森友文書改ざん問題 参院予算委で佐川氏証人喚問(AP/アフロ)

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 森友文書書き換え問題をめぐり3月27日に行われた、佐川宣寿前財務省理財局長の証人喚問。「刑事訴追を受けるおそれがございますので、その点につきましては答弁を差し控えさせていただきたい」と、刑事訴追の可能性を理由に、佐川氏は何度も証言拒否を行った。証人喚問での最大の課題は、森友学園と国の契約に関する決裁文書の改ざんの真相を明らかにし、国有地の格安払い下げの真相を明らかにすることであった。

 佐川氏は、改ざんはなぜ行われたか、誰が行ったかなどについては一言も語らず、改ざんは理財局内で行われたものであり、当時理財局長であった自分が責任を負うとの姿勢を明らかにした。そのような責任の取り方からすれば、麻生太郎財務相と安倍晋三首相の責任も問われる。

 そして佐川氏は、昨年の国会での自らの発言に関連する質問について証言したが、そのなかで重大な虚偽発言を行っていた。議院証言法「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律」第6条第1項には、「この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、3月以上10年以下の懲役に処する」となっている。今回の証人喚問では、次の4点の特徴を列挙することができる。その内、(3)と(4)が虚偽発言部分である。

(1)改ざん問題の真相についてはすべて証言拒否し、理財局で行われたと証言した。

 佐川氏は、「国会に大きな混乱を招いた。当時の局長として責任は私にある」と答え、改ざんは理財局のなかで行われ、首相官邸からの働きかけはなく、財務省全体として行ったものではないと断言した。「訴追のおそれがある」と自分の身を守るために不利な発言は避けると言いながら、あえて財務大臣や首相を守るという姿勢が浮き彫りになった。丸川珠代参議院議員による「(首相や昭恵夫人の)関与はありませんでしたね」という質問には、証人喚問を通して事実を解明しようという姿勢すら見られず、佐川氏の答弁を含め、よいしょ質疑の悪しき事例を残した。

(2)交渉記録等の廃棄には、「丁寧さを欠いていた」と謝罪

 改ざんのきっかけになったとされる佐川氏の国会答弁や、交渉記録等をすべて廃棄したに問題については、「丁寧さを欠いた」と謝罪した。「確認したところ、交渉記録はございませんでした」との国会答弁(昨年2月24日)は、「確認したというのは、取扱い規則」という悪ふざけのような証言であった。改ざん前の決裁文書(以下、決裁原本)には、交渉の経緯が書かれ、しかも決裁文書は30年保全が原則であるため、すべて廃棄したという国会での答弁は、虚偽答弁ではないかという宮本岳志衆議院議員の指摘に対して、「申し訳ない」と謝罪した。

(3)事前の価格交渉については、契約上の予定価格を示していないと証言

「路線価や公示価格は、オープンになっており、現場ではそのような話はするが、不動産鑑定にかけた価格を示したことはない」と証言した。しかし、これは改ざん前の決裁原本の14文書の「12.国有財産の鑑定評価委託業務について」に書かれている記述からいうと、明らかに偽証となる。

 この文書では「学園代理人弁護士から、現状を踏まえた評価による価格提示があるならば、本地を買い受けて問題解決を図りたいとの提案がなされた」と経過が示され、続いて「弁護士から提案のあった売り払いによる処理を進めることが、問題解決の現実的な選択肢と考えられるため、今回売り払いに係る鑑定評価を行うものである」との記載がある。ここでは、予定価格を教えるどころか、その鑑定価格自体を「現状を踏まえた価格」として提案してもらうというやり取りをしている。佐川氏の発言には、明らかに偽証の疑いがあるといえよう。

(4)格安払い下げと売却価格の妥当性について

「すべて不動産鑑定にかけた価格で契約している」「価格は今でも適正だった」と証言したが、8億円を値引く価格は、国交省大阪航空局が算定したものであり、不動産鑑定士が算定したものではない。また、不動産鑑定士がその算定結果を承認しているわけでもない。したがって、「不動産鑑定士にかけた価格で契約している」という点は、どのような視点からいっても事実とは異なっている。この点も、森友問題における核心中の核心であり、佐川氏は重大な虚偽発言を行っていた疑いがあるといえる。

 以上が今回の証人喚問の主な4つの特徴だが、佐川氏は昨年来、国会で「資料はすべて廃棄した」「価格交渉はしたことはない」「価格は適正であった」などと官僚らしからぬ裏付けのない断定的な発言を行い、安倍内閣への防波堤となり、事実解明を求める国民の批判の標的となってきた。そして今回改ざん問題で処分を受け、国税庁長官を辞任した。トカゲの尻尾として切り捨てられたわけである。そして改ざん問題へは証言拒否を続け、一方で事を理財局内だけの問題にし、その責任者として自分が一切の罪を背負い、壁の向こうに持って行くという姿勢を示した。

 その一方で、佐川氏は上記(3)(4)のように虚偽発言を繰り返している。もちろん佐川氏の立場から言って、事情を知らず発言したという単なるミスではすまされない。証言拒否罪に加え、偽証罪で追及を受けることは必至である。

 そこで以下では、(4)の「すべて不動産鑑定にかけた価格で契約している」という点が、いかに事実無根であるかを示したい。

●不動産鑑定士が鑑定したのは、更地価格だけ

 佐川氏の発言を待つまでもなく、更地価格9億5600万円の国有地が、なぜ1億3400万円で払い下げられたのかが、森友問題の核心中の核心である。証人喚問の翌日の読売新聞社説でも、「改ざんの核心に迫れなかった」との見出しで、「(佐川氏の証人喚問が、)改ざんの指示の有無や背景など核心部分の究明につながらなかった。事実の解明と再発防止に向け、与野党には建設的な対応が求められる」とし、「学園に約8億円を値引きして国有地を売却した経緯こそ、解明すべき重要な論点である」としている。
 
【売買契約の経過(財務省の説明)】

 9億5600万円の鑑定価格の土地が、1億3400万円で売買契約された経過は、会計監査院が検査結果を報告した昨年11月22日の夜の野党へのレクチャーで財務省が提出した資料では、下記図表1のように説明されている。

図表1:財務省が説明した契約金額の計算根拠

契約金額(1億3400万円)
=鑑定価格による更地価格(9億5600万円)
―大阪航空局が算定したごみ撤去費用(約8億円)

 つまり、契約金額は、更地(註1)価格から、新たに見つかったとされる埋設ごみ(約2万トン)の撤去費を差し引いて算出したと説明されていた。この説明では、更地価格は不動産鑑定士に依頼し、「鑑定価格による更地価格(9億5600万円)」として示されているが、今回問題になった埋設ごみの撤去費用については、「大阪航空局が算定した撤去費用(約8億円)」として表現している。つまりごみの撤去費用は、不動産鑑定士が鑑定した価格ではない。

 財務省のこれらの時系列の説明(写真2)と、そこで表記されている資料からいえる点を整理すると次のようになる。

・16年4月14日:大阪航空局から近畿財務局へ、地下埋設物の撤去・処分費用の見積もり(約8億19百万円)を報告している。この文書は、大阪航空局空港部補償課長から近畿財務局管財部統括国有財産管理官宛に出された「不動産鑑定評価について(依頼)」(阪空補17号)である。そこに添付された「地下埋設物撤去数量及び処理費用算出根拠について」は、「地表から3.8mの場所でゴミの地層の存在が確認できる」「建設基礎部分の地盤改良(柱状改良)工事において、地中から廃材、ビニール片等の生活ごみを含む埋設物が発生している」と報告し、「総括表」では、工事費を消費税込みで8億1974万1947円(約8億2000万円)と報告している(写真3)。

・同年4月22日:本地の鑑定評価を、近畿財務局は山本不動産鑑定士事務所に依頼している。

・同年5月31日:山本不動産鑑定事務所は、「不動産鑑定評価書」を近畿財務局に提出している。報告先は近畿財務局支出負担行為担当官、近畿財務局総務部次長殿であり、その報告書によれば、鑑定評価額は9億5600万円として示されている。1億3400万円ではない点が注意点である。

 鑑定にあたっての条件では、「地下埋設物として、廃材、ビニール片等の生活ごみが確認されているが、本件評価における価格形成要因から除外する」と示している。つまり地下埋設物がどのように混在しているか、またその撤去費についてはどのように算出するかは、「除外する」、つまり鑑定対象ではないと謳っている。

・同年6月20日:近畿財務局において、学校法人森友学園と売買契約。図表1に示した計算で、契約金額(1億3400万円)は、「鑑定評価による更地価格(9億5600万円)」から「大阪航空局が算定した撤去費用(約8億円)」を引くかたちで算出した。

 したがって、今回の証人喚問で佐川氏による「不動産鑑定士にかけた価格で契約している」という証言は、間違いである。不動産鑑定士に依頼し、鑑定評価してもらっているのは、「更地価格」だけである。森友問題で最大の焦点になっている埋設ごみの撤去料算定は、大阪航空局が算定した約8億円をそのまま使っているのである。

 そして佐川氏は、8億円値引いた価格算定を、不動産鑑定士に依頼したものなので適正な価格であると今回の証言でも主張している。これは単なる事実誤認ではなく、事実を偽るという意志を持った発言、虚偽発言を行っているといえる。 

●8億円の算定部分を、なぜ不動産鑑定しなかったのか?

 これまで国は、不動産鑑定士にかけず大阪航空局が埋設ごみの算定を行ったのは「時間がなく急いでいたため」と説明してきた。しかし、その説明はまったく事実と異なる説明だった。不動産鑑定の依頼はしていたが、更地価格以外は体よく断られていたのである。

 しかも、実は近畿財務局は今から7年以上前に、この土地の鑑定評価を行っていた。会計検査院の検査報告書によって、近畿財務局はこの土地の鑑定評価を行っていたことが明らかになり、昨年末、森ゆうこ参議院議員がこの鑑定評価書(以下「鑑定評価書(12年)」)を国会に提出させている。したがって、それほど鑑定を急ぐのなら、すでにある鑑定書を使って、埋設ごみの撤去料の算定をすればよかったのである。

 ところが、そうはしなかった。その理由は何か。この「鑑定評価書(12年)」で示された埋設ごみの量と撤去料金が、今回の値下げ額と大きく乖離していたのである。この「鑑定評価書(12年)」は、12年7月12日に森井総合鑑定株式会社が近畿財務局の依頼を受けて作成したものである。その「鑑定評価書(12年)」では更地価格を9億300万円と示し、その上、埋設ごみの有無や土壌汚染についても調査し、それらを撤去したり除染する費用計算も行っていた(註2)。

 埋設ごみの撤去には約8437万円かかることが示され、土壌汚染の対策工事費は約4398万円かかることが示されている。合計約1億2835万円、約1億3000万円である。

表1:鑑定評価書(12年)に示された埋設ごみ等の撤去料

・埋設ごみの撤去料:約8437万円
・土壌汚染の対策工事費:約4398万円
・小計:約1億2835万円

 これに対して大阪航空局が算定した埋設ごみの撤去料は約8億2000万円である。「鑑定評価書(12年)」の埋設ごみの撤去価格(約8400万円)と10倍もの開きがある。しかも「鑑定評価書(12年)」では、1億3000万円も使えば埋設ごみの撤去だけでなく、重金属汚染の除染も終了させることができる。

 表2の経過で見るように、森友学園は賃貸借を受けていた15年、土壌改良工事(埋設ごみの撤去工事とヒ素などの重金属汚染の除染工事)を株式会社中道組に請負委託し、7月から11月に工事を済ませている。その土壌改良工事代金として、国から1億3176万円受け取っている。つまり鑑定評価書に示された内容からすれば、この土壌改良工事が終了した段階で、埋設ごみの撤去は終わっているのである。

 15年11月に土壌改良工事を済ませた後、16年に入って校舎建設を請負委託した藤原工業株式会社が建設に入っている。そしてその年の3月11日に、校舎建設用に基礎杭を打っていると深部から新たなごみが見つかったとされた。「鑑定評価書(12年)」の内容からすると、もう出てくるごみはないはずであったが、2万トンもの巨大なごみが出てきたというのである。これ自体、荒唐無稽な想定であり、格安払い下げ自体が目的だったことは明らかである。

 実際これらの用地の開発で問題となるのは、地表から約3mまでの盛り土層に混在している埋設ごみの存在である。3m以深に、つまり3mよりも深い深部になると地層的には堆積層になり、数百年から数万年かけて積層された地層になる。不動産鑑定士は、この豊中市の周辺地域では3m以深は堆積層になり、もし出てくるごみがあれば貝殻位でしかなく、ビニール片などのごみが出てくるはずはないと知っていたと考えられる。したがって普段は、国から委託を受ける不動産鑑定士であっても、国の意に沿った鑑定は出来なかったのであろう。

 よって、佐川氏の「すべて不動産鑑定にかけた価格で契約している」という証言は、あり得ない話であり、この証言は格安払い下げが適正であったという方向に国民・市民を誘導し、安倍首相や昭恵夫人の関与もないとする虚偽の証言であるといえる。

 振り返ってみると佐川氏は、格安払い下げについては、担当官庁として適切な価格で払い下げただけであり、したがって政治家の関与はないという姿勢であった。その最大の根拠が「すべて不動産鑑定にかけた価格で契約している」というものであった。今回の証人喚問での証言拒否罪と偽証罪での告発は、もはや不可避である。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

表2:経過概略

(1)2013年、9月   森友学園、用地取得要望。
(2)2015年1月    森友学園が、大阪府私立学校審議会で、学校法人としての資格について、条件付き「認可適当」となる。
(3)同年2月       国有財産近畿地方審議会で売り払い前提の定期借地を了承。
(4)同年5月29日    資金がない森友学園への貸付契約(売り払い前提の特例処理)
(5)同年7月〜11月   土壌改良(埋設ごみ&除染)工事。3mまでの深さの埋設ごみ撤去と5か所の重金属汚染の除染。代金1億3176万円。
(6)2016年3月11日 3m以深に新たな埋設ごみが見つかる。
(7)同年 4月14日   大阪航空局から近畿財務局に「不動産鑑定評価について(依頼)」
(8)同年 4月22日   近畿財務局山本不動産鑑定士事務所に依頼
(9)同年5月31日    山本不動産鑑定士事務所「不動産鑑定評価書」を近畿財務局に提出
(10)同年6月20日   近畿財務局にて売買契約締結
・契約金額(1億3400万円)
=鑑定価格による更地価格(9億5600万円)
―大阪航空局が算定した撤去費用(約8億円)

【注釈】
註1:建物や構築物などの定着物のないまっさらな宅地、購入後ただちに建設可能な土地のこと

註2:その鑑定の結果、隣接する大阪音楽大学が用地の払い下げを要望した時に、要望金額が約7億円だったため、国は断っている。