永野芽郁「朝ドラヒロインをやるならこの子しかいない」縁で掴んだ“すずめ”という役

“インスタ映え”ポーズで話題の“指ハート”をキュートな笑顔で見せてくれた永野芽郁。4月2日からはじまるNHK連続テレビ小説『半分、青い。』のヒロインの座を勝ち取った彼女は、朝から何媒体もの取材と撮影に応じる。“朝ドラヒロイン”の注目度の高さを感じるシチュエーションだが、本人は疲れを見せることなく、さまざまな取材スタッフと会話を楽しんでいく。満面の笑顔とキラキラ輝く姿で取材陣を釘づけにしていく様子は、永野が次世代を担う女優であることを証明しているかのようだ。

撮影/平岩 享 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.
スタイリング/岡本純子(Afelia) ヘアメイク/吉田美幸(B★side)
デザイン/前原香織

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「無理じゃないかな」と思っていたオーディション

4月2日からはじまる、2018年度上半期のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』は、高度経済成長期の岐阜と東京を舞台に、永野さん演じるヒロイン・楡野鈴愛にれの・すずめが、さまざまな失敗や挫折を経て一大発明を成し遂げるまでを描きます。永野さんはオーディションでヒロインの座を手に入れましたが、オーディションで印象に残っていることは?
私、オーディションは本当に好きなんですよ。作品に入ってしまうと「この子はこういう役」っていうものがある程度決められているけど、オーディションは自分の発想で自由に表現できて。だから毎回自然体で臨んでいて、今回に関しても普段通りの力が抜けた状態で行っちゃって…(笑)。
名誉ある朝ドラヒロインのオーディションということで、気合が入っている方も多かったと思いますが。
さっきのような「おはようございま〜す」みたいな感じで。質問されたことに対しても「やる気があります!」みたいな返事ができたらいいのですが、思ったことは素直に答えてしまうタイプなので…。マネージャーさんやお母さんにも「まあ、無理じゃないかな…」って言っていたんです。だから受かったときは、まさかのまさかのまさかでした。
受かるとは思っていなかったから「まさか」と?
そうですね。決まったときはよくわからなかったです。「ヒロインはあなたです」と言われて、「どういうこと!?」と思っているあいだにも、たたみかけるように「受けてくれますか?」と。「ハイ!」と言ったけれど、本当に私が朝ドラヒロインなのか!?と、そのときはパニックでした。
ご自身ではどういった点が、鈴愛役の抜擢につながったと思いますか?
んー…何でしょうね…。運がよかったんだなと自分では思います。
運、ですか? 永野さんの実力あってこそだと感じますが…。
鈴愛という役名を聞いたとき、私がはじめて主演をさせていただいた映画(『ひるなかの流星』)で演じたのも“すずめ”という名前の子で、すごく縁を感じたんです。もし私が朝ドラヒロインをやれるならば、この子しかいないんだろうなというのはふわっとあって。でも受かったのは「まさか」だったので信じられなかったですけど、いろんな縁との巡り合わせなのかなって。ものすごく運がいいなと思いました。
朝ドラヒロインに決まったと聞いて、ご家族やご友人の反応は?
友人からは連絡の嵐で、「どういうこと!?」「朝ドラのヒロインってあのヒロイン!?」「芽郁が!?」みたいな連絡がたくさん来ました(笑)。母には発表会見の10分前に電話をかけて…。
昨年6月20日に行われた、ヒロイン発表会見ですね。
母に「今、どこにいると思う?」と聞いたら、その日は違う撮影をしていると思っていたみたいで「○○のスタジオでしょ?」と言われて。「今、NHKでこれから会見なんだよ」と言ったら何もしゃべらなくなっちゃったんです。「どうしたの?」と聞いたら、泣きながら「おめでとう」と言ってくれました。
それはうれしいですね。
私もそれにつられて泣いてしまって。少しは親孝行ができたかなぁって思いました。

ただのワガママな子にならないよう心がけた

「最初は信じられなかった」とのことですが、朝ドラヒロインというのを実感したのは?
クランクインして3週間くらい経った、岐阜でのロケが終わるくらいですかね。鈴愛と向き合ってみて「私、ヒロインなんだ…」と感じてきたというか。実感するまでに時間がかかりました。
今は撮影がはじまって3ヶ月ほど経ったと聞きました。撮影を進められていかがですか?(※取材が行われたのは2月上旬)
自分にしかできないなって思うくらい、鈴愛が馴染んできた気がします。最初は作り込んでやっている部分があったのかもしれないです。でも、今は現場に入ったら自然と鈴愛としてセリフが出てくるようになりました。監督から芝居の細かい指示をいただくことも多かったのですが、最近はあまり言われないので、馴染んできたのかな?って。
鈴愛は小学生の頃に病気で左耳を失聴してしまいます。片耳が聞こえないという難しい役ですよね。
そうですね…。撮影に入る前に、実際に片耳が聞こえない方からお話をうかがう機会があり、どれだけ聞こえなくて、危険が潜んでいるのかなど…想像だけではわからないことがたくさんあるんだなと実感しました。現場では耳栓をして…耳栓をするといっても音が完全に遮断されるわけではないのですが、少しでも耳が聞こえないことに慣れようと考えていました。
お芝居をするうえで難しさを感じることはありましたか?
左耳が聞こえないので、左側から話しかけられても右から振り返らなければいけないのですが、左側から振り返ってしまったりして…最初は戸惑うこともありました。でも、今はそれを自然と取り入れて演じることができていると思います。それは、私が鈴愛として生きられるようになってきたということなのかなと感じるんです。
鈴愛は左耳が聞こえませんが、雨音が片耳からしか聞こえないことに面白さを感じ、雨上がりの青空を見て「半分、青い。」とつぶやくユニークな感性の持ち主。明るい性格でどんなことにもポジティブに立ち向かっていきますね。
鈴愛はそこに存在しているだけで魅力的だなと思うくらい、ほかの人にはない感性を持っている子だと台本を読んでいて感じます。普通だったら思いつかないようなことを思いついてしまうのが鈴愛で、私にはない魅力を持っているので、私が演じることで彼女の魅力を失ってしまわないように努力しています。
どんなふうにお芝居をして、鈴愛の魅力を表現しようと考えていますか?
鈴愛のセリフはひとつひとつがとても考えさせられるというか、心にグサッとくるので、その言葉が軽くならないように気をつけています。いかに相手にしっかり届けるか、自分自身のなかに取り入れて言葉として出せるのかというのを考えないと、鈴愛がただのワガママで自由奔放な女の子になってしまうと思うんです。
「心にグサッとくる」という鈴愛のセリフは、北川悦吏子さんがお書きになる独特のセリフ回しだからこそでもあると思います。
本当に難しいです。セリフの独特のテンポ感が最初は全然つかめなくて…。北川さんの台本は独特な“間”の取り方が多いので、自分のなかでもチャレンジしながらやっています。

自信はないけど…出産シーンを演じられることが楽しみ

普段、鈴愛っぽくなってしまう瞬間などはありますか?
それが…(神妙な感じで)あるんですよね…。
それはどんなときに?
鈴愛は勢いがあって早口でとても声が大きいんですが、私もたまに声が大きくなってしまうときがあるんです。「何でー?」って急に大声で言ってしまったときはハッとしました。静かにしなきゃって我に返りましたね(笑)。
岐阜での撮影はいかがでしたか?
ロケに行く前に、岐阜の印象を聞かれて「緑が多そう」ってよくわからないことを言ってしまったので、岐阜のみなさんにどう思われているか心配だったのですが(笑)、地元の方たちの温かさを感じました。
どのような場面で感じたのですか?
実際に街でロケをしていても「頑張ってね」と言ってくれるんです。「撮影しているの、邪魔!」って言う人がいてもおかしくないのに、すごく優しく見守ってくださっていて。もちろん緑も多くて、空気もとても綺麗で、それでいてみなさん温かい方だったので、鈴愛がこういう性格になった理由がわかった気がしました。
気に入ったご当地グルメはありましたか?
あっ、3回くらい五平餅を食べました! 全部違うお店で…すごくおいしかったです。お団子も食べたし、栗きんとんも食べました。私はあまり甘すぎるものが得意じゃないんですけど、栗きんとんはちょうどいい甘さで、とってもおいしかったです。
朝ドラでは、鈴愛がいろんな経験をし、成長していく姿が描かれます。これからの撮影で楽しみなことはありますか?
楽しみなのは、出産シーンを演じられること。実際、今の私には未体験すぎてちゃんと演じられるかわからないし、できる自信もないんですが、先輩たちがたくさん現場にいらっしゃるので、その方々にいろいろとお話を聞いて演じていきたいです。
結婚、妊娠などはまだ想像しにくいですよね。
そうですね。でも、小さい子は大好きなので、自分の子どもにはたくさん愛情を注ぎたいと思います。そういった考えも活かしつつ、朝ドラで新婚生活みたいなものを今のうちに味わわせていただこうかなと(笑)。
少女期から結婚、妊娠…と、ヒロインの人生を描いていくのも朝ドラならではです。
今日(※取材日)も高校生の鈴愛と、24歳の鈴愛を演じるシーンがあったんです。先の台本がない状態で演じるっていうのも、朝ドラならではだなと感じています。たとえば映画だったら、ひとりの人生を描いた物語だとしても結末が台本に描かれているので想像をつけやすいですが、先が見えないなかで大人の鈴愛を演じるのはすごく難しい。でも、周りのみなさんが何とかしてくれるはずなので、引っ張ってもらえたらなと思っています。
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