採用と就活の分野でもAIは活躍できるか

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 日本の産業界は人材不足が喫緊の課題になっている。その中で注目されるのが、企業の採用活動と学生の就職活動への本格的な人工知能(AI)の導入だ。検討している企業も増えており、AIによる就職活動と採用活動によってどんなことが想定されるか。企業の人事担当者の業務改善や学生の就職活動を支援する識者に聞いた。

リクルートキャリア就職みらい研究所・岡崎仁美所長
 ―採用活動においてAIの導入が議論されています。
 「従業員が5000人以上の大手企業は検討している。具体的なコスト削減効果などは明確になっていないが、普及すれば書類選考など採用担当者の負荷を軽減できるだろう」

 ―AIが面接まで行い、企業が求める学生を採用できるか。
 「採用の答えをどう設定するかが肝心だ。AIはこれまでの採用実績など膨大なデータベースから今まで採用した人物像を“答え”と判断する。そのため、新事業の立ち上げに必要な人材など採用実績がない人物を取りたい場合は、なにを答えとするかが難しい。現状は内定を辞退する可能性が低い人材や現時点では活躍できそうな人材を発掘することはできるだろう」

 ―学生側はAI導入に後ろ向きな声もあります。なぜでしょうか。
 「まず『変なバグがあるのではないか』などの意見があり、AIの技術水準に信頼がない。画像認識や音声認識技術が高まっているものの、表情や声のトーンが分からないだろうという見方が一般的だ。また、機械に判断されたくないなどの心理的な嫌悪感もあるようだ」

 「一方で『人間と違って公平に判断してくれる』、『圧迫面接が減りそう』など少数だが前向きな意見もある。AIを導入する企業は活用方法や具体的な効果を明示することで安心感を形成する必要がある」

 ―AIが参照するデータを増やせば、精度が高まるのでは。
 「確かに精度は高まるが、参照するデータの扱いが難しい。学生の学校成績や資格などのデータのほか、先輩社員などの入社履歴、企業側のニーズが分かるデータベースなど、学生側と企業側の情報を組み合わせなければいけない。互いに情報を開示し、共有すれば可能性はある。だが、公開・共有するメリットが少ない。加えて、教育の仕組みとセットの議論になる。なぜなら、学生の情報は進学のタイミングなどで分断されがちだ。学生の教育情報を就職時まで伝達する必要がある」

ディスコ・新留正朗社長
 ―人工知能(AI)を活用した企業の採用活動が話題になっています。企業が選考にAIを導入するメリットは。
 「選考期間の短期化や人手不足の影響で採用担当者の負荷が大きくなっている一方で、企業は『働き方改革』を推進しており、担当者は板挟みの状況だ。書類選考の一部でもAI化できれば、単純な処理業務を削減できる」

 ―AIの活用は、これまで人材の採用で使われてきた検索機能や人材推薦サービスなどと何が違いますか。
 「まだその違いは明確になっていない。あらゆるデータを解析できるAIも登場しているため、高コストを支払えば、人間ではできなかった人材採用につながる可能性はある。ただ、一般的なAIはあくまで道具であり、高精度な人材推薦サービスの一つだ」

 ―一方で学生側の就職活動におけるAIの活用は進んでいくとみられます。
 「正確な適性判断を行うツールにはなり得る。幼少時の個人情報なども用いれば精度も高まっていくはずだ。だが、その適性結果が本人の望む適性と一致しない場合があるため、参考情報として使うべきだろう。(AIの)使い方も含めて議論する必要はある」

 ―だが現状、やりたいことが定まらない学生も多いと思います。将来はAIが仕事を選んでくれる時代が来るのではないでしょうか。
 「否定はしない。今後、技術的にも高性能のAIが登場し、学生もそれが当たり前とする“AIネーティブ”世代が多数を占めるだろう。だがAIに就職先を委ねることは恐ろしいことだと個人的には思っている」

 ―なぜですか。
 「正確な適性や就職先を判断するためには、幼少時から適性や学校の成績などを継続的にトレースすることになるからだ。一度の失敗が、その後の人生に大きく影響する世界になり、将来の努力で能力差を縮められる余地がなくなってしまう。高寿命を見据える『人生100年時代』など言われているが、逆行する考え方だ。過去の実績だけでなく、将来の可能性や変動要素を価値として捉えるべきであり、AIがそうした部分を的確に分析することは今はできない」

(聞き手=渡辺光太)