日銀が2日発表した3月の「全国企業短期経済観測調査」(短観)は、市場関係者に衝撃を与えた。

 市場が重要視する大企業製造業の業況判断指数(DI)はプラス24で、前回調査(昨年12月)より2ポイント悪化。実に2年(8期)ぶりの「悪化」だったのだ。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」を引いた値だ。

「ショックでした。平たくいえば、景気が悪くなっていると感じている大企業が多いということです。企業の今期(19年3月期)業績見通しも厳しくなるでしょう。日本経済は三重苦に陥っているといえます」(市場関係者)

 ひとつはトランプ・ショックだ。トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争によって、世界景気が後退するとの見方だ。3月9日に米国が発表した鉄鋼・アルミニウムへの輸入制限では日本も対象国となった。

「韓国やEUは除外されたのに、日本は対象国として残された。経済界は、日本の政治力のなさをあらためて感じたでしょう。トランプ大統領は日本をターゲットにした貿易戦争を近いうちに仕掛けてくる。そう感じている経営者は大勢います」(株式評論家の倉多慎之助氏)

 2つ目は公文書改ざんに絡む森友問題。安倍リスクだ。

「この問題で、安倍内閣の支持率が急落しました。企業は政権の不安定さを感じ、景気の先行き不安を抱き始めたのでしょう」(ちばぎん証券アナリストの安藤富士男氏)

 3つ目は人材不足の深刻さだ。中小企業(全産業)の雇用人員判断DI(「過剰」から「不足」を引く)はマイナス37で、1991年11月以来の「悪化」となった。

■アベノミクスは完全に吹き飛ぶ

 東京商工リサーチが3月下旬に行った「18年度の賃上げ見通し」調査では中小企業の85・6%が賃上げに踏み切ると回答。理由は「従業員の引き留め」が74・7%だった。

「中小企業にとって賃上げはコストアップで、経営の圧迫要因です。人件費だけが上昇し、売り上げが上がらないと経営悪化を招きかねません」(第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏)

 実はもうひとつ、懸念材料がある。円高だ。今回の日銀短観では18年度の想定為替レートは1ドル=109円66銭と、17年度とほぼ横ばいだった。現状は1ドル=106円台前半にある。

「今後は、円安に振れると考える企業が多いということですが、現在の相場とは3〜4円のズレがあります。円高が継続した場合、巨額の為替差損が発生し、企業業績を直撃します」(前出の市場関係者)

「トランプ」「森友」「人材不足」の三重苦に、「円高」が加わったら、アベノミクスなど完全に吹き飛ぶ。