかの福祉に充てさせてくださいと言うべきでしょう。医療費も同じです。資産があるのに、所得がないから自己負担1割で済むという方が多い。相続税も同じ。こういうところをそろそろ真剣に考えたいですね。

ところが、街で演説していても、若者は立ち止まってくれません。高齢の方は興味を持ってくださいますが、やはり医療、年金、経済の話題。保育や子育て支援にはまったく反応がない。それは票にも現れます。若い政治家が、自分は若者の声を届けるんだと青雲の志で政治の世界に入っても、そういう現実に直面して、だんだん高齢者偏重の考え方になってしまう。僕自身はそうならないように意識していますが、そうなってもおかしくはないと感じてしまいますね。

――若者はなぜ選挙に行かないのでしょう?

特に20代だと、まだ危機感もなく、行政の必要性も感じないんでしょうね。家庭を持ってはじめて行政との接点ができたりもします。僕自身、子どもができてますます痛感していますが、保育園をどうしようとか考えたとき、やっと行政の必要性がわかるわけです。若いうちは、役所に行く機会なんてほとんどありませんからね。

先進国では若者が政治に興味を持ちづらいというのは万国共通ですし、根強くアピールし続けていくしかないだろうと思っています。選挙に行かないことでどれだけ損しているかを、若者ほど知らない。もっとクリアなメッセージを伝えていかなければなりません。その点でも、小泉進次郎さんのような影響力のある人が発信されるのは心強いですね。

都議会はまだブラックボックスだ

そういう意味では、都知事選での小池旋風は、人々が政治に関心を持つよいきっかけではありました。以前は、審議会の7割が非公開で、マスコミも都民もどこでいつ何を議論しているのか知らないという状態でしたが、小池都知事によって行政機関の情報公開は進みましたからね。

ただ、実際には「都議会のドン」のような存在がいまもいて、何も変わっていません。これは、私が小池都知事から離れた最たる理由ですが、「しがらみからの脱却」と言っていても、自分に権力がついたら、またブラックボックス化してしまうわけです。

たとえば、警察消防委員会というところには、なぜか都議会の重鎮が大勢入っていて、ここでは基本的に質問してはいけないという不文律があります。それじゃ委員会の意味がないと思いますけど、先輩議員は「警察消防員会は質問しちゃいけないんだ!」と若手に語ったりする。そして周りは「われわれは専門知識がないんだから質問するのはおかしいですよね」なんて合いの手を打つ。まったくおかしな話です。

5年間議員をやってみて、政治は思ったよりも古い世界だと実感してもいます。都民ファーストの会があれだけ大勝したのに、結局、都議会は何も変わらない。惰性と保存圧力が強くて、変化に逆らいがち。それをどうしていくかは大きなテーマですね。そもそも、何期も政治家をやっている人は変化を嫌がります。当選してきた仕組みを崩したくないわけですから。

変えるって本当に大変です。たとえば、都議会は昔からの慣習で13時から開始なのですが、僕は午前10時スタートにしたほうがいいと思ったんです。10時間ぐらい議論することもありますし、残業する職員さんの負担も深刻だから、時代に合わせて早めたほうがいいだろうと。ところが、それをしかるべき立場のベテラン議員に申し上げたところ、「それは散々議論してきたんだ、その結果が13時なんだ」。

遠くの地区の人が朝早くなるのは不公平。かといって2日間に分けると、2日目の人が質問を変えたり、大きな事件で政局が変わったりして不公平が起きるからダメ。最終的には、「変えたいなら、きみが全員に話をまとめてきてくれ」と。すると今度は「角が立つからそういうことは全会一致で」という慣習に阻まれる……。当たり前のことをしたいだけなのに、モチベーションが保てません。これだけ世論が働き方改革を叫んでいるときに、こんなことひとつ変えようとしないのかと。

都議会全体としては若手が増えましたし、前期よりはいいかもしれませんが、1年生議員には、自分が違和感を覚えても、小池都知事や先輩議員がイエスと言ったことには従ってしまう人が多い。若い人はまだ力もなく、自由に行動できませんからね。そして、自由に行動できるようになったときには、すっかりしがらみに染まっていて、当初の志を忘れているという。しかし、今期のうちに変えられるところは変えたいと思っています。

――東京都は「100歳大学」について議論していますね。

首都大学東京で高齢者を受け入れるというリカレント教育です。何歳になっても学び直せるんだというメッセージを打ち出すことは良いことだと思います。ただ、優先順位は考えなければなりませんね。教育の原資は限られていますから、70代80代の人を対象にするのは正しいことなのかどうか。ただ老後の楽しみを税金で面倒見るということであれば意味がないですからね。

もちろん、そういった仕組みによって「何歳からでも学び直せる」という副次的な効果が期待されているんだと思いますし、パッケージとして機能すれば費用対効果も出るでしょう。ただ個人的には、高齢者より、若い人や外国人留学生を受け入れるほうが優先順位としては先ではないかなと思いますが。

50代で総理大臣を目指す

僕は自分の100年人生のなかで、50代で総理大臣になるつもりでいます。そして、雇用の流動化を手掛けたいですね。働き方、オプションを増やす。

子育て支援もそことリンクしていますし、女性が活躍できないのも、終身雇用一本であることが大きな要因の1つです。妊娠して仕事を辞めなければならないのに、出産して戻れるかというと戻れない。もっと柔軟にキャリアの「出入り」が自由になれば、女性の活躍支援や、子育て支援の問題がほとんど解決できます。労働法制を変える。ぜひそれをやりたいですね。