コンデナストブリテン(Condé Nast Britain)のファッション誌であるグラマー(Glamour)は、ほぼデジタルのみに絞ったブランドとして新たに出発すべく、コンテンツと商業戦略の見直しを行った。同誌は昨年10月に、紙媒体での雑誌は年間で2冊しか発行しない計画を発表している。グラマーはこの抜本的な戦略変更に向けて何カ月もかけて準備をしており、同誌のメンバーを55人から40人に削減するとともに、5人体制の動画チームを立ち上げ、編集と配信の方向性について見直しを図っている。

ニュースからの脱却

グラマーUK(Glamour UK)で新たに最高コンテンツ責任者に指名されたデボラ・ジョセフ氏によると、同誌のデジタルコンテンツは、これまでのニュース速報やテキストベースの商品や美容品のレビュー、ハウツーものの動画を数多く上げていくスタイルから、たとえば整形手術や卵巣がん、女性囚人の刑務所生活など、これまで同誌が避けてきたような重いテーマについてより掘り下げていくスタイルへと移行するという。同誌の目標は、エンゲージメント率の高いロイヤルオーディエンスを育て、ブランドとしてあらゆるデジタルプラットフォームで強いアイデンティティを確立することだ。美容や文化、ファッションは今後も同誌にとって重要なテーマであり続ける。新商品を試す有名人たちにスポットライトを当てる記事も、グラマーにとってスイートスポットであり、今後も残ることになる。だがあくまで、今後の目標はこうした話題にもとづいて、掘り下げた記事を生みだすことだ。ジョセフ氏は次のように語る。「ニュースコンテンツだけでなく、質の高いコンテンツを追い求めたい。速報性のあるニュースを流せばトラフィックこそ増えるが、ロイヤルオーディエンスを育てるためには、詳細に掘り下げたコンテンツのほうが効果的だ」。

 

これまでのグラマーUKは、ニュースに力を入れていた

 

グラマーのニュースを中心とするサイトからの移行にあたり、同誌のウェブサイトとモバイルアプリもまた、同ブランドのトーンやスタイルがにじみ出るようなものに再設計された。以前は最新のニュースに重きを置いていたサイトも、ミレニアルピンクを色調とした背景、そして視覚的インパクトを重視したサイトデザインになった。

 

新しいサイトは、あらゆるプラットフォームを通じてより視覚的なアイデンティティのはっきりしたデザインになった

 

ソーシャルエージェンシーのウィ・アー・ソーシャル(We Are Social)で編集長をつとめるチャーリー・コットレル氏は、「速さと量を重視した消耗品的なコンテンツよりも、長期的なコンテンツを重視するほうが賢いやり方だ」と指摘し、次のように分析する。「パブリッシャーは広告収益が減ると、ページ数を増やそうとするのが一般的だ。だが量より質に投資する方がオーディエンスからすると魅力もあるし、信頼性も高い」。今後は、メンタルヘルスや美容についての科学を取り上げた記事や動画が同誌にとって主要な分野となる。グラマーUKは、作成する動画の数をこれまでの倍に増やすとしている。また5人体制の動画チームが新たに立ち上げられ、コンデナストのロンドンオフィス内に新設されたスタジオを各誌で共有するという。狙いは、長期的にいくつかのエピソードに分かれた動画シリーズを作り、グラマーUKやYouTubeで配信することだ。たとえば「ヘイ・イッツ・オーケー(Hey It's OK)」など、ポッドキャスト化された印刷フォーマットは動画へと移行する。そしてYouTubeで長期シリーズとして配信されるか、インスタグラム(Instagram)のようなソーシャルプラットフォーム向けに再編集されることとなる。

リーチよりロイヤルオーディエンスを優先

ソーシャルプラットフォーム向けにエピソードに分かれた動画を作成し、視聴者を引き込むことを重視する。グラマーUKによると、1月1日以降、とりわけインスタグラムの「ストーリー」は、同誌への参照トラフィックが25%も増加しているという。グラマーUKの動画チームはインスタグラムの週刊のストーリーをふたつ作成している。毎週月曜日に発行される「グラムドロップ(The Glam Drop)」では、美容業界のライターが毎週届けられた試供品について語る。そして「ウィークリーエディット(Weekly Edit)」では、その週の特集について詳細を明かす。グラマーUKでパブリッシングディレクターを務めるカミラ・ニューマン氏は、同誌はこれまであまりインスタグラムを活用できていなかったと考えており、「インスタグラムをさらに活用できるように、定期的にエピソードを公開していくシリーズを集中的に作っていくつもりだ」と述べた。Facebookがアルゴリズムを変更して以降、グラマーUKのFacebookからの参照トラフィックは変わっていないとジョセフ氏。だがその結果、同誌はFacebookへの投稿戦略を変化させるに至ったという。3月第2週に、グラマーUKはコンテンツに対する読者のエンゲージメント率を高めるためのFacebookグループを立ち上げる。これについてジョセフ氏は、「Facebook上で美容に関して話し合える場所がほしい」と語る。このFacebookグループによって、同ブランドが会員向けに宣伝用に無料で試供品を提供する「グラマー・ビューティ・クラブ(Glamour Beauty Club)」をはじめとする同誌の商品への関心を高めることも可能だ。同クラブは過去半年で会員数を10万人増やしており、グラマーUKはとあるオンライン小売ブランドと商品販売のためのeコマース協定をどのような形で結ぶかを協議している。ただし、ニューマン氏は同誌の主要な収益源をeコマースが担うようになることはないと強調し、「ビューティ・クラブの目的は、ロイヤルカスタマーをベースとしたコミュニティを作ることであり、彼らにフルサービスを提供することだ」と語った。グラマーUKにとってもっとも大きな変化は、編集チームと営業チームを完全に統合することだろう。これにより編集者が直接、ブランドやエージェンシーにコンテンツのアイデアを売り込むようになる。グラマーUKの収益の6割はブランデッドコンテンツからの収益となっている。そして、この統合の目的は、チームをほぼ完全にデジタルコンテンツの作成に集中させることで、すべての編集リソースをブランデッドコンテンツの成長に結びつけることだ。「昨年、コンデナスト、特にヴォーグ(VOGUE)は一気に変化した」と語るのはグループ・エム(Group M)のエージェンシー、エッセンス(Essence)でヨーロッパ、中東、アフリカのコンテンツおよびイノベーション部門のバイスプレジデントを務めるローラ・ウェイド氏だ。同氏は次のように語った。「コンデナストのブランドは高い名声を誇る。だが、ことブランデッドコンテンツのパートナーを選ぼうとすると、我々を手ぐすね引いて待っているデジタル企業の編集チームは実に多い。コンデナストはそれ(ブランドとしての名声や地位)だけではダメだと気づいて、私たちとともに新しいやり方を試そうとしているように思える」。Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)Images courtesy of Condé Nast