エージェンシー、ワンダーマン(Wunderman)は昨年7月にAI部門をローンチした。彼らが「会話技術(conversational technology)」と呼ぶテクノロジーを駆使して、クライアントが抱える顧客の保持をサポートすることが目的となっている。

そして現在、彼らはマイクロソフトにそのAIソリューションを売ろうとしている。マイクロソフトが彼らのAIソリューションをシェアすることで、新しいクライアントをワンダーマンも獲得できるようになるだろうと期待している。ワンダーマンは70のマーケットに200のオフィスを抱えているが、AI部門はシアトルのオフィスにあるという。150人のスタッフがこの部門に携わっているとのことだ。そのうちの100人がデータサイエンティストで、50人がコンサルタントとなっている。

大手広告代理店グループWPPが抱えるワンダーマン。彼らによると、すでにこのAI部門に興味を持っているクライアントがいるという。それは通信会社から電化製品メーカーまで多岐に渡ると、ワンダーマン北米CEOのセス・ソロモンズ氏は言う。

部門責任者のプロフィール



彼らのフォーカスは、AIを利用して、テキストベースか音声ベースのチャットボット、もしくはバーチャルアシスタントをクライアントのために制作することにある。ワンダーマンAI部門グローバル責任者であり、ワンダーマン・シアトルのプレジデントであるロビー・ミニコーラ氏の説明によると、これらが使われるのはマイクロソフト、Amazonウェブサービス、Google、そしてIBM、という4つのメジャーなプラットフォーム上だ。音声テクノロジー分野は成長しており、この成長がワンダーマンのAIに対する関心と強く結びついていると、ミニコーラ氏は言う。

3月には、デジタルエージェンシーのレイン(Rain)、テック企業のボイスボット(Voicebot)、プルストリング(PullString)がひとつの調査結果を発表した。それによると、米国人口の20%がスマートスピーカーを所有しているという。

ワンダーマンとマイクロソフトのパートナーシップは、ミニコーラ氏の経歴から生まれた。彼女はマイクロソフトのグローバルビジネス開発部門のディレクターであった。そして2016年11月にワンダーマンのシアトルオフィスのプレジデントとして就任したのだ。

ミニコーラ氏とマイクロソフトとの関係はすぐに功を奏した。そして、彼女はワンダーマンによるはじめてのAIソリューションをコルタナ(Cortana)向けに構築するため、パートナーシップをマイクロソフトと結んだのだ。それから6カ月経って、ワンダーマンのAIサービスはローンチされた。ミニコーラ氏はAI部門のグローバル責任者として就任する。

マイクロソフトとのつながり



今日でもマイクロソフトとのパートナーシップは強力かつメリットが大きいようだ。このパートナーシップのおかげで、ワンダーマンは早い段階でマイクロソフトの内側での取り組みについて知ることができるという。マイクロソフトが何らかのβテストをローンチする前に、彼らが何を作っているのかを知ることができるのだ。また、彼らのAIプラットフォームに置いて、コンセプトをテストすることもできる。

「この分野における変化は非常に速く、とてもパワフルだ。もしもプラットフォーム構築の初期の段階からエンジニアと協働していなければ、いま作っているものはすでに時代遅れになってしまう」と、ミニコーラ氏は語る。

マーケターたちは常に人々の注目を集めるような新しいアイデアを追いかけているが、いまはAIがそれになっている。そして、エージェンシーたちもクライアントがAIを使いこなすためのサービスを、独自にローンチしはじめている。

ミニコーラ氏はワンダーマンが、「クライアントにマシーンラーニングやAIによるソリューションを提供するためのテクノロジーやリソースに何百万ドルと投資している」と語る。また、人工知能はワンダーマンのクライアントが「未来に備える」助けをするというミッションにおいて重要な要素であるという。予測分析とAIに対するワンダーマンの投資は、エージェンシーのなかでも最大規模だと、彼女は主張した。

独自技術を開発する理由



マイクロソフトとそれほど強いつながりがありながらも、ワンダーマンの興味はプラットフォーム側の独自のAPIだけを使ってチャットボットを作ることには限られていない。実際、コルタナやAmazon Alexa(アレクサ)、そしてGoogle Assistant(アシスタント)といったプラットフォーム、それぞれに依拠したスキルを開発することは、彼らがクライエントのために達成しようとしていることと反すると、ミニコーラ氏は言う。

「音声ビジネスをサードパーティーによるプラットフォーム上でのみ構築してしまうことは、すべての知識がそのプラットフォームによって使われ所有されることを意味している。ブランドのウェブサイトを持たずにウェブ上の存在はFacebook上のみ、という状況に近い。これは良いアイディアではない」と、彼女は言った。

この理由から、ワンダーマン独自の会話テクノロジーを構築しようとしているわけだ。それを応用する形で、クライアントたちはAlexaやコルタナ、そしてGoogle Assistantといったサードパーティーによるアシスタントに参入していく。

当然、独自に技術を開発するよりも、すでにあるプラットフォームのために会話型のチャットボットを作る方が安くつく。一定のキャンペーン期間のためだけに作られるチャットボットはカスタマーサービスに対応するためのチャットボットよりもコストが低い。この例だと両方とも15万ドル(約1600万円)以下となっていると、ミニコーラ氏は言う。チャットボット上で構築できる独自のバーチャルアシスタントを作るには、それよりもはるかに巨額のお金がかかる。何百万ドル(何億円)と言う単位だと、ミニコーラ氏は説明した。

クライアントたちの事情



ミニコーラ氏のAI部門は、発足から9カ月しか経っていないが、すでに11のクライアントに取り組んできている。そのほとんどが過去にワンダーマンと協働したことがある企業だ。現在のところ、すべてのプロジェクトがまだプロダクション段階だ。これらのクライアントを明かすことはできないと、ミニコーラ氏は言う。ワンダーマン全体では、クライアントにはマイクロソフトやTモバイル(T-Mobile)といった企業が含まれている。

それでも、AIは非常に新しい分野で、多くのクライアントはまだどうやってそれを使うかを探っている途中だと、ソロモンズ氏は言う。「2018年に入って、我々はより実用的なアプローチをとっている。新しくて面白い方法でAIを使おうと試みるのではなく、大小の実際に存在している問題を解決しようとする、というアプローチだ」。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)