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■降水確率はどのように計算して出すか?

謎々を1つ。私たちが毎日見聞きしている最も身近な確率って、一体何でしょうか?

その答えは「降水確率」。ほとんどの人が朝起きて、テレビや新聞の天気予報で「今日の降水確率は」と確認する。カバンのなかに傘を入れていくかいかないか、それを判断するために。

でも、降水確率とはどのような確率なのか、その意味を知っている人って、一体どれくらいいるのだろう。確率だから、何か2つの比であるはず。では、何と何の比なのか? きちんと答えられる人は、少ないのではないか。気象予報士が解説をしていることも、ほとんど聞いたことがない。

気圧などの観測に基づいて予想天気図が作成される。過去にその天気図に示されたのと同じ大気の状態になったとき、実際に何回雨が降ったのかを計算したものが降水確率なのだ。つまり「降水確率=雨の降った回数÷過去に同じ大気の状態になった回数」である。

ここで注意したいのは、「一定の時間内に1mm以上の雨または雪が降ること」という「降水」の定義。「降水確率100%」というと土砂降りを想像するかもしれないが、実際は霧雨ということもありうるのだ。

また、降水確率は0〜100%まで、1%の位は四捨五入で10%刻みで発表される。ということは「降水確率0%」といっても、実際は「0から5%未満」であり、絶対に降らないということを意味しているわけではない。でも、万が一降られたとしても、「仕方がないか」で済むはずだ。

問題は「降水確率40%」といったときである。傘を持っていくべきかどうか、大いに悩む。実はそのとき、「傘を持っていくとカバンがかさばるし、重い」というコスト(負担)と、「雨に濡れたら不快だし、服を乾かすのが面倒」というコストを、無意識のうちに頭のなかで天秤に掛けているのである。だったら、確率を使って各コストを計算すればよい。

■「傘を持たない」のが合理的な選択

たとえばAさんの場合、傘を持っていくことと雨に濡れることのコストについて、後者は前者の2倍ほどと思っているので、おのおのを「10」と「20」とした。もちろん、傘を持たなければ、コストは「0」である。一方、降水確率40%ということは、晴れる確率は「100−40=60%」。それらを場面別に組み合わせると、図のようなマトリクスになる。

すると傘を持っていき、晴れた場合のコストは「0.6×10=6」で、雨が降った場合は「0.4×10=4」になる。つまり傘を持っていくコストのトータルは「6+4=10」なのだ。同じように傘を持たないときのトータルコストを計算すると「8」になる。結果「10>8」で、コストの小さい「傘を持たない」のが合理的な選択といえる。

このように、合理的・戦略的な意思決定を数学的なモデルを用いて研究するのを「ゲーム理論」という。もちろん、傘を持つコストや雨に濡れるコストは人によって変わってくる。自分のコストがいかほどかを考え、マトリクスに当てはめて計算し直して、傘を持っていくべきかどうかを判断していただきたい。

(サイエンスナビゲーター 桜井 進 構成=伊藤博之)