光に満ち溢れた写真と映像が
春を連れてくる


横溝 静《Forever (and again)》、2003、ヴィデオ・インスタレーション (C)Shizuka Yokomizo (C)GEIJUTSU SHINCHO、Photo=Tatsuro Hirose, Courtesy of Wako Works of Art

 ビートルズに「Here Comes The Sun」という曲があって、彼らの作品の中でこれがいちばん好きだ。

 「陽が差してきた、陽が差してきた」と繰り返したあと、「It's all right」で締める。曲調も歌詞もいたってシンプル。その単調さが、降り注ぐ陽の光に包まれる心地よさをよく表していて、聴いているだけで背中がぽかぽかしてくる。

 水温む今の季節の多幸感と同じだ。この感覚をビジュアルアートで実現した展示が開かれている。花咲き誇り富士山も間近に望める抜群の環境下にあるIZU PHOTO MUSEUMでの、『永遠に、そしてふたたび』展。

 写真や映像を用いる5人のアーティストが出品して全体を構成しているのだけど、会場のどこに身を置いていても強く感じるのは、どこからか降り注いでくる温かい光。

 エントランスのドアを抜けると、そこに一枚の写真作品が架かっている。白とも黄とも言えぬ複雑かつ純粋な色を湛えた円形が、画面の真ん中で輝く。写真なのだからただの印画紙だろうに、それ自体が発光しているみたいに眩しく、熱さえ発しているんじゃないかとすら感じられる。


野口里佳《夜の星へ #18》、2016、発色現像方式印画 (C)Noguchi Rika, Courtesy of Taka Ishii Gallery

 野口里佳の《太陽♯11》である。タイトルの通りお日さまにそのままカメラを向けており、「太陽の色をうつす」という着想からはじまった作品。

 続く部屋にも野口の作品が展開されている。暗くした空間に、街の夜景を撮った写真が並ぶ。車のライトや街灯、店のネオンが赤、緑、黄色に輝く。ベルリンを走る2階建てバスに乗って、移りゆく景色を撮ったという。光が滲んでいるのは、車窓を通しているせいか。作品名は〈夜の星へ〉という。

 大きな都市の、よくある光景。それがこれほど美しく目に映るのは、光に満ち溢れているからだろう。きっとどんな場所だって、光に満たされていれば素敵に見える。

 ん。ということは、美しいのは光そのものか。そう気づいて、先の《太陽#11》を改めて観に戻れば、太陽が発するこの名付け得ぬ色と輝きが、いっそう至上のものと感じられた。


長島有里枝《無題2》〈SWISS〉より、2007、発色現像方式印画 (C)Yurie Nagashima, Courtesy of Maho Kubota Gallery

 展示はここから横溝静《Forever(and again)》、テリ・ワイフェンバック《柿田川湧水》、長島有里枝〈SWISS〉、川内倫子〈Cui Cui〉と続く。高い人気を誇るアーティストばかりで、作品を一堂に観られるのはうれしいかぎり。

 会場を巡れば、いずれの作品にも温かい光が横溢していることがよくわかる。ああ、すべては光だな。そう気づかされると同時に、春の訪れもいち早く感じ取れるのだった。

『永遠に、そしてふたたび』
会場 IZU PHOTO MUSEUM(静岡・長泉町)
会期 2018年1月14日(日)〜7月6日(金)
料金 一般 800円(税込)ほか
電話番号 055-989-8780
http://www.izuphoto-museum.jp/

春を寿ぐように華やかな絵画


ピエール=オーギュスト・ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》1880年 (C)Foundation E.G. Bührle Collection,Zurich (Switzerland)、Photo=SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)

 ビュールレとは、スイスの実業家にして世界的な美術コレクター。世界のアートファン垂涎の彼のコレクションが、多数運ばれ展示されている。

 全64点の中心を成すのは、日本でもとりわけ人気の高い印象派の作品。明るい作風の絵画が多数並んで、会場は明るく輝いている。

 目玉はルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》か。長く美しい髪と色白の肌に思わず吸い寄せられてしまう。

『至上の印象派展 ビュールレ・コレクション』
会場 国立新美術館(東京・六本木)
会期 2018年2月14日(水)〜5月7日(月)
料金 一般 1,600円(税込)ほか
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.buehrle2018.jp/

江戸時代の絵画の「リアル」


円山応挙 鯉図 個人蔵

 外界をありのまま、リアルに写すのは、絵画における究極の目標の一つ。そのため西洋ではルネサンスの頃から、奥行きを生み出す遠近法や、立体感を表す陰影法が編み出され、そっくりに描く技術が進歩してきた。

 日本の絵画もリアルさは追い求めてきたけれど、手法や考えは西洋と大いに異なる。江戸時代の絵画から読み取れる「リアル」を捉え直すのがこの展覧会。

 円山応挙《鯉図》などの超絶技巧に酔いしれたい。

『リアル 最大の奇抜』
会場 府中市美術館(東京・府中)
会期 2018年3月10日(土)〜5月6日(日)
※会期中展示替えあり
料金 一般 700円(税込)ほか 
電話番号 03-5777-8600(ハローダイヤル)
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

文=山内宏泰