佐川氏が受け手に回っているときの首の角度も注目。少なくとも見た目に不真面目さが薄れてしまう。(写真/時事通信)

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◆佐川氏の素振りに見る「聞き手が気持ちよくなってしまう技」

 3月27日、佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問が行われた。中継を見ていると、小刻みに頷く様と、「この方、毛髪の量すげえなあ」というのが個人的に強く印象に残ったのだが、毛髪はともかく、「決定的な失言はたぶん出てこないだろうなあ」というのは多くの方が思ったはずだ。

 セミプロギャンブラーとして、さまざまなギャンブルの予想を行っている筆者は、公営ギャンブルの予想をするとき、選手が折に触れて出すコメントを割と重視している。とりわけ競輪については作戦が結果に与える影響が大きいため特に重視することになる。G1などの前日にニコ生での展望放送をする中でも、公式発表される共同記者会見でのインタビューを読み上げて検証する、ということを必ずやっている。なぜなら、言葉の端々に「意図」や「想い」が隠れている場合がよくあるからだ。

 佐川氏の話し方において特徴的だった「首を軽く斜めにしている」「小刻みに頷くような動きをする」という2点は、言葉に慣れている人が見せる特徴の一つだ。選手でも、こういうタイプの選手は少ないが、作戦のキモを読み切るのは非常に難しい。

「首を軽く斜めにしている」というのは「聞いている」というアピールには最適な動きとなる。耳を少し向ける動きをされて、聞き手側(これは質問者のみではなく中継を見る全ての人)が悪い印象を持つことはない。

 もちろん、首の角度が深すぎるとわざとらしさが爆発してしまうため逆効果だ。極端なダメな例だと、あの野々村議員の弁明会見での耳に手を当ててしまうアレになる(もちろん耳の前に手というコンボが決め手だが)。

◆小刻みな頷きには「マイペースを維持する」効果がある

「小刻みに頷くような動きをする」のは、もちろん話を聞いている感が出るという効果もあるが、それ以上に「自分のペースを崩さない」点で優秀だ。言うべきこと、言わないつもりのことを事前に決めていたとしても人間はペースを崩すと「こぼしてしまう」ものなのだが、誰に何を言われても、なにか一つ守られているペースがあると崩れにくくなる。

 だが、単純に小刻みに頷けば良い訳ではない。意識しすぎて頻度や大きさが変わってしまっては、むしろペースを崩すし、仮に動揺しそうな質問が来たとして、止まったりしてはいけない。その点、この頷き技は経験を多く積まないと寧ろ失点を生むという高度な技だと言える。推測だが、修羅場を何度も経験していないとできない。

 逆に言えば、普通の人は「小刻みな頷きが急に止まった」という部分に緊張が見える、というわけで、これは私の競輪予想でもインタビューが動画公開されている場合によく注意している部分だったりする。

 この点においても、佐川氏は「鉄壁の守り」で、事前に決めていた「言うべきこと、言わないつもりのこと」を守りきったと言える。

◆失点を見つけるのは大概はたやすい

 もちろん、言葉にも失点のヒントはいくつもある。

 同じ話を繰り返す、というのは典型的な動揺の傾向だが、緊張によって生じる場合もあるのが注意だ。答弁やインタビューでのスキルが元々低い人の場合、ついつい突っ込みたくなるような失言も、原因が緊張からであったりするので、後日よくよく調べたらただの緊張による言い間違えだった、という話になりがちだ。

 繰り返しグセのある人の話からウソや失点を見極めるには、別な変化を探すことだ。それは声質だったり、言い回しの微妙な変化だったりする。逆に、それまで出てこなかった難しい単語が出てくるパターンも要注意だ。

 そこで言えば、佐川氏が唯一といっていい部分で声質が変わったのは、近畿財務局の職員が自殺したことに対する答弁の部分だっただろう。震える声質となり「本省理財局と近畿財務局との間で、もし仮に、私は本当の事実関係は承知しないが、仮に連絡担当の職員であって、決裁文書の書き換えにつながることであれば、本当に申し訳ないことだと思う」と答えた部分は感情のあるコメントになっていた。さすがに人の死に触れる話になったときには心が動いたということだろう。失点というよりも、人間としての素直な声の変化だったのかもしれない。

◆もしも佐川前長官が競輪選手でコメント予想するとしたら

 佐川前長官のような競輪選手が実際にいたとするならば、ギャンブラーからすれば予想の難易度は格段に上がる。本人のインタビューからレースに向けての作戦を読み切るのは非常に難しい。ただし、競輪の場合であれば同じライン(連携して風切り役やブロック役を分担する)を組むほかの選手から作戦のヒントを得るチャンスは残っている。

 ただ、今回の例えでいえば同じラインの選手……省庁のトップクラスを同じように証人喚問をしたとしても、恐らくは同様のインタビュー技を使いこなせてしまうだろう。ほぼお手上げかもしれない。

 それであればトップクラスを探るよりも、ラインの後方を固めていそうな……例えば近畿財務局の実務をしていた職員あたりが、答えを引き出せる可能性が高い人となるわけなのだが、不幸なことに自ら命を断ってしまったのは周知の通り。真相に辿り着くのは難しそうだ……

【シグナルRight(佐藤永記)】
半勤半賭のセミギャンブラー。Twitterやニコ生『公営競技大学』にて公営競技について解説をしている。@signalright