「IBMを買っておけば安心」――ソフトウェア業界におけるこの古い諺は、マーケティング業界において「IBM」を「Huluの広告枠」に置き換えることができそうだ。ただし、Huluは長年、広告主に対してインベントリーのデータ開示を制限してきた。だが、その状況が変わりつつある。同社は昨年、会員基盤の拡大および広告付きコンテンツの視聴時間の増加を受け、広告インベントリーのデータを以前よりも公表してくれるようになったと、バイヤーらは語る。

「それでわかったのだが、彼らはテレビコンテンツの趨勢とは異なる、素晴らしい実績を上げている」と語るのは、UMのエグゼクティブ・バイスプレジデントで最高投資責任者のジョン・スティメル氏だ。同氏は先頃、Hulu側と会談を持ったという。「定期会員数が4割も増したそうだ。米大手通信会社スプリント(Sprint)および音楽ストリーミングサービス事業者Spotify(スポティファイ)との提携により、彼らは多大な成長を遂げている。さらに視聴時間も5割増えたらしい」。

この数字はHuluの広報も公式発表しており、視聴時間の対前年比50%増の要因を広告付き配信サービスの視聴者増加としている。こうした視聴者数の伸びが結果的に、広告主がチェックできる広告インベントリーの増加につながっているという。

「Huluはいつも売り切れる」



「昨年前半は、インベントリーに少々不満を抱かされていたが、いまは違う。配給量の継続および増加、消費者基盤の拡大、そしてインベントリーのさらなる開示を進めるにあたり、Huluは賢い戦略を取ったと思う」と、マインドシェア・ノースアメリカ(Mindshare North America)の米デジタル投資部門長クリスティン・ピーターソン氏は語る。

テレビに割く予算をオンラインに回すことを検討中で、なおかつブランドセーフなテレビおよびテレビ的な番組を探している広告主にとって、ストリーミング動画配信事業者Huluは非常に魅力的だ。そうした予算をテレビネットワークが実施するさまざまなOTTサービスや、YouTubeやFacebookが供する非テレビ的動画配信に回すことも、広告主の選択肢ではある。だが「OTTが断片的視聴をその特徴とするなか、Huluはかなりの成功を収めている。Huluはプレミアムなコンテンツをプレミアムなテレビ的環境のなかで楽しめる、いわば欲しいものがすべて揃う優良店だからだ」と、デジタルエージェンシー、デジタス(Digitas)のシニアバイスプレジデント兼メディアディレクター、クリスティン・シェーヴ氏は語る。「あそこに行けば、欲しいものが確実に手に入る。そう思わせてくれるプラットフォームは少ない」。

Huluの発表によれば、2017年における同社のユニーク総視聴者数は5400万人、そのうち有料定期会員が1700万人。視聴者数ではYouTubeとFacebookに水をあけられているが、そのぶん広告主がHuluに出せる広告料には制限が設けられている。「通常、Huluの広告枠はどの四半期でも売り切れる。第4四半期はとくに早い」とシェーブは言う。

「信頼の置けるプロバイダー」



ただ、広告インベントリーに対する需要がこれほど高い一方、オリジナル番組購入費とライブTVサービスの運営費がかさむため、Huluは依然赤字を続けている。 2017年は、同社の保有企業である21世紀フォックス(21st Century Fox)、コムキャスト(Comcast)、ディズニー(Disney)、タイムワーナー(Time Warner)から10億ドル(約1050億円)の資金投入があったにもかかわらず、9億2000万ドル(約980億円)の赤字を計上した。

だが、ほかならぬそうしたオリジナル番組のおかげで、Huluは「業界で名をなし、信頼の置けるプロバイダーとなった」と、スティメル氏は言う。ヒットドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語(The Handmaid’s Tale)』 の受賞も然りだ。この受賞はHuluの広告枠を購入したブランドに「正しい選択をしたと思わせる」と同時に、自社のターゲット市場はニッチすぎてHuluには合わないとして二の足を踏んでいる広告主には、同社の配信サービスへの支出を促す効果があると、ピーターソン氏は語る。

このように広告主の関心と投資額は高まる一方ではあるが――スティメル氏いわく、UMによるHuluへの支出は長年、2桁の割合で着実に増加している一方、テレビにかける費用は横ばいまたは低下している――Huluには依然、損益を補うための方策が必要とされている。今年のアップフロントおよび5月2日のニューフロントにおけるプレゼンを控えたいまは、それを打ち出す絶好の機会と言える。ただしそれには、広告提供に関する問題克服に向けた努力の継続が条件となる。自社のライブTVサービス内で広告を販売し、問題を少しずつ解決していくのもひとつの手であり、前出の広報によれば、これはまだ実行に移していないようだ。また、番組および視聴者の獲得に向けたさらなる資金投入も必要だろう。

いずれにせよ、ピーターソン氏が言うとおり、「Huluの広告のインクリメンタルスケールとインベントリーに関するさらなるデータ開示を誰もが強く求めている」。

Tim Peterson(原文 / 訳:SI Japan)