ダイソーの店舗(「wikipedia」より)

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 100円ショップのザ・ダイソーを展開する大創産業で、創業以来初めてトップが交代した。3月1日付で創業者の矢野博丈社長が代表権のない会長となり、社長に博丈氏の次男の矢野靖二副社長が就いた。

 靖二氏は1995年吉備国際大学社会学部を卒業。ショッピングセンター「ゆめタウン」を運営するイズミに入社。2015年、父親が創業した大創産業に転じ、海外事業部マネージャーとなった。16年から副社長を務めていた。

 博丈氏は昨年、「日経ビジネス」(日経BP/17年11月20日号)のインタビューで、株式公開の準備をしていると明らかにした。つまり、靖二氏が上場の実務を担うことになる。

 100円ショップは大手4社の寡占状態だ。業界2位のセリア、3位のキャンドゥ、4位のワッツはいずれもすでに株式を公開している。最大手の大創産業だけが上場していなかった。

●トラック1台での移動販売からスタート 

 博丈氏は立志伝中の人物である。スタートは広島で、トラック1台での移動販売だった。スーパーの駐車場にトラックを置き、移動販売・露店方式で家庭用雑貨を販売していた。「100円均一」で売るようになったのは、まったくの偶然。

 1972年、矢野商店を創業したばかりの博丈氏はある日、いつものように露店での移動販売に出かけようとしていた。しかし、雨が降ってきそうだったので、露店では商売できないため「今日はやめよう」と思った。ところが、急に晴れてきたのでトラックに商品を積んで出かけた。

 午前10時ごろに現地に到着すると、何人もお客さんが待ち構えていた。チラシをまいて宣伝していたからだ。「早くして」と急かされて慌てて荷物を下ろし、開店準備を始めた。すると、お客が勝手に段ボール箱を開け、商品を手にして聞いてくる。

「これ、なんぼ?」

 博丈氏は急いで伝票を探すが、商品数があまりに多く、なかなか見つからない。その時、思わず口に出た。

「100円でええ」

 それを聞いた、ほかの客も「これ、なんぼ?」と聞いてくる。「それも、100円でええ」。瞬く間に、商品が売れていった。「100円均一」商法が誕生した瞬間である。

 77年、株式会社大創産業として法人化。会社の規模はまだまだ小さいが、名前だけは大きなものにしようという意気込みから、「大きく創る」を意味する「大創」にした。87年「100円SHOPダイソー」の看板を掲げた。91年にチェーン展開を本格化し、2001年には台湾を皮切りに海外進出を開始した。

 今では、日本全国に3150店、海外26の国と地域に1900店のザ・ダイソーを展開するまでに成長した(17年10月末現在)。

●時価総額は老舗百貨店以上か

 大創産業は非上場のため財務諸表を公開していないが、売上高の概要は発表している。

 17年3月期の売上高は前年同期比6.3%増の4200億円。毎月10〜20店の新規出店を続け、年間130〜150店の出店を行ったことが寄与した。

 国内での1日の来店客数は約200万人、1店舗平均で634人強だ。年間で10億人が来店しているという。毎月500〜700アイテムの新商品を投入し、取り扱う商品の数は7万点を超える。全商品の90%以上、雑貨は100%、ダイソーのプライベートブランドだ。

 日本の総輸入量の約1%がダイソーの商品と推定され、輸入コンテナは毎日100本以上、年間で約3万7000本を海外から運ぶ。自社の物流センターだけでも年間4万本、取引先の物流センターを合わせると約10万本のコンテナに対応できる体制を整えている。

 100円ショップの市場は4社の寡占状態が強まっている。セリアの売上高は1453億円(17年3月期)、キャンドゥは688億円(17年11月期)、ワッツは474億円(17年8月期)。4社合計の売上高は6815億円で、ダイソーのシェアは61.6%と圧倒的に高い。ダイソーは100円ショップ業界のガリバーなのだ。ただ、利益は公表していないので不明である。

 ダイソーが上場すれば、どの程度の評価を得るのか。

 セリアの時価総額は3712億円(18年3月15日終値)で、高島屋(3636億円)、阪急・阪神百貨店のエイチ・ツー・オー リテイリング(2460億円)を上回る。市場関係者は老舗百貨店よりもセリアを将来性有望な投資先として評価しているということだ。

「100円ショップ」の代名詞であるダイソーが上場すれば、時価総額がセリアを上回ることは確実で、トラック1台で移動販売を始めた「100円男」矢野博丈氏は国内屈指の大富豪となるだろう。
(文=編集部)