スマホを片手にゴルフ中継を楽しむ時代が来るかもしれません。写真はイメージ(写真:wavebreakmedia / PIXTA)

無料で楽しめるインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」が、ゴルフのコンテンツを手にした。それが、石川遼や池田勇太らスター選手がいる男子レギュラーツアーでも、華やかで人気のある女子ツアーでもない。男子のレギュラーツアーの下部、プロ野球でいうと2軍のツアーの年間特別スポンサーになった。

このツアー、昨年までは「チャレンジトーナメント」といわれ、年間12試合程度が行われてきた。このツアーで賞金ランク上位になると、レギュラーツアーへの出場権が与えられる。若手にとっての「登竜門」となるツアーだった。


名称も変更され3月30日から1試合目が開催となる(写真:(C)AbemaTV)

今季から「AbemaTVツアー」と名称が変更される。今年開催される12試合のすべてをインターネットで生中継するという。ツアーを主管する日本ゴルフツアー機構(JGTO)はもちろん、ゴルフ界にとっては画期的な試みになる。

AbemaTVツアーは何が違うのか

3月23日から開催された「ジャパン・ゴルフフェア」の会場の一角で「ゴルフを普及するための中継スタイル」という討論会が行われた。そこで、今回のAbemaTVツアーが話題になった。

何が画期的なのだろうか。

これまで、ゴルフ中継というのは、このコラムでも時折指摘してきたように、「地上波の録画中継」というのが通常だった。サッカーなどのように時間が決まっていないので、放送枠の時間内で収めるには録画の必要があり、大会スポンサーのために表彰式なども盛り込むためでもある。

最近では生中継も多くなってきているとはいえ、まだまだ録画が多い。かつては優勝者がわからないまま録画中継を見られたが、いまはネットニュースがいち早く優勝者を速報するので、優勝者がわかった上でテレビ観戦になる。

スポーツ中継は、生中継でこそ感情移入できるし、応援のし甲斐もある。2月の平昌冬季オリンピックであれだけカーリングが盛り上がったのも、ルールはよくわからないけれども、生中継で解説に耳を傾けながら一喜一憂して多くの人が見守ったからであり、結果がわからなかったからだ。「もぐもぐタイム」や「そだねー」が話題になったのも、生の声が聞こえてきたからでもある。

これまでもインターネットで1番ホールをずっと映していることや、大会個々でネット中継をすることはあったが、これは地上波の放送を邪魔しないという制限があった。今度は、インターネット中継のみなので、自由に映像を作れることになる。

選手を知ってもらうための演出

討論会に出席したAbemaTVの古川雄太編成スポーツ局部長は「中継ホールは1番、10番など3ホールぐらいになるが、プラス優勝争いなどに密着カメラを入れて、生の真剣勝負を伝えたい」と話した。

ただ、映し出されるのは、下部ツアーなので顔も経歴もわからないような選手ばかりなので、大丈夫だろうか。

「その人の特徴や人柄などを事前に取材しておいて、ゴルフや人となりを知ってもらうために、テロップ展開したい」という。また、双方向性も生かし、コメント機能をつけて、視聴者同士でやり取りして楽しめるようにもする。また、ゴルフをやっていない人や、始めたばかりの人のための視点も取り入れていくという。

これまでのテレビ中継では優勝争いは別として、それ以外は顔も経歴もある程度わかっている有名選手だけ追いかけるのがほとんどだった。「知っている選手」を見せるのではなく、「選手を知ってもらうために」見せるというのも斬新ではある。ほとんど顔を映してもらえないレギュラーツアーの大半の選手より、AbemaTVツアーの選手のほうがみんな知っている、という状況にもなりかねない。

JGTOでは、AbemaTVツアー充実のために、主催者に交渉して12試合の賞金総額をすべて1500万円以上とし、ばらばらだった開催期間も1試合3日間にそろえた。青木功JGTO会長も1月末のスポンサー契約発表の時に「新しい試みを一緒にやっていきたい」と全面協力の姿勢を見せている。

AbemaTVにとって、魅力的なコンテンツになるのだろうか。

1月時点で同社の社長であり、親会社のサイバーエージェントの藤田晋社長は「1日中放送できるので、長尺のコンテンツになる。将棋のコンテンツも藤井聡太がでてきて価値が上がった。若い選手の中から誰かが出てきて価値が上がれば。1年間で結果が出るとは思わないので、長く続けて価値を育てていきたい」と話していた。

ゴルフをインターネットで「見られる」コンテンツに

地上波のテレビ中継は、録画放送のほかにも、スター選手不在や外国人選手の優勝が多いこともあるのか、テレビ視聴率は年々下がって来ている。昨年は男子レギュラーツアーが最終日(関東)平均3.6%、女子ツアーが同4.7%だった。

プロ野球の巨人戦でも視聴率が悪くなっていまや地上波ではなくBSやCS放送に移っている。ゴルフの場合、そんな視聴率でもまだ製作費などをペイできる広告収入があるということなのだろうが、AbemaTVが成功すれば、ゴルフはインターネット中継で見る時代も来るかもしれない。

AbemaTVの収入も広告になる。どのぐらいの視聴を目標にするのだろう。

古川部長は「黒字化はまだ見えないが、見られていないコンテンツであるゴルフを見られるようにしていきたい。K-1では300万視聴があった。数年かけてその規模ぐらいには」という。

放送の仕方の工夫や、選手のパフォーマンス次第では、魅力的なコンテンツになる可能性にかけているようだ。

その開幕戦が30日から始まる「Novil Cup」。大きな話題を作った女子ツアーの2009年賞金女王、横峯さくらが自身としては初めて男子のトーナメントに参戦する。

距離的に女子にとっては厳しいが「ゴルフ界の活性化に貢献できれば。出るからには優勝目指して頑張ります」とコメントしている。男子に交じって戦う横峯の姿は、インターネットでしか見られない。