森 時彦(もり・ときひこ)神戸製鋼所を経てGEに入社し、日本GE役員などの要職を務める。その後、テラダイン日本法人代表取締役、リバーサイド・パートナーズ代表パートナーなどを歴任。現在はチェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役として組織活性化やリーダー育成を支援するかたわら、執筆や講演等を通じてファシリテーションの普及に努めている。ビジネス・ブレークスルー大学客員教授、日本工業大学大学院客員教授、NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー。

写真拡大

会議やワークショップの生産性を高めるには、ファシリテーションの技術が欠かせない。では、ファシリテーターはどんな技術を使って議論をリードしているのか。森時彦氏の最新刊『ストーリーでわかるファシリテーター入門』(小社刊)の解説より、ファシリテーターに求められる思考の技術を3回にわたって特別公開する。

〈技術5〉
良いアイデアが出ないときの原因と対処法

 みんなで話しあっても良いアイデアは出なかった、という経験をした人は少なくないと思います。ブレーンストーミングでは新しいアイデアは出ない、と断定する人もときどき見かけます。

 この物語の中にも出てきましたが、当該分野についてあまり考えたことのない人がただ集まって話しあっても、目新しいものが生まれることはありません。

 現場にいる人たちの中にも少なからずそういう人たちがいて、彼ら・彼女らに、ただ集まってもらって話しあうだけでは何も生まれません。どんなことでもそうですが、成果を上げるためにはそれなりに準備が必要なのです。

 もしワークショップをしたが、ろくな考えが出てこなかったとしたら、参加者を罵る前に、考え・話しあうために必要な情報や条件が揃っていなかったのではないかと、まず反省すべきです。

 それでも、成果が出ないワークショップになってしまったときには、どうすればいいでしょうか? 私も何度かそういう場面に出会ったことがありますが、その私の結論は、面倒でも、観察→記録→分析→アイデア(仮説)→検証というプロセスを踏む、ということです。そうすることで参加者が考える材料を手に入れ、考えはじめます。

 一番いいのは、ワークショップの前に、参加者に考えてきてもらうこと、観察したり記録をとったりしてくることを連絡して準備してきてもらうことですが、結果として成果の出ないワークショップになってしまったときには、ワークショップを終える前に、次回までに観察・記録してきてもらう宿題を出す。そして2度目のワークショップで、その観察・記録されたものを持ち寄って議論する。数値データが用意できる場合には、切り口を提供して分析してもらう。

 こういう作業を丁寧に2、3度行ってみると、チームで考える素地ができて、ワークショップが機能しはじめます。何事にもある程度の失敗はつきものです。ワークショップが「作業場」であり、発表する場でもアイデアを競う場でもないということを忘れないようにしたいものです。

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)