弁護士・柳原桑子先生が堅実女子のお悩みに答える本連載。今回の相談者は鈴木綾子さん(仮名・34歳・公務員)。

「はじめまして、お伺いしたいのは、悪意がないマザコンは離婚理由になるかどうか、ということです。私と夫は職場結婚しました。夫は山形県出身で、大学時代から東京で一人暮らしをしており、家に遊びに行ってもいつも片付いていて料理もできる自立した人だと思っていました。趣味もサッカーで友達も多く、目立ったところはないけれど、堅実で誠実なところが結婚相手としていいと思いました。

しかし、結婚して分かったのは、極度のマザコンということ。それについて見抜けなかったのは、義母も夫も自分たちがおかしいということを、全く意識していないからです。独身時代、彼の家が異常にきれいだったのは、月に2回、彼の母親が上京して掃除をしていたからだったそうです。

もちろん、結婚してからも当然の如く義母はうちに来て、月に2回、2泊3日きっちり泊っていきます。共働きで家事はおろそかにしがちな私とは異なり、掃除も洗濯も完璧に行なわれているので助かるのですが、やはり迷惑です。

しかも、夫は私に断りもなく合鍵を渡しており、そのことを責めると、”もしもの時のために、母さんが持っていると安心だから”としれっと言います。

ほかにも、”母さんに孫の顔を見せたいから、2年以内に子供をつくろう”、”母さんの料理はおいしい”、”母さんは仕事のつらいことをわかってくれる”など、ちょっと彼に意見をしようとすると、”母さん”が先に立つ。その話の通じなさはホラー映画並みに怖いと感じています。結婚前、焦っていたとはいえ、何でこんな男と結婚してしまったのか……。

まだ結婚して1年なのですが、私はこの状況が耐えられず、離婚したいと思っています。その話を持ち出したら、”僕は絶対に離婚しないよ。家事が大変なら母さんもサポートするから”と言われました。

私の両親も夫のことを信頼しており、“いい物件”と絶賛しています。夫側は離婚に応じないことはわかっています。今、離婚についていろいろ調べているのですが、DVや借金など表立った問題があれば離婚は認められるようですが、この場合はどうでしょうか。

私が義母を受け入れればいいのでしょうけれど、東京生まれ、東京育ちで人との距離感をとって育った私にしてみれば、耐えがたい問題です。もはや詐欺だと、慰謝料をもらいたい気持ちでいっぱいです」

弁護士・柳原桑子先生の回答は……!?

もう離婚を決意されているとしても、夫が離婚を拒否している以上、協議離婚は現段階では容易ではありません。離婚の手続としては、大きく分けて協議離婚、調停離婚、裁判離婚とあり、協議離婚ができなければ、調停に進めることになります。

しかし、調停は話し合いのお手伝いをしてもらうだけで、合意に至らなければ不成立となるのです。

調停が不成立となったら裁判ですが、裁判では、裁判上の離婚理由(不貞行為や暴力等婚姻を継続しがたい重大な事由など)がないと離婚は認められません。

夫がマザコンであるというだけでは、裁判上の離婚理由になりません。具体的に夫のマザコン故に、婚姻を継続できない事情が発生し、婚姻関係が破綻しているならば別ですが……。

これまでに,あなたがいたたまれないと感じていることを、夫に対し文句や愚痴ではなく、真摯な話し合いで伝えたことがなかったとすれば、これからしてみてはいかがですか。

夫はあなたとの婚姻継続を望み、子供も欲しているようなので、あなたを愛しているのでしょう。あなたがどうしても嫌だという部分について聞く耳をもっているのであれば、態度を改めてくれるかもしれません。

逆に、改めないばかりか、母親の関与を否定されたことをものすごく不満に思い、折り合いがつかないということになれば、協議離婚もありうるかもしれません。

あなたの問題意識を告げたのに、離婚でもなく、聞き入れようともしない場合には、夫が改めてくれない限り一緒に暮らせないとして別居を告げるのも、何か事態が変わることにつながるかも知れません。離婚を決意しているならば、別居を告げるだけではなくて、離婚合意に先行して別居することも考えられます。

夫の母親は元気で若々しい。子供たちの世話を生きがいにしている専業主婦で、特に長男である夫を溺愛しているという。



■賢人のまとめ
どうしても話が伝わらないなら、離婚を考慮した別居に踏み出すことも解決策のひとつかもしれません

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/