1%の利益の魔法

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なぜ、あなたの会社は利益を生み出せないのか? それは、今までの会計の公式が間違っていたから。これまでの会計原則である「売上-経費=利益」に従っていてはダメ。もっと儲かる会社にしたいのなら、「売上-利益=経費」へと頭を切り替えろ―ー。世の経営者たちにそう訴えかけるのが『PROFIT FIRST お金を増やす技術』(マイク・ミカロウィッツ著、近藤 学訳、ダイヤモンド社)です。著者のマイク・ミカロウィッツは米国人の起業家で、彼自身が破産寸前にまで追い込まれたことがきっかけで、この「プロフィットファースト(利益が第一)」は生まれました。一言でいえば「借金を減らし、キャッシュリッチな会社に変わるための資金管理法」です。本連載では、多くの経営者が経営改善に成功している実証済のシステムである「プロフィットファースト」の基本を、7回にわたって紹介します。

利益を増やすための会計の新たな公式

 ここまでで、心理的な要因がどのように働くのかを理解していただけたと思います。

 次にすることは、あなたの日常にシステムを導入すること。まず手始めに新しいシンプルなプロフィットファーストの公式からスタートしましょう。以下がそれです。

 売上ー利益=経費

 これからあなたが学ぶのは、決して目新しいものではありません。おそらく、程度の差こそあれ、既にそのことに気付きはしているが、実践してこなかったはずのことです。

 前回ご紹介した減量のための食事に関する4つの原理は、次のようにしてプロフィットファーストに取り入れることができます。

1.小さな皿を使う─これは、あなたのメインの売上入金口座にお金が入ってきたとき、他の口座にお金を移すことを意味しています。定期的に、売上入金口座からお金を事前に決められた割合に基づいて、別の口座に移動するのです。

 この別の口座は複数あり、それぞれ異なる目的を持っています。1つは利益のため、1つはオーナーの給料のため、1つは税金用、1つは事業経費を賄うためのもの。全体としては、ひとまずこの売上入金用・利益用・オーナーの給料用・税金用・事業経費用の5つの口座を持っていればいいですが、慣れてきたらさらに複数の口座を用いることもあるでしょう。

2.順番を意識する─複数の口座に対し、常に、必ず、決められた割合でお金を振り分けます。決して、絶対に、請求書の支払いを最初に行ってはダメです。売上入金口座から利益・オーナーの給料・税金・事業経費の口座に、最初に金を移動するのです。
 それから、事業経費を管理する口座に入っているお金だけを使い、必要な支出に対する支払いを行います。もしもこの事業経費用口座に十分なお金がなかったとしても、他の口座からお金を持ってくることはいけません。それは、あなたのビジネスがその経費の支払いに耐えられなくなっており、その経費を消滅させるべきだということを意味しているのです。不必要な経費を排除することで、ビジネスはあなたの想像以上に健康になるでしょう。

3.誘惑を断ち切る─利益口座や、その他ついつい手をつけたくなるような口座については、手の届かないところに移動します。そのお金を使うことをできるだけ困難に、何らかの痛みを伴うようにするのです。それにより、ちょっと借りること(拝借すること)を避けるようになります。正当な理由がなければ、その金にアクセスできないようなメカニズムを用いるのです。

4.リズムを作る─お金の振り分けと支払勘定は月に2回行います。特に、10日と25日に行うのが望ましいです。お金があるときにだけ支払うということはしてはいけません。収入の振り分けを定期的に行い、請求書の支払いを月に2回行うことで、現金は貯まり、お金がどこに出て行くのかを正確に把握できるようになります。勘と経験を頼りにするお金の管理ではく、これはコントロールされた継続的なキャッシュフロー管理なのです。

 自分の会社にこの「小さい皿」の考え方を取り入れ始めるまで、私は起業家精神についてのコンサルタントや講演を行っていました。

 また、プロフィットファーストのシステムを、当時の投資先であった皮革加工の企業に適用してみました。対症療法だった飲酒や通販番組を観るのをやめ、私の憂鬱な気持ちも上向いてきました。その頃、私は最初の著書である『トイレットペーパーの起業家』の仕上げに入っており、そこでプロフィットファーストについて小さく言及しました。その本が出版されてから、私はそのシステムの改善を続け、さらに掘り下げ、実践し、すべてが変わったのです。

 他の起業家にも導入を勧めました。すべてが上手くいきました。私にも、誰にでも、読者の人々にも、このシステムは有効だったのです。

 起業家精神の情熱と、いつかではなく今すぐに利益を上げるのだという決意に突き動かされて、私はプロフィットファーストを完璧なシステムにすることに着手したのです。

ハードルを下げる

 その著書『SWITCH』(邦訳未完)の中で、チップ・ハースとダン・ハースは、“ハードルを下げる”ことに関する概念を説明しています。我々起業家は、皆、ハードルを上げるように刷り込まれています。大物にならねば。もっと大胆に生きねば。もっとリスクをとらねばと。

 しかし、前進するために、それが常に最善の方法とは限らないということに私は気付いていました。

 もし利益を上げたいなら、最初のハードルは低くするべきなのです。

 あなたに、小さな、シンプルな、そして簡単な行動を起こしてもらいたいのです。それは永続的に利益を生み出す道へあなたを導くことでしょう。

 まず、今すぐに利益を管理する口座を作ってください。それがプロフィットファーストの最初のステップとなります。今すぐ開設してください。電話でもネットでもいいので、新しい普通預金口座を作るのです。とにかく始めること。躊躇してはいけません。

 新たな普通預金口座を開設したら、それを「利益口座」とでも名付けておきましょう。そしてこの瞬間から、普段使っている預金口座に入ってきたお金は、常にその1%をこの利益口座に入れるようにします。今まで行っていた事業のプロセスや資金管理を行うのは、その後です。

 そして、利益口座に入れた金は、決して触らないようにします。

 あなたが通常使っている口座に、1000ドルの振り込みがあったとしましょう。そうしたらすぐに、10ドルを利益口座に送金するのです。1000ドルで事業を運営できるなら、990ドルでもできるに決まっています。入ったお金が2万ドルなら、200ドルを利益口座に移します。同じく1万9800ドルあれば運営はできるはずです。

 この1%を忘れてはいけません。これが低いハードルということです。

1%の利益があなたのマインドを変える

 しかし、この1%は魔法を起こします。このシステムが上手くいくと自分で確信を得られるようになるはずです。もちろん、一夜にして大金持ちになれるわけではありません。

 しかし、裕福になれる自信を得られるでしょう。予め自分の利益を確保しておくことがいかに効果的か、きっと感じられるはずです。すべきことは、この小さなステップをしばらくの間続けること。自分の利益が貯まっていくのを見ることなのです。

 1%はとても少ないですが、それでも利益であることには変わりありません。

 ここでの目的は、あなたのマインドを変えることです。

 この、自分の利益を最初に確保するという慣れないプロセスが、実際のところ恐れるようなものではないということを理解することです。

 そして、プロフィットファーストの鼓動を感じることができれば、大きな成功への第一歩を踏み出したことになります。あなたはきっと虜になることでしょう。面白くなりますよ。

[著者]
マイク・ミカロウィッツ(Mike Michalowicz)
米国人のアントレプレナー。2社の1億円超企業を創業し売却。また、プロフィットファーストプロフェッショナルズの共同創業者として、同メソッドを伝える会計士、コーチを組織化する。元ウォールストリートジャーナルのコラムニストで講演家としても著名。TEDxなどでビジネスや起業家精神についてのスピーチを行っている。
他の著書に、『THE PUMPUKIN PLAN』(日本未完)、『トイレットペーパーの起業家』等がある。
[訳者]
近藤 学(こんどう・まなぶ)
日本人初のプロフィットファーストプロフェッショナル。
京都府で税理士事務所を開業。ネットベンチャー企業のCFOとして創業に参加。
中小企業の家庭に育ち両親の資金繰りの苦労を目の当たりにしてきた経験をもとに、自らキャッシュフロー改善のソフトウエアを開発し、現在約150名の税理士等に会員制サービス(こがねむしクラブ)を通して提供している。
訳書に『あなたの中の起業家を呼び起こせ』(マイケル・E・ガーバー著、エレファントパブリッシング)。著書に『一番楽しい!会計の本』(ダイヤモンド社)、『「儲からない」と嘆く前に読む会計の本』(大和書房)などがある。