DAZNでプロ野球中継の放映権獲得交渉を担った1人のコマーシャルディレクター、ジョセフ・マーカウスキー氏(編集部撮影)

昨年、広島東洋カープと横浜DeNAベイスターズの2球団でプロ野球中継に参入したDAZN(ダ・ゾーン)。今シーズンは巨人以外の11球団主催の全試合に中継対象を拡大する。

プロ野球中継参入2年目で12球団中11球団からの放映権獲得は快挙といってもよさそうだ。

その一方で、無料の地上波メディア以外のすべての放映権を独占できたJリーグとは異なり、今回はプロ野球中継で20年の歴史を持つスカパー!との競合が待ち受ける。

放映権獲得の実務責任者であるコマーシャルディレクターのジョセフ・マーカウスキー氏は「ショルダーコンテンツ(関連番組)こそDAZNの強み。Jリーグで蓄積したノウハウを活用し、ファンを開拓する」と意気込む。

巨人戦を落とすも結果に満足

――11球団からの放映権獲得という成果についてはどう考えているか?

非常に満足している。信じられないくらいコンテンツが豊富になったと思う。

放映権の取得経路については少し複雑だ。パ・リーグ6球団の主催ゲームに関しては、PLM(パ・リーグ球団の共同出資会社であるパシフィックリーグマーケティング)との契約に基づき、実際のオペレーションは6球団から直接、6球団自身が制作した基本映像の提供を受ける。

セ・リーグ球団に関しては、PLMのような組織が存在しないので個別に対応した。

広島東洋カープは今シーズン、昨年締結した3年契約の2年目なので、新たな契約は結んでいない。東京ヤクルトスワローズとは今回複数年契約を結んだ。

阪神タイガース、横浜DeNAベイスターズ、中日ドラゴンズについては、SLE(スポナビライブの運営会社であるスポーツライブエンタテインメント)からのサブライセンスで確保した。

SLEからはこの3球団の放映権だけでなく、他の権利もまとめて譲り受けている。

――巨人主催ゲームはなぜ獲得できなかったのか?

放映権はつねに売りに出されているわけではない。今回はタイミングが合わなかった。巨人からNoと言われたわけではない。売りに出る放映権をウォッチしている専門担当もいるので、機会を待ちたい。

(編集部注)巨人は独自にインターネット配信サービス・ジャイアンツLIVEストリームを創設、巨人主催ゲーム、阪神主催の巨人戦、横浜主催の巨人戦、交流戦のパ・リーグ主催の巨人戦のみを配信している。

DAZNと各球団との契約関係

昨シーズン巨人、広島を除く10球団の主催ゲームを放送したスポナビライブは、今シーズンはプロ野球の中継を行わず、他の送信サービスも今年5月末で終了するが、プロ野球3球団の主催ゲームのほかBリーグなどの放映権など、複数の権利をDAZNに供与する事業に転換する。



――実際に放送する映像はDAZNで制作するのか?

パ・リーグ6球団に関してはパ・リーグTVの映像と同じものを流す。セ・リーグ5球団については、阪神、ヤクルトは球団制作の基本映像をそのまま流し、広島、中日、横浜の3チームについては基本映像に実況と解説をDAZN独自で付ける。

「日本野球村」に長く暮らしよき隣人になる

――スポナビライブがサービス終了に伴い、会員にDAZNへの乗り換えを呼びかけている。DAZNにとっての当面の重点策は何か?

この1年はコンテンツを視聴できるさまざまなデバイスの提供に注力してきた。これからはソフト面に軸足を移す。日本はサッカーを見る人がプロ野球を見ないし、プロ野球を見る人がサッカーを見ない。サッカーファンをプロ野球に、プロ野球ファンをサッカーに呼び込みたい。

――具体策は何か考えているのか?

DAZNの力を一番発揮できるのはショルダーコンテンツ(関連番組)だと自負している。

たとえば選手自身やそのライフスタイルにフォーカスしたドキュメンタリーであるとか、インタビュアーを球団の内部に入り込ませて、外からは見えにくい球団の舞台裏を見せるとか、ファンが知りたいと思うことを伝える番組などだ。


今シーズンからDAZNはプロ野球中継を大きく拡大させる(撮影:今井康一)

チャットを使ったプログラムも考えている。東京にはJリーグのショルダーコンテンツを制作する目的で作った最先端の制作スタジオがあるので活用したい。いずれにしても生中継以外のコンテンツをどれだけ提供できるかだと思う。各球団からの協力についても契約の中に盛り込んでおり、その点も心配はないだろう。

――DAZNから球団の内部に入って行ける人材はどうするのか?

昨年1年間で、スポーツメディアのプロが集まるコミュニティにアクセスできるようになったので、その人脈を活用する。

――11球団からの放映権獲得に投じた金額は?

申し訳ないがお答えできない。

独占契約の計画はない

――今回は独占契約ではないが、プロ野球も独占契約を目指すのか?


ダ・ゾーンのコマーシャルディレクターを務めるジョセフ・マーカウスキー氏が取材に応じた(編集部撮影)

いまのところ、その計画はない。

――日本のプロ野球界は閉鎖的だとも言われている中、11球団が合意し、なおかつショルダーコンテンツ制作への協力も約束している。この結果は快挙なのでは?

閉鎖的という印象はなく、関係者は皆、暖かく迎え入れてくれた。特にPLMの根岸氏(根岸友喜社長)は非常に協力的だった。彼はプロ野球の発展に向けてのビジョンがクリアで野心的でもあり、共感できた。

日本のプロ野球界が独特であることは確かだが、だからこそ私はリスペクトしているし、独特だからこそ日本でいちばん人気のあるスポーツなのだと思う。われわれはまだ「日本野球村」の住民としては新参者だ。長くそこに暮らし、よき隣人になりたい。