2018年3月18日(日)に発生したUberの自動運転カーが女性をはねて死亡させた事故により、Uberは自動運転カーの公道での試験走行を中止したと発表しました。そして2018年3月27日(火)にアリゾナ州のダグ・デューシー州知事は、州内でUberの自動運転カーの走行許可を取消しにする発表を行いました。しかし、ガーディアン紙によると、Uberは2016年12月から自動運転カーのアリゾナ州での試験走行を開始したと発表していましたが、実際は発表より前の2016年8月から秘密裏に走行試験を行っていたことが明らかになりました。

Exclusive: Arizona governor and Uber kept self-driving program secret, emails reveal | Technology | The Guardian

https://www.theguardian.com/technology/2018/mar/28/uber-arizona-secret-self-driving-program-governor-doug-ducey

この事実は、ガーディアン紙による公文書の開示要求により、Uberとデューシー州知事の間で交わされた電子メールのやり取りの存在で明らかにされました。

アリゾナ州はUberと常に蜜月関係にあったわけではなく、2009年1月から2015年1月まで州知事だったジャン・ブリュワー氏は「従来のタクシー会社に適用していた保健規則からUberなどのライドシェアリングサービスを除外する」という法律にサインせず、ライドシェアリングサービスに厳しい目を向けていました。

一方で、Uberはデューシー氏に対して州知事になる以前の2007年から接近を試みていて、事務所スタッフにライドシェアリングサービスが雇用とお金をもたらすことを示唆するメールを送っていたことがわかっています。

デューシー氏は2014年に行われた州知事選挙で勝利して2015年1月に着任。Uberからのアプローチを受けてライドシェアリングサービスに興味を持っていたデューシー氏は2015年4月、ライドシェアリングサービスを合法化する法案を実現させました。時には、自ら職員との交渉のパイプ役になったり、Uberの要望に応じてイベントでUberTシャツを着用したり、Uberをアピールするようなツイートをしたりすることもあったとのこと。



2015年6月にUberはアリゾナ州フェニックスに300人の雇用を生み出すサポートセンターを開設。その2カ月後、デューシー氏とUberはオプティカル・サイエンシズ大学に2万5000ドル(約270万円)の寄付を行うという共同記者会見を実施しました。そして同日、デューシー氏は、運転手が緊急事態に陥ったときに運転を引き継ぐ自動運転カーの試験走行を認める行政命令を出しています。



これを受けてUberは自動運転カーの試験走行を2016年12月から正式に開始することになるのですが、実はそれより4カ月早く、2016年8月の時点から試験走行を始めていました。このことは、2016年8月19日にUberから知事補佐官のダニー・セイデン氏に送られた「自動運転カーの試験走行を開始する」というメールが見つかったことで明らかになりました。

Uberは、メールを送った理由を「運転手が乗っているため問題はないはずだが、念のため報告した」と説明し、8月に試験走行を始めたことを公表しなかった点について「当時はペンシルベニア州での自動運転カーの試験走行に注力していたため、公表しなかった」と釈明していますが、試験走行開始を報告したセイデン氏に対して「フェニックスの警察には注意喚起すべきなので、関係者を紹介して欲しい」と連絡を取っていたことがわかっています。

州知事側はUberの試験走行について連絡を受けながら公表しなかった点について「すでに自動運転カーの試験走行を認める行政命令を出していたため、公表する義務はなかった」と説明しています。