自動運転車死亡事故、ウーバーが続ける「沈黙」という最悪の対応

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米アラスカ州のプリンスウィリアム湾で1989年、石油輸送船エクソン・バルディーズ号が25万バレルもの原油を流出させた事故では、エクソンの対応が危機管理の悪い見本となった。同社は評判を損ねただけでなく、石油探査に対する世間の態度を硬化させることにもなった。

ニューヨーク・タイムズ紙は、エクソンの失敗の主な要因として、「企業は非常事態に対応するだけでなく、国全体、または全世界が注目する中でそれに対応しなくてはならないという点」を軽視したことがあると指摘した。

ウーバーは今、同じ失敗をしている。

ウーバーの自動運転車が先月起こした死亡事故で、歩行者をひいた車は多くのセンサーを搭載していた。つまりこの事故は、これまで起きた中で最も詳細な記録が残る交通死亡事故の一つだったはずだ。しかし、これまでに公開されたデータは、ドライブレコーダーで撮られた非常にローテクな荒い映像のみ。さらに、その動画を公開したのはウーバーではなく、地元警察当局だった。

ウーバーは当然、警察などの捜査機関に協力するより他に選択肢はない。しかし同社経営陣は、この事故に大きな関心を寄せるその他の人々に対しては、幾つかのお悔やみツイートを除き、沈黙を保っている。これではいけない。沈黙は、ウーバーの利にならない臆測をあおるだけだ。

例えば、シンギュラリティ大学のネットワーク&コンピューティング・システム学科長、ブラッド・テンプルトンは、公開されたわずかな情報に基づき「ウーバーにとって状況は良くなさそうだ」と暫定的に結論づけている。

他の専門家たちも、「ライダー(LiDAR)」センサーシステムが歩行者を検知できなかったことに驚きを表明。デューク大学のミッシー・カミングス教授(機械工学・材料科学)は「歩行者はこの時点で、間に合うように車両に検知されるべきだった。暗闇や影は、この分野でのライダーの障害物検知能力になんら影響を与えないはずだ」と言う。

カーネギーメロン大学のラージ・ラジクマール教授(計算機科学・工学)はロイター通信に対し、もしライダーが機能しなくても「レーダーが(ライダーの)死角をカバーできるはずだ」と述べた。

では、何が悪かったのだろう? 臆測が飛び交っているのはこの点だ。ライダーシステムが停止していたのか? 新CEOに進捗を示すため、開発を急ぎすぎていたのか? この事故は、ウーバーなどの各社が公道での自動運転車試験を中止すべき理由になるのか? 公道での試験を許可したアリゾナ州当局は今回の事故に責任を負うのか?

もちろん、事故調査は時間をかけて行う必要がある。しかしウーバーのCEOはその間、1982年に起きたタイレノール毒物混入事件でジョンソン・エンド・ジョンソン上層部が取った対応に学ぶべきだ。

この事件では、何者かが解熱剤の「タイレノール・エクストラ・ストレングス」にシアン化合物を混入させ、7人が死亡した。当時のジェームズ・バークCEOは事件について、自分が取った最善策の一つは透明性とオープンさを大切にしたことだったと回想している。バークCEOは報道関係者らに対し同社役員会議への立ち入りを許可し、主要な報道機関のトップが自分と個人的に会えるようにし、「60ミニッツ」を含む主要報道番組にも出演した。

「弁護士たちは、私の行動を嫌いました。自分たちの法的義務が何かが分からない状態だったからです。皆に反対されました」とバークは語る。しかし結果として、バークはこの危機で見せたリーダーシップと率直さを広く称賛されることとなった。

事件を受けタイレノールの市場シェアは37%から7%に下がり、ジョンソン・エンド・ジョンソンは打撃を受けた。だが危機の中で築いた信頼は、やがて訪れる回復に向けての土台となった。

それから時代は変わり、状況も変化した。今分かっている限られた情報からは、ウーバーが今回の危機から回復できるか(もしくはすべきか)は不明だ。シンギュラリティ大学のテンプルトンはこう語る。

「ウーバーは、自社のイメージを良くするようなログデータを公開していない。公開まで時間がかかればかかるほど、ウーバーにとって都合の良いデータではなかったのだと思われてしまう」

ウーバーは、事故死した女性の遺族と何らかの和解に達したとのことだが、その内容は公表されていない。事故の状況についての追加情報は出ておらず、ウーバーはこの危機に公の場で対処するためのその他の措置も取っていない。

ウーバーは、透明性とオープンなコミュニケーションを通じて信頼を取り戻す選択肢を再考すべきだ。沈黙を守っていては、何の役にも立たない。