コンプレックスが彼女を「東大卒の男」との恋愛に走らせている(写真:liza5450/iStock)

筆者は、「不倫している女性」のインタビューを5年ほど続けている。彼女たちを観察していて気が付くことは、自分より低スペック(学歴や年収など)な夫を持つ妻は、不倫する傾向があることだ。
「不倫を楽しむ高収入の妻たち」について具体例を報じている本連載、今回は“低スペックな夫”を持ったことに対するコンプレックス解消のために不倫をしている女性を紹介する。

女性誌を支えてきたものの正体はコンプレックス

筆者は女性誌の編集者として、20年近く活動してきた。その経験から女性誌の根本を表現する言葉は「コンプレックス」しかないと感じている。女性誌はファッション、美容、ライフスタイルという3つのジャンルで構成されている。つまり、周囲の誰よりも「おしゃれで、かわいく、高感度高く、若く、イケていて、いい仕事をして、いい男と付き合って、いい夫と結婚し、幸せであり続けるリア充な私」でいるために役に立つ情報の提供をしているのが女性誌であり、これらの要素が「足りない」と劣等感を感じる女性が多いから、女性誌は存在し続けているのだ。


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コンプレックスというのは、独身時代はある程度は自力で解消できる。しかし、結婚するとそうもいかない。夫の学歴や子どもの進路など、本人の努力の及ばない範囲もまた「自分の一部」として、世間に晒すことになるからだ。

今回、お話を伺った、一部上場の食品メーカーに勤務する嶋田由美子さん(仮名・43歳・年収700万円)は、まさにその代表的な人物だ。彼女は高卒の夫に不満を持ち、東大卒の男性とばかり不倫している都内在住の女性だ。

日本の最高学府と言われる東京大学出身の男性に限定して恋愛をする……筆者には、はたしてそんなことができるのだろうか、という疑問が生じた。しかし、東京大学の発表によれば、毎年、約3000人が卒業しており、例年の男女比は8:2だという。また東京大学は卒業生の総数も少なくない。1952(昭和27)年度〜2016(平成28)年度までの卒業生は18万8490人もいる。人数から考察しても東京大学卒業者限定で不倫することは、想像よりも難しくないことがわかる。

由美子さんは埼玉県蕨市で生まれ育つ。父はエリートサラリーマン、母は教育熱心な専業主婦という典型的な昭和の家庭だ。2歳年上の兄とともに、幼い頃から学業優秀だったという。彼女の体型はやや小太りで、肌の色が抜けるように白い。髪は明るい茶色に染めているが、根元を見ると5ミリ程度白くなっており、白髪が多いことがわかる。目が大きく愛嬌があるが、アイラインを太目に引いているので表情がきつく感じられる。ファッションは黒のジャケットにオレンジ色のタイトスカートを合わせ、インナーはグレーの丸首カットソー。百貨店で買った日本ブランドのものを、長く使うタイプなのだろう。バッグはドイツブランドのスモーキーピンクのナイロントート、靴は黒のローヒールだ。かすかに甘く香水の香りがした。

「私の夫は高卒なんです。私自身は早稲田大学政治経済学部卒業で、夫が低学歴だと周囲にわかられてしまうのがイヤで、授かり婚だったことを理由に、結婚式はしませんでした」

夫は由美子さんが独身時代によく行っていた秋葉原のバーの雇われ店長だった。男女の仲になったのは、出会いから2年後、由美子さんが30歳のときだった。仕事で大きな失敗をした後に、深酒してしまった由美子さんを、彼は朝まで介抱してくれたのが縁となった。

持っているカードもゲームのルールも違う

「私から彼を誘いました。私は昔から男性を前にすると、つい張り合ってしまい、それに反応した相手とマウンティング合戦になってしまうこともあったのです。しかし、彼はそんな私を大らかな気持ちで受け止めてくれたような気がしたのです。今思えば、彼の両親も高卒で、子どもの頃からずっと地元の仲間たちとつるんでいるから、持っているカードもゲームのルールも違う。だから私を受けとめられたのでしょう。それと、基本的に想像力がないことと、自己肯定感が高いから、大らかに振る舞えたのでしょうね」

ちなみに、由美子さんが言う「ゲーム」とは、学歴、能力、人脈をカードに、どこまで高み(年収と地位)に登れるかを競うことを指す。

「交際3カ月で娘を授かり、妊娠中に入籍しました。そのときに、名門女子大学を卒業している母が、“なんであんな男と?”と高卒の夫との結婚に疑問を投げかけたのです。そのときは彼しかいないと思っていたので、聞こえなかったふりをして結婚しましたが、夫婦になってからは違和感だらけの毎日に母の言うことを聞けばよかったと後悔しています。夫は読書も映画鑑賞もせず、音楽も聞きません。趣味といえばパチンコかネットゲームなど、文化のかけらもないものばかり。そんな彼への不満を挙げたらきりがありません」

結婚後に実家の飲食店を継いだ夫は、忙しい由美子さんに代わり、娘の保育園の送り迎え、食事の支度などを引き受けていた。

「でも、くわえタバコで夕方のお迎えに行くなど、信じられないことばかりしていますよ。大学の同級生は同じレベルの男性と結婚し、海外赴任したり、夫婦で人脈を共有して仕事をしている。それなのに私は想像力も教養もない夫と東京の下町で、ゲームの電子音を聞きながら暮らしている。こんな不公平な話はないと思いました」

そんな彼女が最初に不倫をしたのは、娘が5歳になった35歳の頃。

「私が最初に浮気した相手は、MBA関連のビジネススクールで一緒に学んでいた東大卒の投資銀行勤務の既婚男性です。銀座での飲み会の後、私から誘うように京橋のビジネスホテルで恋愛関係になりました。何を話しても打てば響くし、ギャグの元ネタが鴨長明(『方丈記』の作者)や世界史だったりして、夫とは教養のレベルが違うんです。また、デートしていても、マネジメントやビジネスについてなど、仕事にまつわる深い話ができたこともよかった。何よりも“東大卒の男と恋愛している”ことの満足感が大きかったです。あと、言い訳ではありませんが、先に浮気をしたのは夫です。相手はキャバ嬢か何かだと思いますが、腹は立ちませんでした」

その後、由美子さんが8年間の間に恋愛関係になった男性は彼のほかに5人。全員が東大卒の既婚者だという。いったいどこで知り合うのだろうか。

「5人のうち4人はビジネス関連の勉強会です。この勉強会はSNS上の招待制のグループ内で募集されているもので、ビジネスで活躍している人を講師に迎え、討論します。

参加費用は3万円と高いですが、厳選されたメンバーであり、女性が少ないので、恋愛関係になりやすいんです。あとの1人は後輩女子2人と銀座コリドー街の居酒屋で飲んでいたときにナンパされた官僚の男性です。私は東大卒男子を6人しか知りませんが、彼らには2つの共通点があります。まずは、女性から押されると弱いこと。次に恋愛行為があまり上手ではないということです」

それでも大満足しているのは、“東大卒の男に抱かれている”という特別感があるから。相手の人柄や中身を好きになるのではなく、“東大卒の男性と肉体関係になること”が由美子さんの不倫の形だ。

「お父さんの頭が悪いから受験に失敗した」

「私は長く付き合いたいのですが、相手からなぜか距離を置かれてしまうんですよ。いつも2〜5回会って、半年くらいでフェードアウトされます。でも、私も結婚しているし、お互い遊びなので深入りしないのがいいのかも。でも、ここ半年くらいはおとなしくしていたんですよ。というのも、娘が中学受験の追い込み時期だったからです。結局、3年間の努力もむなしく、娘は私の母校でもある第1希望の中高一貫女子校に落ち、第2希望も不合格でした。結局、何校かひっかかったのですが、結局4月から地元の中学校に通います。そこは義父と夫の母校なので義理の両親は大喜びしていましたが、私は夫の頭が悪いから、娘は受験に失敗したと思っていますし、娘もそう感じているようです」

これから由美子さんは夫の学歴という“絶対に改善しないコンプレックス”を抱えたまま、どのように生きていくのだろうか。

「夫とはレスではないですし、一緒にいるのが慣れてしまっているので、しばらくはこのままかもしれませんが、何か大きな問題があったら離婚し、別の男性と結婚するかもしれません。そのときは、東大卒の男性は難しくとも、せめて有名大学を卒業した人がいいと思っています。“学歴なんて関係ない”というのは建前の話です。教養、思考力、忍耐力、想像力など、どれをとっても有名大学卒業の人のほうが優れており、やはり同じレベルの人と一緒じゃないと、夫婦として一緒にいるのは難しいと思います」

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