『アルプスの少女ハイジ』といえば、1974年に放送され大人気となったテレビアニメだ。その後何度も地上波やCSで再放送され、公認のパロディCMも登場している。

アルプスの大自然の中でおじいさんと暮らすハイジと、足が不自由で体の弱いクララとの友情が描かれるストーリーだが、なんといってもハイライトは、車椅子に乗ったクララが思わず自力で立ち上がる場面だ。この感動的なシーンがヒントになって、縄文時代の土偶の愛称を「縄文 くらら」と命名したところがある。

青森県野辺地町で出土し、国の重要文化財にも指定されている「板状立脚土偶」の愛称を公募した、野辺地町立歴史民俗資料館だ。

Jタウンネット編集部は早速電話で話を聞いてみた。

「立脚」が鍵となった


愛称「縄文 くらら」に決まった板状立脚土偶(画像提供:野辺地町立歴史民俗資料館)

電話で答えてくれたのは、野辺地町立歴史民俗資料館学芸員の山崎杏由(あゆ)さんだった。

「愛称を公募した土偶は、縄文時代後期、約3500年前のものと考えられています。大形で厚手の板状に作られた胴部を持ち、それを短い脚と前後に伸びた脚先で支えて、なんとか自立させようとする構造が特色です」

「東北地方の縄文土偶に特有の板状土偶へのこだわりと、縄文後期から顕著となる立像土偶への指向を、両立させるための工夫と考えられます」

つまり「立った」のが重要なポイント。やはり「立脚」が鍵となったのだ。

「自立する土偶はきわめて貴重なため、国内外から貸し出しの希望が多く、これまでも東京の国立博物館やイギリスの大英博物館で展示されたこともありました。今後も出張の予定があり、当館を不在にすることも多そうだということで、レプリカを製作することになりました。これをきっかけに積極的にPRしていこうと、愛称募集を行ったわけです」と山崎さんは語る。


板状立脚土偶「縄文 くらら」(画像提供:野辺地町立歴史民俗資料館)

公募は野辺地町のホームページや地元の新聞をとおして行われた。応募は、北は北海道から南は長崎県まで、全国各地から266点。1人2点まで応募できるため、応募者は215人だった。野辺地町内89人、青森県内58人、県外68人という内訳だ。

「町長、教育長、発掘者などを含む選考会で厳正な選考を行い、この『縄文 くらら』に決まりました。次点は『バンジョリーナ』でした」と山崎さん。福島県いわき市の堀卓さんの提案が選ばれた。

この「縄文 くらら」の高さは32センチ。顔には入れ墨があり、首元にペンダントのような模様が見られる。髪は編み上げられており、衣服をまとっている。縄文時代の土偶のほとんどは女性で、安産や子孫の繁栄を祈り、ケガや病気の治癒を願って作られたと考えられている。

現在、レプリカ製作中のため、野辺地町立歴史民俗資料館には不在。展示再開は4月下旬だが、詳細は未定だ。4月28日、「土偶レプリカお披露目会」が開催される予定。