目印は「カレーバカの店」と書かれた大きな看板。のれんは中央から顔を出して記念撮影もできる。ちなみに顔を出しているのは店主の松原さん

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子供の頃に描いたそのままに、夢を叶えられる大人が世界にどれだけいるだろう。筆者が幼稚園の卒園アルバムに描いた夢は「メロン屋さん」だ。1年に2、3回、熱を出した時と誕生日にしか食べられなかったメロン。大好きなメロンを並べ、メロンの売り上げでメロンを買い、思う存分高級メロンを食べてみたかった。

ほぼ毎日、カレーを食べる店主の松原さん

こんな謎の商売をする夢はさておき、「好きなものをお腹いっぱい食べてみたい」「好きなものだけに囲まれて暮らしたい」と子供の頃に思ったことはないだろうか? 札幌市清田区にある「トムトムキキル」は、そんな子供時代の理想をそのまま詰め込んだカレー屋さん。スープカレーとルーカレー、両方楽しめる店だ。

店主の松原崇弘さんは自らを「カレーバカ」と名乗るほど、根っからのカレー好き。子供の頃からの夢は「大好きなカレーを毎日お腹いっぱい食べること」。これまたカレー好きの愛妻との恋人時代のデートはカレーやスープカレー店巡りが中心だったというし、店を持った今でも「試食とか味見とかそんなんじゃなく」ほぼ毎日、カレーを食べる。

そして、自ら「おいしい」と思うカレーだけをお店に出す。個性的なメニューの数々はカレー好きならではの品ばかり。そのひとつが、同店の「朝カレー定食」。朝9時から11時までの数量限定メニューで、3種のカレーと数種のアチャール(インドの漬物)などを1プレートで味わえる内容だ。

季節や仕入れ状況などによってカレーの種類は変更。辛さは「辛味なし、中辛、辛口、大辛」、ライスは「少なめ、ふつう、多め、大盛り」から選べる。「朝から本格カレーを」というアイディアは、「まずは自分が食べたいと思うから」と話す松原さん。地元客やカレーマニアなど、さまざまな人がこの「朝カレー」を楽しみに訪れる。

また、「ロースカツのスープカレー」もユニーク。ニンジン、キクラゲ、ブロッコリー、レンコン、カイワレなど野菜たっぷりのスープカレーと、ライスの上に三元豚のロースカツがてんこ盛りの一品だ。

おすすめの食べ方を聞くと「ルートッピング」とのこと。「スープカレーを注文して、カレールーをトッピングするとはどういうこと?」と一瞬、パニックに陥るかもしれない。しかし! これはぜひ試してほしい。たっぷりのルーをかけたカツカレーライスとスープカレー。主演が2人いるドラマのように、お互いの良さ(旨み)を引き出してくれるのだ。

数々のユニークなメニューは、ベースとなる自慢のスープやルーとの相性を考えながら生まれる。スープカレーのスープは、丸鶏と鶏ガラ、牛骨にスパイス、香味野菜、ハーブを丸一日煮込んだ濃厚なスープに、和食材を中心とした出汁から取ったスープを組み合わせたオリジナルだ。

スパイスは、松原さん自ら挽いて調合する。ルーは、食材の形がわからなくなるまでじっくり煮込んだ大量の食材に、挽きたてスパイスをプラス。もちろん、どちらも「店主のカレー愛」というスパイスを効かせるのもポイントだ。

ところで、店名の「トムトムキキル」とはどのような意味なのか。インドで使われている言葉やカレーマニアにしかわからないカレー用語なのかと思って聞いてみると、意外にもアイヌ語。「蛍」の意味だという。

「スープカレーは札幌、つまりは北海道独自に発展した食文化。店名にも“北海道らしさ”を込めたんです。あと、口に出してみると、なんとも不思議な語感も良いでしょ」と店主の松原さん。

札幌中心部からは少し外れた郊外の住宅街。その一角で、まるで蛍のようにピカピカ光る店。それが「トムトムキキル」だ。童心に返りたい時、夢を忘れそうになる時。単に「お腹すいたな」「今日はカレー食べよう」という気分の時でも、ぜひ「カレーバカ」になって、お腹いっぱいカレー愛のつまったカレーを味わってほしい。

トムトムキキル ■住所:札幌市清田区清田3-2-14-15 ■電話:011・881・6280 ■時間:9:00〜17:00(LO16:30) ■休み:日曜、第1月曜 ■席数:24席(禁煙)(北海道ウォーカー・高橋結香)