「フルアクティブ」を並べ、大型化して利用する使い方も提案していく

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 経営不振が続くジャパンディスプレイ(JDI)への逆風が弱まりつつある。主要顧客の米アップルが有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)ディスプレーを採用したスマートフォンを投入したものの、売れ行きが当初予想よりも振るわず、足元では液晶パネルへの揺り戻しが起きている。JDIは経営再建までの時間的な猶予ができ、僥倖(ぎょうこう)を得た格好だ。この間に、成長資金の確保に向けた資本提携の交渉と、有機ELパネルの量産立ち上げを確実に進める必要がある。

 「有機ELの減速はメリット。(2017年8月の)中期経営計画策定時よりも状況はポジティブだ」―。JDIの大島輶宣最高財務責任者(CFO)は表情を緩ませる。

 17年にアップルが発売した有機EL搭載スマホ「iPhone(アイフォーン)X(テン)」は、経営不振が続いているJDIへの追い打ちになるとみられていた。

 しかし高価格などを理由に販売は低迷。当初、アップルは18年の新製品3モデル全てに有機ELを採用するとみられていたが、有機ELの不振を受け、1モデルは液晶になる見通しだ。JDIがパネル供給を手がけるとされる。こうしたアップルの動向は、他のスマホメーカーにも波及する可能性が高い。

 液晶への追い風が吹く中でJDIが切り札とするのは、4辺を超狭額縁とした液晶パネル「フルアクティブ=FA」だ。シャオミなど中国スマホメーカーへの採用が進み「販売は好調。18年はさらに顧客数が増え、売り上げに貢献する見通し」(大島CFO)という。

 スマホ向け液晶パネルを手がける茂原工場(千葉県茂原市)や、白山工場(石川県白山市)では、夏頃からの稼働率向上が見えてきた。17年4―12月期に60%ほどだった工場全体の稼働率は「18年4―12月期に90%程度まで向上する」(JDI幹部)と打ち明ける。

 JDIはFAで稼ぎつつ、19年に有機ELパネルの量産を開始し再建を目指す戦略を描く。ただ資金力に乏しいため、量産投資の資金は他人の財布に頼らざるを得ない。

資本提携交渉は膠着状態
 必然的に再建策の軸は資本提携になるが、交渉は膠着(こうちゃく)状態にある。3月末までにめどを付けるとしていたが、4月以降にずれ込む見通しだ。

 しかし足元では有機ELの不振という追い風を受け「時間はある」(JDI幹部)と、平静を保つ声も聞かれる。主力取引銀行や筆頭株主である産業革新機構の幹部も「まだ慌てる必要はない。より良い条件で着地させるべきだ」と、余裕の構えだ。

 18年3月期は売上高が前期比約20%減の7100億円程度になる見通しで、4期連続の当期赤字が確実視される。しかし構造改革を着実に進めた結果、100億円規模の特別損失の圧縮といった実績が見えており、こうしたことも悠然とした雰囲気を醸成する要因になっている。

 ただし時間軸はずれても、形状の自由度などのメリットから、有機ELシフトが進むとの見方は変わらない。みずほ証券の中根康夫シニアアナリストは「18―19年度は業績改善の大きなチャンスだが、ここで手を抜けば先はない」とクギを刺す。

 調査会社、ディスプレイ・サプライチェーン・コンサルティングの田村喜男アジア代表も「液晶需要が安定的に続く保証はなく、中国勢も技術面で追い付いてきている」と指摘する。

 加えて売り上げに占めるアップル向けの割合は、15年3月期に41・8%だったのが、17年3月期には53・8%まで上昇した。アップルが方針を変えれば、業績が振り回される状況は、より深刻になっている。車載向けや新規事業を育成し、スマホ事業に左右されにくい体質に変える必要がある。

(文=政年佐貴恵)