日本の未来の姿と解決策は?(撮影:梅谷秀司)

日本社会はこれから数十年の間、世界で初めての急速な人口減少と高齢化の波にさらされる。人口減少と高齢化が行き着く先には、いったいどんな社会や経済が待っているのか。『週刊東洋経済』は4月2日発売号(4月7日号)で「20年後 ニッポンの難題」を特集。医療・介護からインフラ、教育まで大胆に未来を予測し、その解決策となる提言を紹介している。筑波大学学長補佐でメディアアーティストとして多彩な活動をする、落合陽一氏に日本の未来の姿と解決策を聞いた。

都市と地方の2極化

――20年後には団塊ジュニア世代が65歳以上になり、日本は深刻な人口減少と高齢化問題に直面します。どのような問題が起きてくるでしょうか。

2040年ごろに高齢者数がピークを迎え、2050年ごろになると日本の人口が1億人を割る。そのとき、いちばん考えないといけないのは、都市と地方の2極化。東京23区のうち千代田区、港区、中央区の人口増加は2035年まで続くと推計ではいわれている。一方、農村や地方は大変なことになる。


日本全体の人口が9000万人になって、そのうち3500万人が首都圏に密集し、5500万人が日本列島にまたがって住む。超中央的な都市と、超まばらな分散型の地方に分かれてくる。それは困る。いまは中央式の送配電システムも地域分散型にしないとコストのほうが高くつく。うまくいかないものがたくさん発生する。

たとえば、病人を救助するときに救急車を使うかドクターヘリを配備するか。これまでは救急車のほうがよかったが、地方で人口が少なくなれば救急車を配備するより、(都市から)ヘリを飛ばしたほうがコストは安くなる。発生する確率が低くて、発生したら高速で帰ってこられる。その分安いし、速い。人口規模と地域によって、設備と機能とスキーム、ロジスティクスを最適化しないといけない。

(これまでの行政サービスのように)すべてに同じケースを想定して、ある平均値のために、システムを当てはめられなくなるため、システムを個別で最適化しないといけない。1つの大きな問題に対して最大公約数を探すのではなくて、多様な問題に対処する必要が出る。


落合陽一(おちあい よういち)/1987年東京都生まれ。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学大学院学際情報学府で博士号を取得。メディアアーティストとして幅広く活動(撮影:梅谷秀司)

――どうすれば解決できますか?

解決には2つのアプローチが必要で、1つは移民、もう1つは自動化・省人化。僕は後者を推している。海外から人を入れて定住させても、都市部への集中がさらに進むだけ。それよりも自動化によって解決できる問題にフォーカスするべき。人口減少にしっかり向き合えば、第四次産業革命といわれるアプローチにつながる。

規制緩和を大きく進め、リスクを民間が引き受ける必要もある。途中で既得権益を守ろうとすると、いつまで経っても何も変わらない。昔の日本は面白くて、行政や国立大学が主導してもイノベーションは起きた。でも今はその速度感じゃない。トライ・アンド・エラーを妨げる法の下で生きる余裕がわれわれにはない。

テクノロジーが問題を解決していく

――人口が増えない以上、1人当たりの生産性を高める必要があります。

人口減はチャンスでもある。子どもの数が少ないので、教育にリソースを大量に割ける。1人当たりの教育コストを積めば、生産性を何倍も生み出すから差分を取りやすい。そして、平均値を求める人間の手を使わずに、コンピュータが解決策を設計すればいい。

テクノロジーで解決するというと、「ますます食いぶちを減らす気か」と言われるが、人口が減少しているときに、テクノロジーで解決するのは自然なこと。温水洗浄トイレと自分の手で拭くのとどちらがいいか。ホテルのドアはドアマンを置くより自動ドアを選ぶでしょう。日本はそういう国で、テクノロジーが問題を解決していく。

――テクノロジーで人手不足を解決できても、国内需要が減少するのは避けられないのでは?

たしかに、テクノロジー自体は消費をしないから需要の問題は解決できない。でも労働がストック型になり人の労働時間が短くなれば、余暇が増えて需要を生み出していくだろう。Vチューバー(架空のアバターなどが動画を配信する、バーチャル・ユーチューバーのこと)や小説家の印税収入のように、権利に対しておカネがもらえる職業が増えていく。

たとえば、いまプログラマーは労働の対価としておカネをもらって、書いたプログラムの権利は個人ではなく企業に渡って利潤を上げている。でも、プログラムの権利が個人に残るようになったら(過去に)書いた分だけ、ストックでおカネが入ってくるようになる。権利に対して対価を得る。あらゆる職業でそういう働き方が増えていけば、余暇が増えて消費も増える。

あまり悲観する必要はない

――日本企業にテクノロジーの競争力はありますか。

ここ10年ぐらい、日本は海外にソフトウエアの発想で負けてきただけで取り返しはきく。グーグルやFacebookもオープンソース化が進んでコモディティソフトウエアになったら、企業として市場のパイを取り続けられない。


日本にはシリコンバレーのように世界中の投資家や企業が集まるエコシステムが少ないといわれる。でも、豊田市や日立市の周りに日本の企業村があるのと、グーグル・アップル村にアプリの企業があるのは本質的には何も変わらない。国がしっかりしているほうが強いし、転換する時期がいずれ来ると思う。

高度経済成長期には、生活はどこまでも便利になるし、2001年には宇宙に行けると思っていた。日本にはハードの技術がある。そこを揺り戻しつつ、高齢化に対応した技術を輸出していけばあまり悲観する必要はない。人口が減少しているときこそ、テクノロジーで問題を解決しようというマインドセットが必要だ。

『週刊東洋経済』4月7日号(4月2日発売)の特集は「20年後 ニッポンの難題」です。