レシビ動画サイトを手がけるレンダーメディア(Render Media)の共同創業者、アイタン・エルバス氏は、1年前まで絶頂の最中にあった。マスコミからは「ロサンゼルスのテック業界でもっとも重要な人物」としてもてはやされ、インク(Inc.)からは世界でもっとも急成長している企業の1社としてレンダーが紹介された。

エルバス氏は当時、Vice MediaやBuzzFeedをライバルとして挙げ、テクノロジーやゲームの分野に進出したいと語っていた。また、スタッフに無料でランチを提供。在宅勤務も、ロサンゼルスのフェアファックス地区にある見晴らしのいいオフィスで働くことも認めていた。

しかし、そのレンダーが閉鎖することになった。スタートアップとしてレシピサイトの「クッキングパンダ(Cooking Panda)」やニュースサイトの「オポージングビューズ(Opposing Views)」を手がけていたが、Facebookが最近行ったアルゴリズム変更の新たな犠牲者となったようだ。

FBフィード改変の余波か?



創立7年のレンダーが運営する「クッキングパンダ」は、手だけを俯瞰撮影する動画の人気に貢献した。とはいえ、レンダーのサイトがもっとも高い人気を得ていたわけではない。2月には、「クッキングパンダ」の動画視聴回数は2500万回だったが、BuzzFeedが手がける「テイスティ(Tasty)」の12億回や、「テイストメイド(Tastemade)」の6億900万回と比べれば、ごくわずかに過ぎない。それでも、Facebookのフォロワー数が1年で70万人から530万人に増えるなど、エンゲージメント率ではライバル企業を上回っていたと、メディア調査会社のチューブラー・ラボ(Tubular Labs)は報告している。

ソーシャルレシピ動画の分野は、2017年秋の時点ですでに過当競争の兆しが出はじめていた。さらに2018年1月、Facebookがニュースフィードでブランドやパブリッシャーのコンテンツの優先順位を下げ、ユーザーの投稿やシェアが多いコンテンツを優遇する計画を発表。ユーザーコンテンツを優先するというこの改変によって、ブランデッドコンテンツをユーザーに届けるために必要なコストが増えるかもしれないという懸念が、パブリッシャーのあいだで生まれていた。

それから間もなく、ソーシャルパブリッシャーのリトル・シングス(LittleThings)が閉鎖。その一因は、Facebookのニュースフィード改変だったという。また、ほかのパブリッシャーでもトラフィックが大きく減少しはじめている。

レシピ動画の過当競争



レンダーの情報筋によれば、同社の閉鎖はFacebookだけが原因ではないようだ。ただし、詳細は明らかにしていない。エルバス氏や同じく共同創業者のビック・ベロノゴフ氏も、閉鎖についてコメントを控えている。ただし、エルバス氏は最近の取材で、ブランデッドコンテンツでオーガニックに得られていたのと同じリーチを獲得するには、支払うコストを「かつてないほど」とはいわないまでも、「相当な金額」に引き上げざるをえなくなったと述べていた。また、バイラルヒットを生み出すことでソーシャルメディアのオーディエンスを獲得してきたほかのメディア企業と同じく、レンダーはFacebookへの依存状態から脱するのに苦労していた。Facebookのオーディエンスが、ほかのソーシャルメディアプラットフォームより圧倒的に多かったのだ。

レンダーは、2016年に多角化に乗り出した。俯瞰撮影のレシピ動画に加えて、アニメーションやライフスタイルの動画に参入したほか、インスタグラム、Vine、Snapchatでコンテンツの配信を開始した。また、サブスクリプション製品を2018年に立ち上げる計画も練っていた。しかし、1月の時点でも、「クッキングパンダ」のビューとフォロワーはその大半をFacebookが占めていた。2月になると、「クッキングパンダ」の動画視聴回数は12月の半分近い2500万回にまで落ち込み、「オポージングビューズ」に至っては、さらに大きく視聴回数を落としていたことが、チューブラー・ラボの調査で明らかになっている。

どちらのサイトも、まだFacebookにコンテンツを掲載している。だが、レンダーは業務を縮小しており、サイトの運営をいつまで続けるのかはわからない。レンダーのウェブサイトに書かれている電話番号は、すでにつながらなくなっている。2016年には35名のスタッフがいたが、いまや必要最低限の6名が残るのみだ。エルバス氏は、2016年に事業の多角化について語ったとき、「いまから1年後にチェックしたら、我々のページでも業界全体でも、俯瞰料理動画は減っているはずだ」と述べていた。その見立ては正しかったようだ。もっとも、彼が望んでいた形ではなかったかもしれないが。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)