「マルチ・キャンパスシステム構想」で、地域大学との連携・統合を模索する名古屋大学 (写真:ワンセブン / PIXTA)

国立大学の再編は本当に進むのか――。3月22日、国立大学である名古屋大学と岐阜大学が、法人の運営統合に向けた検討をしていることが報道で明らかになった。

名古屋大学は「周辺の国立大学法人に、運営の統合について協議の場を開きたいとの提案を進めている」といい、名古屋大学が主導する形で、統合の可能性やメリット、デメリットなどを検討する場を設けていくという。

その中で岐阜大学が協議参加を検討していることが判明。今回の報道につながった。今後、具体的な話し合いに向けて進展していくものと見られるが、中部圏にある他大学も協議のテーブルにつく可能性は十分にある。

「指定国立大学」が再編推進の決め手に

名古屋大学がこうした提案を進める大きな要因は、3月20日に文部科学省から指定を受けた「指定国立大学」にある。

指定国立大学は、教育研究水準の向上を図り、世界最高水準の教育研究活動ができる国立大学法人が指定される制度だ。指定されれば、出資事業の拡大、自己収入の運用範囲の拡大、不動産活用化などの規制緩和や、運営費交付金の安定確保、間接経費の拡充などが受けられる。

2017年3月末までに7の国立大学が申請、うち東北大学、東京大学、京都大学が昨年6月末付で、指定国立大学法人に「指定」された。しかし、残る東京工業大学や一橋大学、名古屋大学、大阪大学は、「指定候補」とされ、新たな提案が出され条件が整った場合に指定することになっていた。

その後、東京工業大学と名古屋大学が3月20日付で追加指定されたが、名古屋大学の指定の決め手になったのが、大学間の壁を取り払ってシェアド・ガバナンス(共同運営)を目指す、「マルチ・キャンパスシステム構想」だった。

「参加大学が自律性を尊重しながら、拡大によるスケールメリットを享受し、強みに応じた拠点形成や教育研究機能強化を実現して、世界屈指の国立大学機構を形成していく」(名古屋大学)としている。

リクルート進学総研の小林浩所長は、「単なる統合だと縮小のイメージがあるが、指定国立大学という世界で戦える大学を目指す中、その準備として、中部の大学を束ねた機構構想を描いている。カリフォルニア大学が、バークレー校やサンディエゴ校など複数の学校で構成しているが、それに近いイメージを持っているのではないか」と語る。

1つの法人が複数大学を運営する

その構想の中で、運営統合の手法として有力視されているのが、「アンブレラ方式」だ。1つの国立大学法人が複数大学を運営する方式で、株式会社でいえば、持ち株会社(法人)が複数の事業会社(大学)を持つようなイメージになる。


文科省が2012年に発表した「大学改革実行プラン」の1ページ。新たな大学運営の枠組みをすでに提示していた

統合のスキームは地域間や専門大学など同じ機能を持った大学同士での統合が想定されている。私立大学では1つの学校法人が複数の大学を持つケースは多い。

今後の議論次第だが、アンブレラ方式で進むなら、名古屋大学と岐阜大学の名称はそのままで、運営する法人のみを統合することになる。ただ、国立大学の法制度では、1法人1大学が基本のため、制度改正が必要になる。

実は国立大学のアンブレラ方式は、数年前から計画として挙がっている。6年前の2012年に、文科省が「大学改革実行プラン」を打ち出したが、その中ですでに記載されていた。

大学改革実行プランでは、グローバル人材育成や、多面的で総合的な評価を軸にした入試制度の転換、各国立大学の役割を見直すミッション再定義、学長のリーダーシップを強化するガバナンス改革などが盛り込まれている。今、進められているさまざまな大学改革は、そこで掲げられているメニューがほとんどで、その多くが実現されてきた。

アンブレラ方式も国立大学改革の目玉の1つとして、カリキュラム互換など海外大学との連携強化や、国公私立大学の共同による教育研究組織の設置などとともに記載されていたが、国立大学の関係者から、「予算削減を狙った合理化策に過ぎない」「自主性が失われる」といった懸念の声が少なくなかった。そうした批判を受けてか、翌2013年に発表された「国立大学改革プラン」には、アンブレラ方式など再編を促す文言は消えた。

これで再編の議論は立ち消えになったかに見えた。しかし、教育予算のあり方や、少子化による大学進学者減少対策、半数近くが定員割れになっている私立大学の経営強化を目的に、再び俎上に載せられたのだ。

制度改正についての議論も進む。中央教育審議会の将来構想部会では、昨年の5月から、今後の大学(高等教育機関)の将来構想を描く議論が行われている。教育課程の改善や学修評価の厳格化、設置基準の抜本的見直しなど、議論内容は多岐にわたるが、その中に「国公私の設置者の枠を超えた連携・統合の可能性」についても検討対象になっている。

大学統合の具体案が中教審で提示

3月27日の会合では、その具体案として、アンブレラ方式をはじめ、学部単位の事業譲渡や、国公私立大学が参加して組織する大学等連携推進法人の設立などが提示され、議論が進んでいる。


3月の中教審・将来構想部会で提案された大学等連携推進法人のスキームのイメージ図

「今年の秋頃の答申に向けて、大学の連携・統合等に関する、専門的な議論を進めていただきたい」(林芳正文部科学大臣)。答申が出れば、法改正に向けた準備が進んでいこう。

国立大学の統合再編は、これが初めてではない。2004年の国立大学の法人化に合わせて、2002年から2003年にかけて、各都道府県の総合国立大学と医科系単科大学を中心に統合が進んだ歴史を持つ。

また、昨年8月に議論が終了した、国立教員養成大学の改革に関する有識者会議の報告書でも「総合大学と教員養成単科大学の統合の検討」「教員養成単科大学同士の統合の検討」などを明記しており、2021年度までに結論をまとめるべきとの意見がなされている。

「法人再編の構想は、名古屋・岐阜大学だけでなく、ほかでも発生する可能性はある」(小林所長)。いよいよ本格的な大学再編の時代が始まったといえるだろう。