利用した電力のうち、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの内訳がわかるサービスにもブロックチェーン技術が利用されている


 「ブロックチェーン」は、主に仮想通貨を支える技術として知られているが、金融とはまったく別の領域でブロックチェーンを応用する取り組みが動きはじめている。

 ブロックチェーンは、分散情報処理技術の一つである。「分散型台帳技術」とも呼ばれ、ある程度まとまった件数の処理(トランザクション)の履歴を「ブロック」と呼ぶ台帳に記録し、その台帳をネットワーク上に分散した複数のコンピュータが持ち合って管理する。新たな台帳を作成する際、それまでの履歴を記録した台帳の内容を完全に引き継ぎながら、数珠つなぎで台帳を連結していく。

 一部のコンピュータに障害が発生しても他のコンピュータに台帳が残るので、正常に処理を継続できる。また、台帳の内容を次々と引き継ぎ、たくさんのコンピュータが台帳間の整合性を保った状態で分散管理するため、データの改ざんは事実上不可能だとされる。このようなブロックチェーンの利点は、仮想通貨以外にも幅広く活用できるもので、数多くの企業が実用化に向けて実証実験やサービス開始に乗り出している。

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公正で透明性の高い投票システムが可能に

 ソフト開発のインフォテリアは投票システムにブロックチェーン技術を導入しようとしている。同社は2017年6月の定時株主総会で、ブロックチェーンを使った株主投票システムを用意。定款の一部変更と取締役選任の議案について、実験に参加した株主と模擬株主が、各々の議決権を行使して賛否を投票する実証実験を実施した。

 あくまで実験という位置付けなので投票結果を議決に反映しなかったが、いったん記録した情報の改ざんが難しいというブロックチェーンの技術的な特徴を生かし、総会主催者であるインフォテリアでもデータを改ざんできない公正かつ高い透明性を備えた投票システムの確立が可能なことが確認できたという。投票期間を設けて24時間投票を受け付ける、票数をリアルタイムで集計する、などが可能な利点もあり、将来的には上場企業の株主総会の投票だけでなく、国政選挙や地方選挙への展開も見込んでいる。

誤配送や商品紛失を防ぐ

 ファッションビル大手パルコが2017年5月末から6月上旬にかけて、セゾン情報システムズなどと共同で実施したのが、本人認証や施錠・解錠をブロックチェーンでコントロールする宅配ボックスの実証実験である。パルコが運営するネット通販の商品受け渡しを想定したものだ。

図1 パルコ、セゾン情報システムズなどが実施したブロックチェーンの実証実験の概要(プレスリリースより)


 宅配業者などが宅配ボックスに商品を納めて施錠すると、受取人の情報がブロックチェーンに記録される。その後、記録された「本人」だけが宅配ボックスを解錠できる、という仕組みで、誤配送や盗難による商品の紛失を防ぐことができる。注文から宅配ボックスへの収納・施錠、解錠・受け渡しまで一連の処理の情報を、改ざんが困難なブロックチェーンに記録することで、取引の正確性や安全性を高めやすくなると期待している。

消費した電力の発電元を利用者が確認できる

 ブロックチェーンを活用した新たな挑戦として目を引くのは、小売電気事業者(新電力)であるみんな電力の取り組みだ。既存の手続きやビジネスにブロックチェーンを適用した上述の例と異なり、従来できなかったことをブロックチェーンで実現する。具体的には、電気に“色付け”して、再生可能エネルギーの取引に役立てようとしている。

 多くの新電力が新規の契約獲得を目指して料金競争を繰り広げる中、みんな電力は「価格競争終了宣言」を打ち出すなど異彩を放っている。同社は「日本一透明な電気料金」をうたい、電気料金の根拠となる基本料金や従量料金の内訳を、自社のWebサイトで明らかにしている。

 そんなユニークな戦略を採るみんな電力が今、急ピッチで開発を進めているのが、ブロックチェーンで仮想的に電気に色付けする電力取引プラットフォーム「ENECTION 2.0」である。

 当たり前のことだが、電力会社からオフィスや工場、家庭に届く電気に色はない。つまり、電線を通って送られてくる電気が火力発電所のものか、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー(再エネ)電源に由来するものかは、区別できない。それを区別できるようにするのがENECTION 2.0だ。

 ENECTION 2.0では、発電事業者が発電した電気の量を証明する電子証書「電気トークン」を発行する。たとえば50kWhの電気に対し、50単位分の電気トークンを発行するイメージだ。

 発行した電気トークンは、みんな電力が用意するバーチャルな電力取引所で発電事業者と需要家が取引し、ブロックチェーンに記録する。その記録を基に電気トークンの取引履歴をたどっていくと、どの発電事業者の電気かと、最終的な行き先(需要家)が1対1で特定できるようになる仕組みである。

 みんな電力はENECTION 2.0を活用したサービスの第1弾として、環境意識が高い企業や地方自治体向けに、再生可能エネルギー(再エネ)電源由来の電気を供給する発電事業者と需要家を1対1で紐づける「電源トラッキング」を、2018年秋にも始める。発電事業者の電源と、オフィスや工場、店舗のスマートメーターからそれぞれ発電量と使用量の実績データを取り込む。そして企業や自治体が実際に使った電気の量に相当する電気トークンを、発電事業者から自動で振り分ける。

 再エネ電源に由来する電気が、電線の中で他の電源の電気と一緒になってオフィスや店舗に届けられることには変わりがない。しかし、みんな電力がブロックチェーンに記録された電気トークンの取引履歴に基づいてENECTION 2.0で発行する月間の取引実績を参照することで、企業や自治体は再エネの使用状況を仮想的に把握できる。

企業と個人が余剰電力を直接取引できるサービスも

 2019年にはENECTION 2.0のサービス第2弾として、再エネ電源由来の余剰電力シェアリングサービスを計画している。家庭用太陽光発電の固定価格買い取り制度(FIT)が2019年度末に終了し、約50万世帯が余剰電力の価格を自ら決めて売り先を探さなければならなくなる見通しだ。みんな電力はFIT期限切れになる電気に対して、ENECTION 2.0で「みんでんトークン(仮称)」を発行。企業と個人が余剰電力を直接取引できるようにする考えだ。

図2 みんな電力が2019年に提供を計画している余剰電力シェアリングサービスのイメージ(プレスリリースより)


 翌2020年を想定した第3弾では、海外で脚光を浴び始めている「バーチャルPPA(Power Purchase Agreement)」と呼ぶサービスの提供を視野に入れている。発電事業者の再エネ電源に投資した企業へ、ENECTION 2.0で「電源トークン(仮称)」を発行。企業は当該電源から、電源トークンに見合う量の電気を中長期的に使用する権利を得る。発電事業者は設備投資の資金調達がやりやすくなり、企業は環境負荷低減に向けた取り組みを促進しやすくなる。

筆者:栗原 雅