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■「目標を言う」ことで満足してしまう個人・会社

仕事柄、いろいろな方にお目にかかる。経営者やベテランのビジネスパーソンの場合もあるし、若い社会人や、学生さんとも会うことがある。

そんな中、「できる人」と、「できない人」を比較したときに、見分けるための1つの指標になることがある。

「できる人」の特徴。それはずばり、自分の目標をやたらと人に言わないこと。

逆に言えば、「私はこれを目指しています」「ぼくはこんなことをしたい」と言い続けている人は、結果が出ていないことが多いのである。

なぜ、「できる人」と「できない人」の間に差が生まれるのか? これは学生さんや若い社会人に多いのだけれども、どうやら、目標を言うことで、すでに満足してしまっているようなのだ。しばしば、「ぼくはビッグになります」と言う人がいるけれども、そのような人が実際にビッグになったのを見たことがない。

逆に、何も言わずにコツコツと努力をしている人は、しばらく会わない間に大きく成長して、「大化け」していることもある。

個人だけではない。会社のような組織も、やたらと目標を掲げるよりは、静かにそして地道に仕事をしているほうが、結果として伸びている。

大きなことを言わずに頑張るのは、日本人の美徳のように思っている人たちもいるかもしれない。一方、アメリカには大言壮語する人が多いという印象もあるかもしれないが、実際にはそうではない。

■出来上がったものを突然公開・発表する先進企業

アメリカのマサチューセッツ州に拠点を置く「ボストン・ダイナミクス」というロボットの研究開発をする会社がある。人型ロボットの「アトラス」がバク宙をする映像が2017年11月に公開されたので、見た人も多いかもしれない。

ボストン・ダイナミクスは、アトラスをはじめ、倒れても起き上がる「ビッグドッグ」や、部屋を自由に動き回り、空き缶をつかんだりする機能を持つ「スポットミニ」のようなロボットを開発している。

ボストン・ダイナミクスは、「私たちはこのようなロボットを作る」というような目標を言い立てない。ただ、ロボットを開発して、出来上がった「作品」を、いきなりネット上に公開するのだ。

このような、開発途中では何も言わないで、出来上がってから初めて公開するというやり方は、現代の先端技術開発に関わる「できる人」たちの共通のやり方のようだ。

例えば、今や世間で熱い注目を浴びる「ビットコイン」などの仮想通貨の元となった「ブロックチェーン」技術の考え方は、ネット上に「サトシ・ナカモト」の名前でいきなり発表された。

グーグルをはじめとする企業による自動運転技術の開発も、「こういうものを作ります」とPRするよりは、出来上がったものを突然動画で公開するのが主流のスタイルになっている。

テクノロジーは、「作ります」と言っていても仕方がない。実装して初めて価値がわかる。最先端の技術に関わる人たちの間では、「目標」をあれこれと言うのはダサく、とにかく作り、公開してナンボという風潮があるようだ。

「できる人」になりたかったら、目標はぐっとのみ込んで、胸の中で温めておくのがいい。

「これをやります」と口にして満足するのではなく、完成して初めて他人に言う。そんなストイックな姿勢が現代におけるスターを生み出す。

(脳科学者 茂木 健一郎 撮影=横溝浩孝 写真=AFLO、iStock.com)