インサイダー(Insider、かつてのBUSINESS INSIDER)のパブリッシャーで最高収益責任者(CRO)であるピート・スパンデ氏は、典型的な広告販売会議についてこう話す。「今日の会議のなかで、出席した編集者たちは、この先数四半期の計画について話していた。コンテンツスタジオの人間は、顧客のためにどうやってコンテンツを作るかを話し合っていた。部屋にはエージェンシーの人間もいたし、クライアントの代表やコンサルタントもいた。ここでの関係は三次元チェスのようだ」。

いまのメディア販売はそういうものだ。かつて広告販売は一匹狼でできる仕事だったが、現在はチームプレイが必要になっている。売られる製品が複雑化し、メディア組織の複数の人間が関わる職務なのだ。セールス担当者の呼び名も「クライアントパートナー」や「エンゲージメントディレクター」に変化している。自分は単に何かを売っているだけの人間だとは、誰も考えたくはないからだ。

これを理解してもらうには時間がかかる。セールス担当者のなかには依然として「私に最新情報を報告して」というものがいると、エージェンシーであるノーブル・ピープル(Noble People)のプレジデントで元パブリッシャーのトム・モリッシー氏はいう(「原案を出したのが君なら、私に報告する必要はない」)。セールスポイントとしてスケールを拠り所とし、広告というパイが成長しなくなった世界でスケール以外の部分で競い合わなければならないと気づきはじめた、デジタルのみを扱うメディア企業にとって、この移行がもっとも難しいとモリッシー氏は語る。

求められるミックス人材



パブリッシャーは、業界別のセールスチームを見事に編成しているが、最大の課題は実行だと語るのは、マインドシェア・ノースアメリカ(Mindshare North America)で西海岸ならびにアトランタ地区のデジタル部門投資リーダーを務めるエマ・ウィトコフスキー氏だ。キャンペーンは、販売後はアフターサービスチームの手に委ねられるが、インプレッションやサービス開始の期限といった基本をアフターサービスチームでは守ることができない、とウィトコフスキー氏は話す。

広告フォーマットからアプリやイベントのようなプラットフォームまで、販売するものの種類や数が増えるなかで、セールス担当者は、自分たちへの需要の増加も感じている。彼らは、1日の終わりにキャンペーンが結果を出すことを保証できるデータ戦略家でもなければならない。

管理職スカウト会社コーラー・サーチ・パートナーズ(Koller Search Partners)のマネージングパートナー、エディ・コーラー氏は、「プログラマティックでプライベートな市場がある。ブランデッドコンテンツやライブイベント、カスタムソリューションもある」という。コーラー氏は、年間10〜15人のCROを紹介していると試算する。「製品の販売担当者が全員、独自のツールキットを持っていると考えればいい。人々の時間は以前にもまして貴重になっている。50ページの資料だけで勝負する時代は終わった。マーケターやコンサルタントのように考えることができ、注文も受けられる、両方をミックスしたような人物だ」。

縮小する人材プール



メディア販売会社はどこも、実在するかしないかわからない完璧なセールス担当者を探し求めている。そうした人材を見つけることはますます難しくなっている。彼らは、従来型のメディア企業より多くの名声を持つ企業から引っ張りだこだからだ。一方、回っているお金よりはるかに多い数のパブリッシャーがある。

ニューヨーク・メディア(New York Media)のCROでパブリッシャーのアビ・ジマック氏はこう語る。「適当な人材を探すことは難しい。同じ人物がクールなスタートアップと一緒に仕事をしたがっているので、人材プールはどんどん縮小している」。

あるパブリッシャーたちにとって、ネイティブ広告は最大の広告収入源であるとともに、大きな試練にもなっている。パブリッシャーの声を書くことができ、クライアントに販売もできる、ジャーナリズムと広告をハイブリッドにした背景を持つ人間が必要とされているが、それができる人は限られている。

マーケティングがわかり、出版物のオーディエンスを興奮させるクリエイティブな発想を販売できる人間を見つけるのは大変だが、多くの場合、ジャーナリストは売り方を知らないと、ワシントン・ポスト(Washington Post)の「WPブランドスタジオ(WP BrandStudio)」を率いるアニー・グラナスティン氏はいう。グラナスティン氏は最近、自身のチームを鼓舞すべく「ザ・ポスト」を見学するフィードトリップに出かけ、キャンペーンの「ストーリーアングル」について多くを語った。

考え方のシフトが重要



パブリッシャーたちは販売担当者のプロフィールを変更しようとしている。ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は先頃、数人の広告販売ディレクターを解雇して新たなパートナーシップを作り、エージェンシー風の製品やサービスとともに成長を促す入り組んだパートナーシップを追求している。ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)は、コンサルティングサービスの新しい販売モデルを成立させるにあたって、ストラテジストやクリエイティブディレクター、エンジニアのようなスキルを持つ人間を探している。

ブルームバーグ・メディアのグローバルCRO、キース・グロスマン氏は次のように話す。「適切なタイプの才能を特定することが本当の課題だ。それはいままで、パブリッシャーのエコシステム全体のなかに存在しなかったものだからだ。さらに、答えが常に『あなたのブランド』なら、その人はコンサルティングとは違う考え方をしている。クライアントにメディアを販売することからクリエイティブなソリューションを販売することへと移行していくために、我々が受け入れなければならなかったのは考え方を変えることだった」。

コンサルタントに対する期待は、多くのパブリッシャーが思ってきたよりはるかに大きい。「我々にとってメディアパートナーは、戦略パートナーに近いものになった」と、エージェンシーDWAのボストンのゼネラルマネージャーを務めるジェレミー・テイト氏はいう。「パブリッシャーがやってきて、もっとコンサルティング業務をこなし、ビジネスの結果によりつながりたいと考えるなら、それは素晴らしいことだが、彼らはカスタマージャーニーの一部しか見ていない。彼らが(販売に)どのようなインパクトを与えているかを理解するには、エンド・トゥ・エンドのデータが必要だ。コンサルタントは、クライアントのビジネスやテクノロジースタック、顧客セグメンテーションに深く関わる傾向がある。その役割を果たせる単一のパブリッシャーがあるかどうか、私にはわからない」。

希少すぎるユニコーン



メディアの販売担当者の仕事を難しくしているのが、比類のないスケールやオーディエンスターゲティングを有する、デジタル広告の競合相手としてのFacebookやGoogleの台頭だ。販売担当者は、ビジネスで勝利するためのカギとして「クライアントとの良好な関係」に頼ってきたが、現在は、古いキャッチコピーを使い回すなら、Facebookを購入してクビになる人間は誰もいない。

「我々はみなユニコーンを探しているが、多くのことが重なって、ユニコーンを見つけることがより難しくなっている」と、スパンデ氏は語った。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)