新型「A7スポーツバック」(写真はアウディのサイトより)

羽田空港を飛び立ち約24時間。降り立った南アフリカ共和国のケープタウンで、自動車の意外な最新技術に触れた。自動車の技術と聞くと、ボディ関連やエンジンなどの動力系、そして最近では自動運転などの運転支援系を思い浮かべるかもしれない。今回、紹介したい話題はそのどれでもない。デザインだ。

気付きを与えてくれた新型「A7スポーツバック」

気付きを与えてくれたクルマは、今年の夏頃にアウディが日本導入を予定している2代目の新型「A7スポーツバック」だ。


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みずからを4ドアクーペとうたうA7スポーツバックは、セダンが持つ室内の快適性や高級感に、ハッチバックモデルが備える使いやすい荷室空間と、クーペが持つエレガントでスポーティなフォルムを併せ持つ。

今このカテゴリーはオーソドックスなセダンを飲み込み出し、SUV(スポーツ多目的車)に並んで成長を果たしている。だからこそメルセデス・ベンツ「CLS」やBMW「6シリーズ」、ポルシェ「パナメーラ」など多くのブランドが市場参入して競争を激化させている。

A7スポーツバックに乗って、印象的だったのは、日陰が多いケープタウンのビル群の合間を走り抜け、郊外の道に差し掛かり夏季のケープタウンの鋭い日差しが注ぎ込まれたときだ。大きくクルマの雰囲気が変わった。

それは華麗な女性のキリッとした表情が笑顔になったかのようで、クルマ相手にドキッとしてしまった。今まで発色の良いボディカラーをまとっているモデルで同様の経験はあるが、通常カラーでこの劇的な表情変化には出会ったことがない。

このカッコ良さを生み出すデザインにこそ技術進化を感じた。


ラインなどの造形には高い製造技術が求められる(写真はアウディのサイトより)

“デザイン=技術“という発想は馴染みないかもしれないが、華麗なラインを基調としたフォルムに始まり、キリッとした印象を漂わす幾何学的な作り、彫りの深いラインなどの造形には、実用性や機能性との両立を図るパッケージ力も大事になるが、高い製造技術が求められる。

A7スポーツバックで例えるなら、フェンダー周りの複雑な立体造形を実現するプレス技術。先代より33mm高められ、厚みが増したリアエンドの複雑に凸凹が入り組む造形。面の表情を整えるべく、1/3の凸(光)と2/3の凹(影)を巧みに構成して、陽を浴びると立体感が強調されることをデザイナーは明かしてくれるとともに、ケープタウンの太陽の日はその表現にピッタリとも言っていた。

中身も大幅に進化

デザインばかりを話してきたが、中身も大幅に進化している。基軸部に昨年フルモデルチェンジを果たしたフラッグシップモデル「A8」との共有が多数あり、乗り心地の良さや静かさなどの快適性はハイエンドモデル相応の完成度。搭載されるエンジンは排気量3Lのガソリン直噴ターボで、今後欧州で主力になる12kwの回生エネルギー(エネルギーリユース機構)能力のある48V主電源のマイルドハイブリッドが付く。それにより加速はエンジンのもともと持っている素性以上に鋭く、反応にも優れ、アクセルの踏み込みが少ないときの静かさも実現するなど、スポーティとエレガントな2面性を併せ持つ。

またトランスミッションには7速ツインクラッチが組み合わされ、アクセル操作への反応やシフト変速のキレの良さなど気持ち良さはあるが、極低速走行でツインクラッチ特有の変速ショックやギクシャク感が発生する時があることが気になった。

ボディサイズは全長4969×全幅1908×全高1422mmの、ロー&ワイドのビックサルーンだ。そのサイズから「鈍重なのでは」とイメージしてしまうが、実車にその気配は全くなかった。

ダイナミックモードを選択すると20mm車高が落ちて車体の揺れが少なくなる。路面への張り付き感が増す。注目は、ハンドル操作をするとフロントだけでなくリアタイヤも操舵する4輪操舵機構を積極的に使っていること。その最大操舵角度が5度。最小回転半径が使用しない状態より1.1mも小さくなるなど、街中での取り回しが楽になる。さらに高速走行時はこのリア操舵を車両安定性と車体の傾きを抑制する快適性に使うので、いかなる時も鈍重な感覚を抱かず運転できた。

何はともあれ早く日本の太陽でも、フェンダー部の盛り上がりが強調されて力強さが増し、リアエンドの伸びやかさが増してエレガントさも強まるあのドキッとする感覚が得られるかを確認したい。ちなみにこのようなエレガントで存在感のあるモデルが世の中に多く走るほどに町の景観が優れてくるので、その恩恵はオーナーだけに留まらない。

改めて各所のポイントをまとめておこう。

外装は2つを用意

・エクステリア

昨年のA8より導入された新しいデザイン言語が取り入れられた外装は、エレガントなノーマルと、スポーティなS-Lineの2つを用意。ボディサイズは全長4969mm・全幅1908mm・全高1422mm、ホイルベース2926mm。製造はA8と同様に本拠地ネッカースルム。

・内装


後席の居住性は大きく向上している(写真はアウディのサイトより)

先代モデルに対して室内長が21mm拡張され、内装の造形が広がりを大事に水平基調で仕上げられており、後席の居住性は大きく向上している。

・インフォテイメント

エアコンやシート関連を操作する8.6インチディスプレイを、シフトレバーに手を置いて指を伸ばせば操作できるセンターコンソール下部に配置。その上部に車両&運転情報を示す10.1インチのMMI系モニターを配置。どちらも触感フィードバック付きのタッチ操作式モニター。

・ライト周り

夜の存在感を示すプレミアムな作りとして、フロント12個、リア13個の縦型スロットに区切られたLEDライトが、鍵の開閉時に光の演出としてアニメーションプレイされる。

・リアスポイラー

スポーツバックの特徴であるリアエンドは、先代よりも33mm高められならが、ヨットのように両側を絞っている。ハッチガラスから滑らかに続くボディの最後端部が、時速120kmになると自動的にせり上がり車両安定性を高めるリアスポイラーになる。

ラゲッジコンパートメントは使いやすい形状に

・ラゲッジ


容量は通常時535Lで、リアシートを倒すと1390Lだ(写真はアウディのサイトより)

ラゲッジコンパートメントは、幅が1050mmになり使いやすい形状になった。容量は通常時535
Lで、リアシートを倒すと1390L。セダンよりも大幅に広く、アバントボディより若干少ない実用的容量。

・タイヤ

Sラインには最大で255/35の21インチタイヤも用意されおり電子制御サスペンションとの相性も良く乗り心地が良い。また400mm径の6ポットブレーキが安定した制動力を提供する。

・ダイナミックオールホイルステアリング

時速60kmまでは最大で5度、リアタイヤがフロントタイヤの舵角とは逆に操舵され、最小回転半径が最大で1.1m小さくなる。時速60km以上では、最大2度の範囲でフロントタイヤに同じく動き車両安定性を高める。


燃費削減にも成功した(写真はアウディのサイトより)

・エンジン

当初導入予定は3.0TFSIのみ。48V主電源マイルドハイブリッド(MHEV)により、時速22km以下でのアイドルストップを可能にするなど、100km走行あたり0.7Lの燃費削減にも成功。最高出力は250kw(350hp)・最大トルク500Nmで、時速0-100kmを5.3秒でこなす。