恋人のスマホの中身を無断で見るのは、民事的には、アウトです(写真:Ushico / PIXTA)

こんにちは、弁護士の宮川舞です。世の中を渡っていくうえで不安になるときはよくありますが、それは、大体、「何かよくない気がする(よくないことが起こりそうな気がする)、でも何がよくないのか自体はよくわからない」ときです。そんなときの道標の1つとして、「なんとなくアリかナシかはわかるんだけど、実際のところ法的にはどうなの?」ということをお話しできればと思います。

自分の子どもや配偶者、恋人のスマホの中身、特にSNSのやり取り、気になりますよね。「見ちゃいけないよな、でもそもそも疑いを持たせるほうが悪いんじゃないの」という気持ちの葛藤。法律相談でも、「夫のスマホのLINEやメッセンジャーをスクリーンショットで撮影した証拠があります。この内容、浮気の証拠になりますか?」と聞かれることがあります。

この問題、子ども(未成年)の場合と、配偶者、恋人、友人の場合とでは、法的にはちょっと考え方が違うのです。

親が子どものスマホを見るのは「アリ」

“自分の子ども(未成年)のスマホの中身を無断で見る”のは、原則セーフ。法的には、親が未成年の子どものスマホについて中身を無断で見るのは、原則的には問題ありません。

それは、民法818条1項で、未成年の子どもは父母の親権に服することになっているからです。親権って、わかるようでわからない言葉ですよね。未成年の子どもを保護し育て、適切な教育をする権利義務と思ってください。

子どもを保護し育て、適正な教育をする権利義務のために必要なことはやっていいということになりますから、子どもの交友関係で心配なことがあるなど、未成年の子どもの保護のために子どものスマホを見ることが必要な場合には、親権の範囲内として問題ないということになります。

ですが、親権があるからといって、どんなことでも未成年の子どもにしてもいいというわけではありません。親権があってもそれを濫用すること、つまり親権をそのもともとの目的と異なるものに使うことは許されませんから、この点は要注意です。

“自分の配偶者、恋人のスマホの中身を無断で見る”のは、民事的には、アウト。スマホの中身は私的な内容のものが多くを占めていますから、自分の配偶者、恋人のスマホの私的な内容を意図的に無断で見ることは、プライバシー権の侵害となります。プライバシー権とは、私生活上の事柄を勝手に知られたり公開されたりしない権利で、自分の情報をコントロールする権利という意味合いもあります。

自分の配偶者、恋人へのプライバシー侵害になるだけでなくて、そのやり取りをしていた相手の人へのプライバシー侵害にもなるので注意が必要です。

ですが、「プライバシー権の侵害となる」=「損害賠償を請求できる」というわけではないのが、法的な世界の難しいところ。プライバシー権侵害による損害賠償が認められるには一定の要件があるのですが、そこでは、侵害の目的、必要性、侵害された側の不利益の程度など、いろいろな要素が考慮されるのです。そのため、たとえば配偶者の浮気を心配して配偶者のスマホの私的な内容を見た場合は、プライバシー権侵害にはなるものの、その侵害の度合いが低いとして、損害賠償が認められないか、認められたとしてもその金額は少額になる可能性が高いです。

一方、刑事的には、セーフです。自分の配偶者、恋人のスマホの中身を無断で見ること、ダウンロード済みのアプリのトーク履歴やメールアプリのデータを無断で見ることは、それだけでは犯罪にはなりません。

ただし、配偶者や恋人からアプリのIDやパスワードを知らされていないのに、これらをこっそり取得して無断でアクセスする場合は、“不正アクセス禁止法違反”で犯罪になるため要注意です。

また、配偶者や恋人のスマホが、ロック解除や再起動時にアプリのトーク履歴やメールなどを自動ダウンロードする設定になっている場合(通常はそうだと思います)、知らされていない画面ロック解除のパスコードをこっそり入力して自動ダウンロードすることも不正アクセス禁止法違反となる可能性があるので、この点も要注意です。

勝手に見たスマホの中身は「証拠」になる?

では、勝手に見た自分の配偶者、恋人のスマホの中身は、証拠になるのでしょうか?

自分の配偶者や恋人のスマホの私的な内容を見るのはプライバシー権侵害になります。「じゃあ、プライバシー権侵害の結果確保した自分の配偶者、恋人のスマホの中身を保管して証拠にすることも違法なのか? 証拠として認めてもらえないのか?」というと、これもそうとは限らないのが法の世界の難しいところ。

刑事裁判では、「違法な手段で確保した証拠を認めない」という原則があります。が、民事裁判では、証拠を入手確保した過程は、刑事裁判のように厳格には判断されないのです。そして、プライバシー権侵害の結果確保した自分の配偶者、恋人のスマホの中身を保管して証拠にするケースが多いのは、民事裁判、特に離婚裁判です。

そのため、離婚裁判などの民事裁判では、「プライバシー権侵害の結果確保した自分の配偶者、恋人のスマホの中身」が証拠として認められる可能性が高いです(私の事務所が経験した離婚裁判でも、こういったものも証拠として裁判所に採用されました)。

法律だけで解決できることなんて、世の中にはほんのわずかしかありません。ですが、法的な考え・判断は、いろんな事柄の道標の1つ。道標は多く知っておいて損はないし、知ってみればそんなに偏屈なヤツでもありません。

上記が、皆さんの道標の1つとなれば幸いです。