VAIOのロゴ(「Wikipedia」より)

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 スマートフォン(スマホ)向けイメージセンサーなどの半導体事業が好調で、ゲーム事業も順調に拡大する見通しとなり、2018年3月期の営業利益予想を前期比2.4倍の7200億円、最終利益予想を前年比6.5倍の4800億円としているソニー。営業利益が1998年3月期に記録した5257億円を超え、実に20年ぶりに過去最高を更新する見通しとなっている。

 そんなソニーだが、かつて同社のパソコンブランドであったVAIO、そしてグループ会社で廉価ブランドとして知名度を誇っていたaiwaが脚光を浴びている。

●VAIOとaiwaは、本当に好調なのか?

 VAIOは2014年に不採算事業としてソニーから売却され、それ以降はVAIO株式会社としてパソコン事業を主軸にしている。独立した初年度こそ20億円近くの営業赤字を計上したが、その後1年で売上を倍増させ、営業利益は黒字転換。17年には前年同期比3.2倍となる営業利益6億円弱を達成し、売上高営業利益率も1%台から3%台に改善していることで注目を集めているのだ。

 一方のaiwaは、1969年にソニーのグループ会社となって以来、廉価ブランドとして人気を誇っていたが、2002年にはソニーに吸収合併され、08年にaiwaブランドとしての製品販売は終了。その後、17年2月に国内でaiwaの商標使用権を十和田オーディオ(ソニーのラジオなどの受託生産を手掛けていた中小企業)が取得し、現在はアイワ株式会社として4K液晶テレビ、CDラジカセ、CDラジオデジタルレコーダーなどを販売している。

 日本国内では格安というイメージが強かったaiwaだが、中東などの一部地域ではソニーよりも人気を誇っており、今後は日本展開のみならず、中東、アジア、欧州などへの事業拡大も想定している。20年には日本市場で売上100億円、海外でも売上100億円、売上計200億円を目指しているともいわれている。

 このように、かつてソニーでPC部門を担っていたVAIOや、ソニーのグループ会社として高い知名度を誇っていたaiwaが今、注目を浴びているという状況だが、果たして実態はどうなのだろうか。家電やパソコンに精通し、『ソニー復興の劇薬 SAPプロジェクトの苦闘』(KADOKAWA)の著者であるフリージャーナリスト、西田宗千佳氏に話を聞いた。

●決して“好調”とは言えない両社の経営実態

「現在のaiwaについてはまだ売り上げデータが出ていないため、いわばビジネスのスタート地点に立った段階。好調とも不調とも分析できる状態ではありません。

 そしてVAIOですが、新しい製品を出せるようになってきたことは事実です。しかし、黒字転換したというだけで“業績が良い”わけではなく、ソニー時代に比べて規模は10分の1程度に縮小しているため、当然製品のバリエーションはとても少なくなっています。ストレートに言えば、再建途上でようやくトントンになりつつあるというだけで、現在のVAIOの経営状況がうまくいっているかというと、決してそうではないのです。

 企業は営業利益が大幅な黒字になって初めて好調といえます。現在のVAIOはあくまで企業として健全になったというレベルにすぎません。VAIOが好調といえるようになるのは、独自のビジネスを展開できる段階になったときでしょう」(西田氏)

 では、ソニーはなぜaiwaとVAIOを切り離したのか。

「一口に切り離されたと言っても、aiwaとVAIOではずいぶんと状況が違います。aiwaがソニーのグループ会社であった1980年代から90年代は、家電がたくさん売れていた時代であり、当時のaiwaは安価で高品質な製品を売ることに定評がありました。ですからソニーはaiwaという小規模ながらも手堅く利益を収めていた企業をグループ内に所有することで、経営を有利に進めていたのではないでしょうか。

 しかし、2000年以降は状況が一変。ライバル企業も増えたうえ、ソニーも自社で安価な製品を売り出すようになりました。そのため安価な製品を売るためにわざわざaiwaをグループ内で所有する必要がなくなったわけです。くわえてaiwaの収益も悪化していました。そこでソニーは、aiwaというブランドを畳んだほうがいいだろうと2008年に判断を下したわけです」(同)

 現在のaiwaの製品は昔のイメージのような安価な価格設定ではなく、過去のaiwa製品に比べるとかなり高めに設定されているという。aiwaブランドであることに変わりはないが、当時と現在ではビジネスモデル自体を抜本的に変えてきているのだろう。

 続いて、VAIOについて聞いた。

「まず、企業規模によって必要な売上が異なるということを念頭に置いてもらいたいのです。ソニーほどの規模の企業となると、相当な売上や販売台数をあげないとソニーのパソコン事業として成り立ちません。ソニー時代の全盛期に年間約860万台を販売していたVAIOブランドですが、ソニーのパソコン事業として相応の台数を売ろうとすると利益が出せず、それどころか赤字幅が大きくなってしまう。ただ、ソニーはVAIOを独立させて、企業の規模を縮小すればビジネスとして成功する可能性はあると考え、VAIOを切り離したのです。つまりソニーとしては、かかわってきた社員や製品のファンを失いたくないという思惑もあり、VAIOを完全に終わらせない方法として、別企業として独立させたのでしょう」(同)

 ソニー内の事業としては成立しないレベルまで企業規模を縮小させ、経営的に小回りが利くようにすればビジネスとして成り立つという算段があったということなのだろうか。

「独立後のVAIOにしてみれば、規模は小さくなるので企業としてできる範囲は狭まるわけです。ソニー時代のようにバリエーション豊富にパソコンをつくることもできなくなるでしょうし、新しい製品を開発する際も規模の大きいライバル企業に比べて不利になると考えられます。ですが、ブランド価値を高めて売上を伸ばすことができれば、そういった不利な点をカバーすることも可能。規模が大きいとそれだけマーケティングにも労力がかかりますし、多額の資金も必要になるので、かえって利益率が下がることもままあります。これは一般論でもありますが、必ずしも企業の規模が小さくなったからといって、すべてが不利になるというわけではないのです」(同)

●絶好調のソニー、切り離しの決断は正しかった

 では、ソニーがaiwaやVAIOを切り離したことは正解なのだろうか。

「少なくとも現在のソニーは空前の利益をあげていますので、正解か不正解かのどちらかに決めるとするならば、正解だったのではないでしょうか。もちろんソニーの業績が横ばいや下落していたり、あるいはaiwaやVAIOがものすごい利益を上げているというのであれば話は変わりますが、現状はそのどちらでもないのは明らかです。

 ソニーがaiwaとVAIOを切り離したことを後悔しているということは、まずないと思います。たとえば、ソニー君という男性がいたとして、彼は今、仕事もプライベートもすこぶる順調だとします。そんな彼が昔フったカノジョであるVAIOさんやaiwaさんという女性が、他の誰と結婚したとしても、ソニー君は後悔することはないですよね。つまり、ソニーにとってVAIOやaiwaは、今や他人なのです。

 かりにaiwaやVAIOが切り離されていなかったとしても、今の経営レベルでは、どちらにしてもソニーグループのなかで生き残るのは難しかっただろうと考えられます。結果的に切り離した後のソニーの経営は上向きになり、プラスに転じているのも揺るぎない事実。それがすべての答えでしょう」(同)

 いずれにしても、現在のソニーの好調を考えれば、VAIOとaiwaを切り離したという決断は正しかったといえるだろう。
(文=A4studio)