山口貢新社長(写真:ロイター/アフロ)

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 アルミ製品などの品質データ改ざん問題で揺れる神戸製鋼所で新トップが誕生しました。引責辞任を決めた川崎博也会長兼社長の後任として新社長に就任したのは、機械部門を担当していた山口貢副社長です。山口氏は同社を立ち直らせることができるのでしょうか。

 同社は昨年10月、アルミ製品などで品質データを改ざんしていたことを明らかにしました。改ざんの根は深く、40年も前から不正が行われていたそうですから、組織全体の問題であることは間違いありません。

 40年にわたって問題が放置された原因の一つとして指摘されているのが、縦割り型の硬直化した組織です。同社は製鋼所という名前が付いていますが、経営はかなり多角化されており、鉄鋼の比率は全体の35%程度しかありません。鉄鋼は主力部門ではありますが、これに加えてアルミ、機械、エネルギーなどの部門が並立しており、しかも各部門の独立性が高いという状況でした。

 経営トップは、主力部門である鉄鋼から出ることが多いのですが、各部門からそれぞれ取締役を出すという人事が行われており、部門間であまり情報が共有されていなかったと言われています。

 山口氏は、主力部門である鉄鋼ではなく、機械という地味な部門を担当しています。また、同社としてはめずらしく、複数の部門を横断した経験を持ちます。社長就任にあたって山口氏は、各部門をまたいで品質管理やコンプライアンスなどを行うポストを増設し、トップ主導で改革を進める意向を明らかにしました。

 こうした措置は必要不可欠なものではありますが、同社にはもっと根本的な問題が横たわっています。それは業績の低迷です。同社の売上高はこのところ行ったり来たりの状態で、過去2期は連続して赤字を垂れ流していました。赤字と不正は直接関係ありませんが、儲かっている企業の場合、コンプライアンスなどに対する意識は高まってくるのが普通です。経営が苦しいと、社内の雰囲気はどうしても後ろ向きになり、不正を指摘したり、組織の問題を改善しようという力学が働きにくくなります。

 同社の不正は40年にもわたる長期的なものですから、そう簡単に信頼回復ができるものではありません。不正が起こらないよう、体制を見直すことはもちろんですが、業績を回復させなければ、抜本的な問題解決にはなりません。遠回りのように見えますが、しっかり利益の出る企業にすることが、信頼回復への最短距離といってよいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)