「習慣化」の罠 不感症から抜け出す身体感覚の取り戻し方

写真拡大

「セルフマネジメント」を軸に、まず自分自身をマネジメントすることで大きく可能性を広げられること、意味ある人生を送り楽しくハッピーになれること、そして組織のマネジメントや社会に良い影響をあたえられるようなプログラムを提供したいと思い始めてから2年。試行錯誤の中でプログラムを始めて半年。その間に多くの人に会い、話を聞いてきた。

大企業に勤める典型的なビジネスパーソン、外資系企業で常に数字に追われるマネージャー、スタートアップで夢を持って働く起業家、地方に戻り働く意味を見出した若手リーダー、社会課題を解決しようと強い思いを持って行動するソーシャルイノベーター、仕事をいったんお休みしている人、家庭を第一に人生設計している人、すべてにやる気を持てず悶々としている人…。

日本で働く日本人、日本で働く外国人、海外で働く日本人、海外で働く外国人。年齢層だと20代前半から60代の後半まで幅広く、大学生や新卒社会人から中堅社員、マネージャ(課長層・部長層)やトップマネジメントまで、あらゆる層の人たちに話を聞いてきた。だいたい1000人くらいの方々と話したと思う。

その中でわかってきたのは、前回の記事で書いたように「自分が何者なのか?」「自分がやりたいこと、大切にしていることは何なのか?」がわからない(考えたことがない)だけでなく、そもそも自分の「感情」に気づいていなかったり、頭だけで考えることが常態化することで感情を無意識に無視していたり、自分が今まさに感じている身体感覚についてわかっていないことが多い、ということだ。

これまで生きてきた中で脳に刻まれ蓄積された「習慣化された行動様式」、つまり自動的・無意識的な判断からくる行動をそのまま繰り返し、自動的かつ反復的にいつもと同じコミュニケーションスタイルで人と接し、パターン化された思考や今までの成功体験から意思決定を行う。それはそれでうまくいくこともあるし、脳のリソースを使わないから省エネ状態でいられる。

一方で、習慣化された行動ばかりとっていると、人間の大事な部分である「感覚」や「感情」に対して不感症状態に陥る。すると、なぜかストレスや疲れだけがたまり悶々としはじめ、仕事にやりがいも感じない。だけどやることはドンドン溜まっていくから、とりあえず頑張っている人がとても多い。

そんな「不感症+とにかく頑張る症候群」の中で、多くの人は自分の外にあるものだけに意識を向け続けている。「本当に心が休まった状態」を忘れ、「どうすればリラックスできるかわからない」状態に陥る。そしてさらに不感症がひどくなる。実際、「本当にリラックスするという感覚がわからない」「ずっと突っ走ってきたので、どうしたら休息できるのかがわからない」という声を多く聞く。

そういう私も、海外に住み留学する3年前まで同じだった。24時間365日、週末も祝日も休まずに仕事をするのが普通だと思っていたし、それが社会人として良いことだと思っていた。仕事をやり続け、プレッシャーを自分に与え続けていればパフォーマンスが上がり、結果も良くなり、かつ幸せになるものだと思っていた。

しかし、常に頭をフル回転させ、身体的・精神的な疲れを無視して(ないしは意識できずに)働き続けた結果、自分が本当にしたいことがわからなくなり、視野が狭くなり、上記のようにモチベーションが続かない中で仕事だけが増えるという状態が続くようになった。

そして、いつもダルさや重さを感じ、仕事も人生も心から楽しいと思えなくなっていた。だからこそ、人生をリセットすることに決め、海外に移って留学をする選択をした。

私はそこで「セルフマネジメント」に出会い、自分自身を内側からマネジメントする方法学んだことで、多くの良い変化があった。外に向きすぎている意識を自分の内側に向け、「思考=頭で考えること」だけでなく感情や身体感覚に意識を向けることの大切さを知るとともに、実は自分の体が本当に多くの情報を捉えていて、実は体の内側から多くのシグナルを自分自身に伝えてくれていることも体感できるようになった。

決してスピリチュアルなものではないし、訓練は必要だが難しいことをするわけではない。そして、日常の中で常に使えるとても実践的なものだということも体感できた。身体感覚や感情に気づくことが、自分の身体も心も良い状態に保つための一つの大事な要素だということが分かったのだ。

例えば私は、普段無意識にやっている習慣や環境を少しだけ変えることで、身体感覚や感情を取り戻していった。つまり、「意図的にいつもと少し違うことをやってみる」だけだ。違う道順で大学院や仕事に行ってみたり、公園で15分休んでみたり、レストランや売店のおばちゃんと雑談をしてみたり、今まで目に入らなかったものを探してみてみたり。

その中で、「いつもと違う体験(目や体に入るもの)は何か」「その違いの中でどんなワクワクや他の感情があったか(恐れや不安などでも良い)」「その時にどんな身体感覚を持ったか」など、何でも良いから、そこでの身体感覚・感情を覚えておく。そこからどんな気づきがあったか、普段との違いから何が得られたかを内省することで、少しずつ感覚や感情を取り戻していった。

これは全く難しいことではないし、短い時間でできる。コツは、意図的にいつもと違うことをやることであり、意識や注意をいつもと違うところにおいて、そこから自分の内側にどんな違う体験があるのかを見るだけだ。訓練が必要なので、数回やるだけでマスターできるわけではないし、うまくできないことも多々あるが、やり続ける中で感覚的・感情的が少しずつ戻ってくる。

ちなみに、ドラッカースクールのセルフマネジメントのクラスでは、少なくともこのエクササイズを1ヶ月は続ける。そして毎日、自分自身の変化のログを取り、毎週レポートにまとめ、自分にどんな変化が起きたのか、頭で考えるのではなく、自分のどんな感覚や感情に気づいたのかをアウトプットしていく。

これが私にとって、「感覚」や「感情」を取り戻し、自分の内側の声を聞く=不感症を改善していくための基礎練習になった。

多くの人に話を聞いて本当に感じたが、「自分の外ばかりに意識が向いていて、自分の内側=身体感覚や感情が抜け落ちている」人が非常に多い。しかし、自分自身の感覚や感情のことをちゃんとわかっていない人が、他人の感情や感覚がわかるはずもない。

リーダーシップやマネジメントの基本は他者理解だが、その基本にも立てない。そういった意味でも、自分の内側を見る練習と、不感症から抜け出すことは本当に大事なことだと思う。