新しい環境に子どもが悩んでいるときは……(写真:Tomwang112 / iStock)

新年度が始まりました。子どもにとっては新しい学年であり、進学した子にとっては新しい学校ということになります。新しい学校、新しい教室、新しい先生、新しいクラスメート、新しい生活の始まりです。いろいろなものがかわると、子どもたちは緊張しっぱなしになり、その分ストレスが溜まります。


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学校から家に帰ってくるとその疲れが出ます。帰宅してすぐ眠ってしまったり、不機嫌そうにしていたり、いつもよりダラダラしたりすることもあると思います。大人でも職場がかわればかなり疲れます。経験の少ない子どもたちはなおさらです。ですから、家では十分リラックスできるようにしてあげてください。家でリラックスできて初めて学校でがんばるエネルギーがわいてきます。

共感的に聞いてあげることが大切

子どもが何か話したときは共感的に聞いてあげることが大切です。でも、親の多くはこれが苦手です。たとえば、子どもが「今度の先生、細かくて厳しそうだからイヤ」と言ったとき、「先生の悪口を言っちゃダメでしょ」などと正論で跳ね返してしまいがちです。これだと、子どもは何も言えなくなり、ストレスを溜め込むことになります。こういうときは、「そうなんだ。細かくて厳しそうなんだ……」「あんまり厳しいと大変だよね」などと共感的に聞いてあげましょう。すると、子どもは話しやすくなりますし、たくさん愚痴を聞いてもらえばストレスが軽くなります。

たとえ子どもが話してくれなくても、子どもの様子をよく見ていることは絶対に必要です。子どもの悩みで一番多いのは、なんといっても子ども同士の人間関係、つまり友だちのことです。続いて、先生のこと、給食のこと、勉強のことなどになります。もし、気になることがあったら、早めに先生に相談しましょう。「先生も忙しいから……」と遠慮してしまいがちですが、問題が大きくなってからではお互い余計に大変になります。気になることがあれば、連絡してみてください。

もし子どもが「友だちができない。遊ぶ子がいない」ということで悩んでいるなら、先生に友だちを斡旋してもらうのもいいでしょう。先生が馬の合いそうな子を探して、「○○さん、□□さんも遊びに入れてあげて」と声をかけてくれれば、遊びの輪の中に入れる可能性が高まります。これで一時しのいでいるうちに、だんだん本当に馬の合う子が見つることもあります。この方法は学年が下がれば下がるほど有効ですが、中学や高校でも試してみる価値はあります。

友だちのことで悩む場合は「ロールプレイ」で練習

友だちのことで悩む場合、友だちとの会話を「ロールプレイ」で練習するといいでしょう。ロールは役割、プレイは演技という意味であり、ロールプレイとは役割演技という意味になります。一種のシミュレーションです。家庭でやるときは、「友だちごっこ」と呼べばいいでしょう。

たとえば、次のように、お父さんがAさん、お母さんがBさん、子どもは本人の役になって、特定の場面を設定して演技します。その演技の中で、必要な言葉を言えるように練習するのです。

●「入れて」と言えるようにするロールプレイ

場面設定として、「子どもが児童クラブで遊ぶ人がいなかったけど、Aさんたちがトランプをやっているのを見つけた場面」とします。この場合、次のように演技しながら、「わたしも入れて」「入っていい?」「楽しそうだね。もう1人入れる?」などの言葉が言えるように練習します。

Aさん「わ〜い、また取った」
Bさん「今度はわたしが取った」
本人「トランプ、楽しそうだね」
Aさん「うん、楽しいよ」
本人「わたしも入れて」
Bさん「うん、いいよ」
本人「ありがとう」

●断られたときのロールプレイ

次のように、断られる場合を予想した対応も練習しておくと応用が利くようになります。「じゃあ、見てていい?」などの言葉で返せるか、それともそのままいじけて立ち去るか、その違いは大きいです。

Aさん「わ〜い、また取った」
Bさん「今度はわたしが取った」
本人「トランプ、楽しそうだね」
Aさん「うん、楽しいよ」
本人「わたしも入れて」
Bさん「もう始まっちゃったからムリ」
本人「じゃあ、見てていい?」
Bさん「うん、いいよ」
本人「ありがとう」

●自分から友だちを誘えるようにするロールプレイ

次のように、自分から友だちを誘う練習もしておきましょう。自分から誘えるかどうかは、実に大きな違いです。

本人「Aさん、一緒に遊ぼう」
Aさん「うん、いいよ」
本人「やったあ。Aさんと遊びたかったんだ。何して遊ぶ?」

本人「Aさん、一緒にトイレに行ってくれない?」
Aさん「うん、いいよ」
本人「ありがとう。1人だと、なんか心配なんだ」

本人「Aさん、一緒に遊ぼう」
Aさん「ごめん。今から○○するからムリ」
本人「じゃあ、今度遊んでね」

知らない相手に話しかける場合は

●知らない相手に話しかけられるようにするロールプレイ

進学、進級、クラス替え、転校などの場合、知らない相手に話しかける言葉も練習しておくといいでしょう。たとえば、次のような言葉です。

「ぼくの名前は○○。きみの名前を教えてくれる?」
(まず自己紹介し、次に相手の名前を聞く)
「わたし理科が苦手なんだ。理科って難しいよね」
(自己開示によって親近感を持ってもらう)
「その靴かっこいいね。ぼくもそういうの欲しいな」
(相手をほめることで仲よくなる)
「音楽室がどこかよくわからないんで、一緒に行ってくれる?」
(頼み事をすることで距離を縮める)

●必要なことを先生に伝えられるようにするロールプレイ

中には、必要なことを先生に伝えられなくて困る子もいます。その場合は次のような言葉を練習します。

「トイレに行っていいですか?」「お腹が痛いのでトイレに行ってきます」「○○を忘れてしまいました」「○○を忘れたので貸してください」「体育館に筆箱を置いてきてしまったので、取りに行ってきていいですか?」「お腹がいっぱいなので残します」「お腹が痛いので残します」「気持ちが悪いので残します」

以上、ロールプレイについて紹介しました。つい最近、私の家の近くの飲食店で、新入社員たちが「いらっしゃいませ」「お待たせしました」「ありがとうございました」と声に出していう練習をしていました。これも一種のロールプレイです。大人でも練習が必要なのですから、子どもにおいてはなおさらです。

ぜひ、自分の意思を言葉で伝えられるように、実際の子どものニーズに合わせて、変化をつけながら練習してみてください。親が「『わたしも入れて』って、自分から言うんだよ」と口で言い聞かせるだけだとなかなか言えるようになりません。ロールプレイの中で実際にその言葉を口に出して言う練習をしておけば、本番で言いやすくなります。